インタビュー

あなたの知らない和菓子の世界!甘春堂6代目当主・木ノ下さんにインタビュー【後編】

あなたの知らない和菓子の世界!甘春堂6代目当主・木ノ下さんにインタビュー【後編】
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京都でお菓子作りを代々営んできた、甘春堂6代目当主の木ノ下善正さんへのインタビュー、後編です。
後編では、国の「現代の名工」に選ばれた理由の1つでもある「芋合わせ」の復活や、和菓子教室について迫ります!

前編はこちら↓

小さな木型で○万円!

――あそこの壁にたくさん飾ってある型はなんですか?


落雁(らくがん)や金花糖(きんかとう)なんかを、この木型で作るんです。
金花糖の場合は、ここ(木型)に、溶けたお砂糖を流して、立体的なものを作ります。
3枚型を使うお菓子もあります。
これ(木型)1つ作るのに、ものすごく高くついているんですよ。あんなちっちゃいもので30,000円から50,000円ほど。3枚型とか、大きな型になったらもっとしますよ。

――ええ!高い…。

これは木型職人が作るんですが、木型職人がもう高齢化もあって京都にいないんです。
一刀彫の技術がなかったら彫れないもので、頼んでもなかなか簡単にできるものではないしね。

お菓子の中でお抹茶を点てる?

――木ノ下さんは、2024年度に「現代の名工」を国から受賞されていますよね。

そうですね。
現代の名工に選ばれた理由の1つに、もう廃れてしもうた「芋合わせ」という技術を復活させたことがあるんです。

――「芋合わせ」ですか?どんな技術なんでしょうか。

出来上がりは普通のお干菓子になるんですが、作っている最中は生菓子なんですよ。
柔らかい粘土状のものを形作って、そのまま1、2日置くと固まるんです。

つくね芋、お砂糖、寒梅粉(かんばいこ)、カタクリで作られています。
この材料は生菓子の材料なんですよ。薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)を作るときに使う材料をお干菓子に使っています。
昔はこの技術があったんですけども、もう作るとこがなくなってしまって。
これ触ってみてください。


――すごい、固いです。

この芋合わせはね、中で抹茶を点てて飲めるんです。だいたい5、6杯くらい、この厚さが溶けるまでお茶を点てられます。

――この芋合わせのお菓子自体に賞味期限はあるんですか?

基本的に砂糖と片栗で出来ているので、砂糖や片栗粉と同じくらいの賞味期限です。
さらにニッキが入っているので防虫効果もある。
源氏絵巻が描いてあるものも販売していて、結構お土産とかに喜ばれています。

――現代の名工になってから、和菓子に対する関わり方や、心境の変化などはありましたか。

お菓子っていうものに関して、本来の姿はどうやったんやろうなって考えるようになりましたね。
見た目ばかりの「映える」とかそんなんじゃなくて、もっと素朴で素材の本質をとらえた「おいしい」もんから始まったほうがええんちゃうかなと思うようになったんですよ。
だから皆さんにも本当のこと言ったら家でお菓子を作ってほしいね。
忙しいのかもしれませんけど、実はそんなに難しいことじゃないんですよ。

実際に芋合わせを食べさせていただきました。想像以上に固く、甘さが強すぎない上品な味がとても印象的でした!

和菓子教室に込めた思い

――和菓子教室についてお聞きします。和菓子教室を始めたきっかけには、若者に和菓子を知ってほしいという思いや、担い手になってほしいという気持ちがあるのでしょうか?

それもありますよ。でもそれ以上に、和菓子教室を始めたのは職人のためでした。職人というのは暗くなりがちなんです。
年を取ったら喋れるけど若いときに喋れへん。それで結婚する人が少なかった。黙々と作業するので暗くなりがちで、これはなんとかならんかなと思ったんです。
お菓子作りにおいても、親方に言われたものをただ作るのが職人じゃないんでね。お客さんが何を求めているかを知ることが大事ですから、自分らでその機会を作るのは面白いやろうと思ってやりだしました。
もう1つは、和菓子教室に参加するお客さんの中から、お菓子を作りたいと思う人はいないかなと。
この2つが目的でした。

――実際に和菓子教室をやったことでお菓子作りの道に進んだ人はいるんですか。

アルバイトに入って、それから独立した人は2人ほどいますね。
独立していない人も含めたら10人くらいいます。
でも残念なことに、彼らの息子は継がないんです。そんなに儲かるお仕事ではないのもあって、息子に継がせようとはなりません。

――和菓子作り体験にはどんな方が参加されているのでしょうか。

中高生が多いですが、大学生のサークルとかで来る人もいます。海外の方も多くいますね。
実は私たちは、もともと和菓子教室を中高生の修学旅行の生徒さんに教えたかったんです。
指が器用に動くのは高校卒業くらいまでなので、大学卒業してからだとなかなか職人は難しいんです。
ただ、毎日毎日朝から晩まで作ることができれば2、3年でそれなりに作れるようになりますよ。ただし、職人として完成するにはもっと年月がいります。

――本当に努力の積み重ねによってできる技術なんですね。

――最後に、この記事を読んでいる中高生や大学生に向けてメッセージをお願いします。

まずは、お菓子を作る楽しみを知ってほしいなと思います。先ほども言うたように、家でお菓子を作ってほしいです。
ここ(和菓子教室)をきっかけにして、「お菓子作るのはこんな感じなんや」って知って、ほんまは自分の家で作ってほしいです。
自分でやると、どれが美味しいのかわかる。それを知ってほしいですね。
ここに来れば職人がいるんやから、あんの炊き方とかなんでも聞いてください。
料理本には載っていないような工夫とか技術とかもたくさんあるんですよ。

おわりに


今回取材させていただいた部屋の隣では、実際に修学旅行中の生徒が和やかに和菓子教室を体験していました。
日本人に長く愛されてきた和菓子の魅力を目の当たりにすると同時に、木ノ下さんの和菓子への深い愛が感じられる取材でした。
皆さんもぜひ京都という地で、職人さんの想いが詰まった和菓子に触れてみてはいかがでしょうか。

(文:同志社大学文化情報学部 齊藤夏帆)
(撮影:同志社大学商学部 村上紗都)
(取材:龍谷大学政策学部 大神芽吹)
(取材:龍谷大学社会学部 武居美伶)

この記事を書いた学生

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齊藤夏帆

同志社大学 文化情報学部

かほじゃなくてなつほです。主食は音楽。