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#京都里山ぐらし―おくどさんのある暮らし―

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こんにちは!

今回は右京区の北部山間地域のひとつ京北黒田地区にある「きくやカフェ」さんにおじゃましました。

山間部で営まれるカフェって、どんなお店なんでしょう?実際に訪れて感じたそのままの魅力をお伝えしていきたいと思います。

おじゃまします、京北黒田

お店の前に到着しました。

いかにも古民家といったたたずまいに落ち着きを感じます。田舎のおばあちゃん家に帰ってきたような感覚になりますね(若者はみんなおばあちゃん子なので……)。

注文をしてから、見慣れない古民家のようすをじっくり観察させていただきました。

古民家、ボードゲーム、季節のこと

お店のあちこちに、季節を感じさせる自然のものが見られます。この頃はもう11月も半ばに差し掛かり、寒い日が続いていましたので、ミカンや南天が飾られていました。セピアに近い色味の店内にビビッドカラーが良く映えます。

また、こちらのお店は約200年前から残っている古民家だそうで、元々は造り酒屋として使われており、それから昭和の半ばまでは郵便局だったそうです。そうした時代の名残を感じさせるものが残されていました。

そのひとつがこちらです。写真に写っているのは、かなり古い時代の電話機。受話器を耳に当てて相手の話を聞き、自分が話すときには真ん中のラッパのような部分に向かって声を出します。

ラッパの高さ、古民家に住むおばあちゃんの身長に合わせたんでしょうか。

また、きくやカフェは古民家カフェのみならず、ボードゲームカフェとしての顔もお持ちです……!京北出身の漫画家・中道裕大さんの代表作『放課後さいころ倶楽部』が地元の高校をモデルにしていたことがきっかけで,ボードゲームカフェがはじまったそうです。

薪ストーブの隣には,ボードゲームがこれでもか!と置かれています。「カタン」や「モノポリー」など名作も見られ、大興奮してしまいました……。

老若男女誰もが一緒に遊べるという点で、ボードゲームには地域社会の繋がりを深める力があると感じます。

地産地消のおいしいごはん

そうこうしているうちに待ちに待ったごはんの時間です。京北でいただく初めてのお味、楽しみにしておりました……。

(かぼちゃの煮物,切り干し大根のハリハリ漬け,菊芋のきんぴら,ふきのとうの味
噌,水菜とお揚げの炊いたん,おこげのごはん,鹿肉とハヤトウリのニンニク醤油炒め
,京北の野菜サラダ,ハヤトウリとツナのマヨネーズ和え,味噌汁)

京都らしいおばんざいに加えて、おくどさん(京都弁で「かまど」のことです)で炊いたごはんや鹿肉など、普段はなかなかいただけないお料理をおなかいっぱいいただきました。

食材は京北産,特に黒田地区のものを中心にできるだけ使うようにしていらっしゃるそうです。やさしくて丁寧な味付けに、溢れんばかりの郷土愛を感じました。

お焦げで作ったおせんべいもいただきました!普段使っている炊飯器ではなかなか作ることのできないもの。

私たちにとっては貴重ですが、おくどさんのあるおうちではいつものこと。古民家に住みたくなる理由がひとつ見つかった気がします。

お店の飲食スペースからは一段下がったところの土間がとっても開放的なオープンキッチンになっていました。写真のかまどが「おくどさん」です。

おくどさんで炊かれたごはんはふっくらとして、唯一無二の味わい。

心から美味しいと思える、自然の偉大さを感じるお料理でした。

山間部のビジネスチャンス

お昼をいただいてから、店主の川口さんにお店と京北のことについてお話を伺いました。

―――この地域のことをよくご存知な印象なのですが、もともとお住まいだったんでしょうか?

「私ね、4年目なんです(笑)。」

―――えっ、そうなんですか!?

「2017年に黒田に来て、今丸3年と5か月が経ったところです。

もともとここには友達がいたので10年前から遊びに来ていて、良い地域だと思っていて。ぜひここで子育てしたいと思っていました。

そこで、子どもたちの入学のタイミングに合わせて移住をしようと考えました。

一番の決め手になったのはこの土地の人たちの温かさですね。

移住前に地域の人が面談をしてくださって、田舎暮らしの楽しいところだけじゃなくて,不便さや地域活動のことまで全て教えてくださったんです。

本当に皆さん親切で、田舎暮らしに対する不安が面談によって解消されました。そのおかげで、ここでなら地域の人に助けていただきながら田舎暮らしができると考えて、移住を決心しました。」

―――カフェを始めた理由は、どういったものでしたか。

「京北6地区の中でも黒田は高齢化率が最も高いんです。

だからこそ移住促進の取組が進められているんですが、いま,地域の中核となっている人たちは若くても70代。

その事実を知って、黒田の危機が「じぶんごと」になりました。

そこで、この家は造り酒屋や郵便局としてもともと人が集まる場所だったので、それならここを人が集まる場所として再生しようという気持ちになったんです。

もともと街で飲食関係の仕事をしていて、おくどさんや地域の野菜もあるので、カフェを始めることにしました。」

―――今日のごはん、地元の素材がふんだんに使われていて,メインからおかずまでどれもとても美味しくいただきました!

「ありがとうございます。野菜やお肉も含めてほとんどが黒田地区,京北産でまかなっています。それだけ豊かな食材がそろう地域なんです! 今日は,メインで鹿肉とハヤトウリの炒め物を召し上がっていただきました。

実は,京北全体の人口がだいたい4,500人くらいなんですけれど、鹿はその倍の8,000頭くらいいるというデータがあって。それだけの数の鹿がいると獣害がひどいものですから、私も罠猟師の免許を取りました。ジビエとして活用して、獣害を減らすために貢献できればと思っています。」

―――最後に、学生に向けてのメッセージをお願いします!

「ぜひ黒田に来て住んで欲しい!ということですね。私が思うに、ここにはビジネスチャンスもたくさんあるんです。

私がカフェを始めたのもそうだけれど、地域の名物づくりはまだまだ可能性があると思います。」

お出しいただいたクッキー

「黒田で有名な百年桜にちなんで,桜の塩漬けをトッピングしています。将来的には,黒田産の農産物を使った他のフレーバーも考え中です。それから空き家を改修して、人を呼べる民家を作るためのワークショップをするといった活動もしたいと考えています。」

―――ありがとうございました!

肌で感じる地域活性化

お店では実際に、地域の方とお話をする機会もありました。

この古民家がきくやカフェになる前、郵便局だった時代に局員としてお仕事をされていた方なのだそうです。

色とりどりのもみじをお持ちくださり、色の移り変わりについて教えていただきました。

こうした出会いのもとで、川口さんがおっしゃっていたように、きくやカフェが地域の人を中心にさまざまな人が集まる場所であると肌で感じることができました。

美味しいごはんと共に、あたたかくほっこりとした時間を過ごすことのできる「きくやカフェ」。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

黒田に住む皆さんとの素敵な出会いが待っているかもしれません。

(同志社大学 法学部 石井魁人)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

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卒業生が執筆した記事はかれんが紹介しているよ!