【1000年企業インタビューvol.3】京都の旅を支えるJTB京都支店さんにインタビュー

もくじ
はじめに
みなさん、こんにちは!京都学生広報部(コトカレ)では現在、「これからの1000年を紡ぐ企業認定」に認定されている企業さんにインタビューを行っています。
「これからの1000年を紡ぐ企業認定」は社会の課題を“ビジネスの力”で解決しようする企業を応援する、京都市の取り組みです。福祉・環境・教育・まちづくりなど、多彩な分野で挑戦する企業が認定されています。
今回インタビューさせていただいたのは株式会社JTB京都支店さん(以下JTB)。
旅行会社としてお客さんの旅行の出発をお手伝いされるだけでなく、京都という街の多様な地域資源を活かした体験コンテンツの造成や、学生の留学の支援業務も行われているそうです。そんなJTBで働く濱村紘史さんと藤本直樹さんに、現在取り組まれていることについて取材させていただきました
強みを活かした体験事業

―まずはお二人の業務内容について教えていただけますか?
私たちはお客様が京都に来られた際に快適にお過ごしいただくお手伝いをしています。具体的には、京都の多様な事業者様と連携し、お客様に楽しんでいただく体験コンテンツを造成したり、京都市様などの自治体とコラボして私たちの強みを生かす形で事業のお手伝いをしたりしています。
また、近年の旅行者ニーズの多様化への対応のみならず、サステナビリティの観点から受け入れる側の地域社会からみて旅行者にどんな体験をしてもらうことが望ましいかという視点で積極的に情報を発信しています。
―様々な事業者様と関わられていると思うのですが、最近担当された中で印象に残っているものはありますか?
最近注目しているのは、生物多様性です。「京都観光の中での生物多様性」というとイメージがあまりわかないかもしれませんが、観光体験の質を上げたり、本物の文化を体験してもらうという私たちの事業は、実は生物多様性とすごく関係しているんです。例えば、京都の茶道や伝統工芸が自然環境と関わっていたり、モノづくり自体も自然環境に支えられていたりします。しかし、自分たちが提供しているものが自然環境や生物多様性に繋がっていることを、提供している全ての事業者様が強く意識されているわけではないと思うんですよ。なので、私たちはそのことを紐解くことができるキュレーターやそのストーリーを伝えることができるガイドを育成していきたいと考えています。
また、自然と人間が切り離されずに発展してきた日本人の自然観というのは、西洋から見ると興味深いものなんです。この日本人ならではの自然観を地域のブランディングとして発信していきたい。具体的なイメージにつながる情報を、後ほど詳しく説明する「LINK KYOTO」という弊社が運営するプラットフォームなどでも発信しながら、そのうえで「LINK KYOTO」でこんな体験ができるということを皆さんに知ってもらいたいと思っています。
―観光ビジネスを行う企業として京都のオーバーツーリズムの現状についてどのように捉えて、どのような課題があると考えていますか?
金閣寺や清水寺、嵐山など人気観光地に多くの人が集まるのはある程度仕方がないことですが、私たちとしても解消していかなけばならない課題だと捉えています。
今、オーバーツーリズムの問題がクローズアップされすぎて、京都を訪れる日本人旅行者が減る傾向にあります。その点の問題意識は私たちも行政機関と同じように持っていて、何かできないかと思っています。
だた、非常に難しい問題なので、京都市様と協力しながら一緒に解決策を考えていけたらいいなと思っています。そこから誘客するための新たな商品開発やサービス展開に結びつけられればと考えています。
サステナブルな体験プラットフォーム

JTB京都支店さんでは「LINK KYOTO」という観光プラットフォームを運営されており、京都の観光情報や体験コンテンツ紹介など積極的に発信されています
―「LINK KYOTO」の活用について教えてください
「LINK KYOTO」のように旅行先での体験を申し込みするサイトってたくさんありますよね。私たちがこの「LINK KYOTO」に取り組んでいる大きな意義は京都に特化した商品を取り扱っていることにあると思います。
また、サステナブルという文脈を軸にして千年続いた京都の「ほんまもんの文化」の裏側にあるストーリーや地域にとって喜ばれる旅行者になるために有益な情報(例えば、手ぶら観光など)を発信しています。
まだサービスの知名度は高くありませんが、このサイトを知ってもらうことで京都が持続可能な観光を大切にしている姿勢を受け取ってもらいたいと考えています。
―タブの中に「ふるさと納税」や「ワーケーション研修」がありますが、どのような意図で組み込まれているのでしょうか?
まず、ふるさと納税は観光業・宿泊業だけではなく普段は接点のない小規模事業者やものづくりの方々とつながる貴重な機会だと思っています。
これまでは観光分野の皆さまとの関係が中心でしたが、ふるさと納税の返礼品開発等に取り組むことで、京都の多様な事業者が“地域を支えるステイクホルダー”として見えてくるようになりました。
地域の魅力を可視化するという意味では「LINK KYOTO」のプラットフォームの考え方と深く通じていると感じています。
次にワーケーション研修については、一般的に「京都=観光する場所」というイメージが強いですが、「京都=滞在しながら創造的な活動をする場」としてもとても優れた土地だと私たちは思っています。
例えば、学生広報部の皆さんが取材されていた「SIGHTS KYOTO (サイツキョウト)」は、まさにワーケーションのように暮らしながら旅をすることができる施設です。ただ働きに来る場所ではなく地域住民・起業家・外国人など多様な人と出会える場として機能していると感じています。
SNSを使ったコンテンツ発信アプローチ

―「LINK KYOTO」ではいろんなコンテンツを扱われていますが、人気のコンテンツはなんでしょうか?
イベント系のコンテンツがやはり人気です。京都三大祭り(葵祭、祇園祭、時代祭)の特別観覧席などを弊社でも販売していますが、安定した人気があります。最近では、訪日外国人旅行者からの需要も高いです。
イベント以外での体験型コンテンツでは芸妓・舞妓関連の“京都らしい”イメージに合うコンテンツはとても人気です。
他では酒蔵体験や包丁研ぎ体験など。包丁研ぎは海外ではあまり馴染みのないものなので、訪日外国人旅行者の方に好評です。
―包丁研ぎって、日本人でも珍しい体験だと思うのですが、海外の方にどうアプローチしたんでしょうか?
海外市場へのプロモーション施策として、海外インフルエンサーを起用した有償のSNS広告キャンペーンを実施しました。包丁研ぎ体験の様子を各自のアカウントで発信してもらうことで、短期間で認知を拡大することができました。
また、「LINK KYOTO」のインスタグラムでも体験コンテンツの魅力を発信しています。こちらは京都在住のインフルエンサーの方と連携しながら、訪日外国人旅行者向けの情報を動画で発信しています。もちろん動画は英語で、フォロワーの方もほとんど外国の方です。
―「LINK KYOTO」では新たな視点の京都観光を提案されていますが、どのような成果がありましたか?
漆をテーマにしたツアーが成果の1つですね。
京都の漆問屋さんと連携し漆の世界に触れるツアーを企画しました。
最近では”金継ぎ”がブームなので、その興味から申し込まれる方も多いですね。
このツアーはただ漆を学ぶのではなく、周辺の事業者の方と組み合わせて”暮らしの中の漆”を体験できるようにしています。
例えば、
ワインバーでは「ワイングラス×漆」で漆器のワイングラスを使う。
サウナでは「サウナ桶×漆」で漆加工された桶を使用する。
そういったことをツアーに組み込みました。
また、漆製品だけでなく、素材の背景まで深く理解するために漆の木を育てる森づくりの現場を訪れるツアーも提供していきたいと考えています。
―伝統文化を入口とし、そこから別の資源に広げていくんですね
私たちは、体験を通してほんまもんの文化の裏側にある暮らしや循環、生物の多様性についてもお客様にお伝えしたいと思っています。漆ツアーはその象徴的な例です。
「三方よし」の理想の京都観光

―JTB社員の方が考える”おすすめの観光スポット”を、オーバーツーリズムを避けるという視点も含めて教えてください。
混雑を避けるという観点では京都市様が力を入れている「朝夜観光」だと思います。私たちもそれに合わせた商品づくりをしています。最近だと北野天満宮の早朝拝観ツアーを実施しています。
そして現在挑戦しているのが、伏見や中書島周辺の夜観光です。
伏見というと、旅行者の方は伏見稲荷だけ行って、京都市街に戻ってきがちなんです。でも、伏見には多くの酒蔵があり、中書島周辺には昔の下町文化が残っている。私たちはそこに注目して伏見・中書島のスナックやバーをめぐる”夜のまち歩きツアー”も企画しています。夜に楽しんでいただくと、そのまま宿泊につながり、場所の分散にもなります。
―「時間の分散」だけでなく「場所の分散」も重要だと思います。中心部の混雑を避けて、別の場所へ誘導する取り組みはありますか?
「場所の分散」は非常に重要なことですね。例えば、清水寺など特定のエリアには観光客が集中しやすいですが、京北や農村地域といった”原風景”の残る場所にはきっかけがないと足を運びにくい。
そういった地域へ旅行者が訪れていただきたいという想いを持っていますが、それは文化の集積地である京都で旅行業を営む私たちだからこそできる側面もあると思っています。
京都には、実際は何もかもがあったわけではなく全国から人や素材が集合し、それらを京都が編集して見せている。だからこそ、京都には日本文化の背景の部分もつないでいく役割があると思っています。
例えば京料理を入り口にして京都を起点に鯖街道を通って福井まで体験をつなげる1週間のツアーなど、ストーリー性のあるガイドツアーも可能です。
京都をハブとして各地域をつないでいく。これが今後必要となる取り組みであり、事業化していきたいと考えています。
―JTB京都支店さんが考える「理想の京都観光」とはどのようなものですか?
濱村さん:京都で働いて2年半ですが、個人的に強く感じているのは京都は世界的に知名度が高まったことで、現在では時期を問わず多くの旅行者が訪れるようになっているということです。ですが、その結果として特定の場所が混雑し、様々な課題が顕在化しています。
当社では「三方よし」を理念に掲げていますが、京都こそこの考えが必要だと感じています。
・地域住民が喜ぶ
・旅行者が喜ぶ
・地域事業者が喜ぶ
この三者のバランスが整った姿を目指すこと。それが理想の京都観光であると考えています。
藤本さん:私は文化体験をしたときに、その体験を支えている”背景”まで目を向けられる観光が理想だと思っています。
これは旅行者の方だけでなく、地域や私たち旅行会社等の中間事業者にも必要な視点です。
その体験を支えている多様な構成要素に気が付き、それらがどう管理され、どう変化し、その中で自分たちはどれほどその要素の維持に貢献できているのか。観光に関わる全員が体験価値の源泉を大切にしようとする姿勢を持つことが大切だと思います。
―その理想に向けて、学生ができることはありますか?
あると思います。例えば、B&Sプログラムに参加し、自らガイド役となり京都府外から来る修学旅行生と直接交流することもその1つかと思います。
大学生の皆さんが地域の魅力や思いを直接伝えることは中高生にとても響きます。それが地域や観光の未来への大きな貢献になると強く思っています。
おわりに
今回は「これからの1000年を紡ぐ企業認定」に認定されているJTB京都支店の濱村さんと藤本さんにインタビューさせていただきました。
サステナブルを軸とした体験活動、「LINK KYOTO」で紹介されているコンテンツはどれもとても魅力的でした。
また、JTB京都支店さんが取り組まれている新たな観光の形、そしてこれからの京都観光の理想の形、そして大学生ができる理想の京都観光への貢献方法についても教えていただきました。皆さんもサステナビリティな観光地京都を目指して取り組んでみるのはいかがでしょうか?
(取材・文 立命館大学 文学部 福田拓)
(取材・撮影 同志社大学 法学部 足立隼太郎)
(取材 平安女学院大学 国際観光学部 柴田幸音)



