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#京都里山ぐらし-人とつながり進化を続けるあらい農園-

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おじゃまします、黒田

京都市内中心部から車で約1時間。京北地域の中でも最も山奥にある黒田地区にお邪魔しました。広がる畑と穏やかに流れる川。黒田は、人口減少が厳しい問題となっているようです。移住・定住企画や、空き家の流通促進など、町の人たちが一丸となって町おこしをしています。
今回は農家をしていらっしゃる新井(あらい)遼(りょう)さんにインタビューさせていただきました。

<新井遼さんの略歴>
立命館大学卒業後、金融機関で勤務。2年間の農業研修期間を経て伏見区に就農したのちに京北の黒田にて、あらい農園を営む。

――本日はよろしくお願いします!まず、あらい農園をはじめられた経緯を教えてください。

大学4回生の夏、モンゴルツアーに参加したことが大きく影響しています。そのツアーには全国の色んな大学から同年代の人たちが60人ほど集まっていていました。10日間のツアーで価値観の違う彼らと過ごし、語り合った時間は自分にとって刺激的な時間でした。

卒業後、就職して懸命に働いていたのですが、ふと鏡をみると死んだような顔をしている自分がいたんです。それからは働きながらずっと「辞めようかな」と考えていました。
ある時、モンゴルツアーで知り合った友人に再会すると「念願の建築士の仕事ができて楽しい」と言われました。友人は自分よりも遅くまで働いているのに……。

そこでやっと「そうか、周りを気にせず自分のやりたいことをしたらいいんだ」と気づくことができました。
その後、自分のやりたいことを探した結果、「農業」にたどり着いて今に至ります。

「農業」で知るビジネスのおもしろさ


新井さんが営む「あらい農園」では、人参、大根、ネギ、白菜、ほうれん草、小松菜、サツマイモなど、たくさんの種類の野菜を栽培し、販売しています。火曜日に京都市内へ、金曜日には関西、関東へ「あらい農園の野菜セット」を発送しています。

―――全国に発送されている「あらい農園の野菜セット」の内容はどのようなものですか?

朝採れたばかりの旬の野菜を7、8種類入れてお届けしています。調理法に困らないように、珍しい野菜ではなく、大根や人参といった普段使いやすい野菜を入れています。珍しい野菜が届いたら、どう使っていいのか困ってしまいますから(笑)。

――お母さんたちへの配慮が素敵です(笑)。新井さんは「農業」のどんなところにやりがいを感じますか?

実は、「野菜を作っている時にやりがいを感じている」わけではないんです。
無農薬、有機肥料のみで旬の野菜を育てることを大切にしていますが、野菜作りに関してはドライなタイプだと思います。
今は販売促進に力を注いでいて、「こうしたらもっとお客さまが増えるな」と色々試すことにやりがいを感じています。
例えば、ホームページは目に留めてもらえるようにオシャレなデザインを意識しつつ、自分が伝えたいことを盛り込みました。
そうした工夫をすることで実際にテレビの取材が来てくれて、その番組を見てお客様が増えて……。お客様の反応を可視化することができるので、今はビジネスの視点で農業の可能性やおもしろさを実感しています。

京北、黒田での暮らし


――黒田地区に移住してきて良かったことはなんですか?

人とのつながりが深く、温かみを感じられることです。
例えば近所の方から野菜のおすそ分けを頂いたりだとか、子どもの面倒を見てくれるだとか。都会ではそういうことはあまりないんじゃないかなと思います。
心が温まるような関係性は田舎じゃないと経験できなかったからすごく良いなと。

――確かに最近はご近所付き合いなどのつながりも珍しくなってきています。黒田は人とつながっていることが日常なんですね。暮らしはじめの時に戸惑いは感じましたか?

最初は戸惑いました。僕はよそからの移住者だったので、昔から黒田にいる方々に受け入れてもらえるか不安で。町の人を覚えるために、誰がどんな軽トラに乗っているか、ナンバープレートまでメモしていました(笑)。
自分から行動して色んな人とつながりを持つことが大切だと思ったので、神社の掃除や田植えの準備の手伝い、消防団への参加など、町の行事はなるべく全て参加するようにしていました。

――ナンバープレートまで覚えていたなんて……!その努力に驚きです!のんびりした暮らしと思いましたが、神社の掃除や行事への参加など、地域の方と協力する機会が多いのですね。

「人と人とのつながり」


――町の人とつながることで農業がやりやすくなったなどありますか?

そうですね。例えば、「ビニールハウス欲しいんですよね」、という話をすると、誰かが「余っているのがあるよ」と教えてくれたり、「軽トラがない」という話をすると、「使ってないのをあげるよ」と言ってくれます。
人間関係が広がると仕事もやりやすくなるのは事実です。

――軽トラまで譲ってもらえるなんて……。困った時に声をかけられるような人間関係を築いておくことの大切さが分かります。これから社会に出る学生にメッセ―ジをいただけますか?

とにかく色んな人とつながりを持ってください。そして、ちょっと背伸びをして、普段関わらないような自分よりもレベルが高い人と関わってみてください。そこで新たな価値観に出会って、自分の視野も広がって、成長できると思います。

取材を終えて

インタビュー後に、あらい農園さんでとれたサツマイモを頂きました。焼きたてのサツマイモは、しっとり甘くて美味しかったです。


インタビューを通して感じたことは、人と人とのつながりの大切さ。ご近所付き合い、仕事仲間、交友関係。たくさんの人と関わることによって、新しいことに興味を持ったり、視野が広まったり、自分自身の成長につながるということです。新井さんは積極的に多くの方と関わっていて、現在は京北からも近い大原地域の同年代の農家の方と交流しているそうです。私も、今の人間関係に満足しないで、自分から多くの人とつながりを持ってみようと思います。

黒田に住む皆さんは全員、「黒田の未来のために、自分ができることをする」と町に対する愛情を強く持っていました。そのため、常にいろんな企画が進められており、活気に溢れています。のんびりした空気感、町の人たちの温かさ、豊かな自然。京北黒田、また訪れたい町になりました。

あらい農園さんのホームページはこちらから

(京都女子大学 文学部 野尻喜)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

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卒業生が執筆した記事はかれんが紹介しているよ!