【1000年企業インタビュー vol.4】京都で愛される画材店~有限会社画箋堂・山本社長にインタビュー~

もくじ
はじめに
みなさんこんにちは!京都学生広報部では、連続企画として「これからの1000年を紡ぐ企業認定」に認定されている京都の企業にインタビューを行っています。
今回は画箋堂の社長である山本修三さんにインタビューしてきました!
学生やアーティスト、趣味として絵を楽しむ人など幅広い人に愛されてきた画箋堂。多くの人の創作に寄り添い続けるその想いや役割を取材しました。
~これからの1000年を紡ぐ企業認定 魅力発信インタビューとは~
京都のまちで「ワクワクするシゴト」を発信する連続新企画。詳細は以下のページで紹介しています。ぜひご覧ください!
画箋堂ってどんな会社?

画箋堂は1913年に創業した老舗の画材専門店です。水彩絵の具、アクリル、デザイン用品、額縁など幅広い画材を揃え、プロの作家や学生、趣味で絵を楽しむ人まで様々なお客さんに利用されています。
京都には芸術を学べる学校が多く、芸大生とのつながりが強いことも画箋堂の特徴です。現在京都にある4店舗のうち3店舗は大学内にお店を構えており、授業や制作に必要な画材提供を通じて学びの現場を支えています。
さらに、展示会や体験イベントなども行われており、単なる販売店にとどまらず、アートと人をつなぐ交流の場としての役割も担っています。
「画箋堂に行けば、なんとかなる」という安心感。

ー色々な事業をされていますが、その中で特に力を入れていることはありますか。
ワークショップや大学とのコラボなどさまざまな事業を行っていますが、特に力を入れているのは「お店としての役割」です。画箋堂にはデザイナーやアーティストの方が多く来られますが、学生の方も含めて皆さんには必ず「締め切り」があります。今日までに提出しなければならない制作物がある中で、「材料が足りなくなった」、「これが急に必要になった」という場面はよくあります。そうしたときに「画箋堂に行ったら、なんとかなるやろ」と思ってもらえるような、いわば駆け込み寺のような安心感を提供したいと考えています。そのため、年末年始を除いてほぼ年中無休で営業し、商品のラインナップも幅広く揃えることを大切にしています。
「画箋堂に行けば、なんとかなる」という存在であることは、非常に重要だと思っています。
―そのような思いは創業からの理念に基づいているのですか?
そうですね。画箋堂には「VMV」、ビジョン・ミッション・バリューという経営理念があります。
ビジョンとしては「京都からアートにつながり、 毎日をちょっと愉しく 。」
ミッションとしては「感性のアトリエとなり、彩あふれる 日々の創造をサポートする。」
バリューとしては
「創造しよう、思い出に残る感動とありがとうを
創造しよう、前向きに変化し行動する自分を
創造しよう、対話と連携で最高のチームワークを
想造しよう、次の100年も愛され続けるブランドを」
という言葉を掲げ、アーティストの方々を裏方として支えるという役割をしてきました。
デジタル時代だからこそアナログで描く魅力がある

ーデジタルアートが増えてきています。「自分たちの手で描く」ことは、アナログで絵を描くことの魅力だと思いますか?
デジタルアートもどんどん広がっていますし、デジタルが良い・アナログが良いと一概に言えるものではないと思います。ただ、やはり「リアル」の良さという点では、アナログならではの強さがあると感じています。作家さんの息遣いや筆遣いといったものを間近で感じられるのは、アナログ表現ならではですよね。
今はAIにプロンプトを打てば、すぐにイラストが出てくる時代ですが、アナログの良さというのは、自分が実際に体験してきたことや、身体を通して得た感覚をそのまま表現できるところにあると思います。もちろん、デジタルはデジタルで今後も進化していくと思いますが、その一方で、いわば「揺り戻し」のような形でアナログの価値や魅力が改めて見直されていくのではないかなと感じています。
ー新しく絵を始めたり、絵に興味がある人にとってはタブレットやアプリを使ったデジタル制作の方が始めやすいと感じる人も多いと思います。そのような人たちに紙や絵の具を使って描くアナログならではの魅力を伝えるとしたら、どのようなところですか?
確かに、新しく絵を始めたり、興味を持ったばかりの人にとってはデジタル制作の方が入りやすい部分はあると思います。ただ、そういう方にこそ一度アナログ画材での制作を経験してほしいという思いはあります。
アナログでの制作を一度通ることで、物を見る力や色を作っていく力は上達します。
アナログを一度経験したうえで、そのままアナログで描き続けてもいいですし、そこからデジタルに進むのもどちらでもいいと思います。ただ、最初にアナログで絵を描くことを体験しているかどうかでその後の表現の広がりや伸び方は違ってくるのではないかなと感じています。
京都の風土とつながる、画箋堂のものづくり

ー京都という土地柄が、お店の文化やお客さんにどのような影響を与えているとお考えですか?
京都の人は、絵や美術に対する関心や興味が強いと感じています。国宝級の作品が日常の中に自然と存在していることが大きな影響を与えていると思います。
また、京都は三方を山に囲まれていて、春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪と、四季の移ろいを強く感じられる土地です。そうした景色を「きれいだな」と感じる体験そのものが美意識を育てているのではないでしょうか。それは見る側だけでなく、作品を作るアーティストにとっても大きな影響があると感じています。
ー京都には多くの伝統工芸品がありますが、それらとのコラボはありますか?
最近つくったコラボ商品でアロマディフューザーがあります。額装の際に作品をマット(台紙)に入れた後にできるくり抜いて残った部分がもったいないなと思っていました。紙は吸湿性があるので、これをアロマオイルを吸い上げるためのリードにできないかと思いつき、アロマディフューザーを作りました。
「artme」というアート(art)とアロマ(arome)をかけた商品名となっています。ボトルは清水焼の器で、窯元さんにオリジナルで作ってもらいました。香りも3種類あり、クロモジやスミレ、杉など京都の植物を使っています。京都の素材にこだわった、メイドイン京都の商品です。
リードのデザインは学生さんのデザインコンペで決めて、「立涌(たてわく)」という吉祥文様を使いました。「立涌」には蒸気が立ち上がっていく様子を象り運気が上昇するという意味があるんです。香りが立ち上る感じとも合うと思い、採用しました。もともとの商売と少し違う部分もありますが、アップサイクルや伝統工芸と絡めたプロダクトになっています。
自社の取り組みを通じて、学生さんの活動を後押ししたい。

ー大学とのコラボやワークショップなど、具体的にはどのようなことをされていますか ?
コロナ禍の頃、京都女子大学の先生と一緒にGoogleのサービスを使った企画に関わりました。もともと会社として、木版画の道具や和紙、胡粉、筆、日本製のソフトパステルなどさまざまな画材を扱うメーカーさんを取材し、「どんな想いで作っているか」、「誰に知ってほしいか」を記事にしてアーカイブ化する取り組みを行っていました。
しかし、コロナ禍で取材活動が難しくなったため、学生さんがオンライン取材をして記事を書く企画を立ち上げたんです。そのお手伝いとして、メーカーと学生をつないだり、写真提供を行ったりしていました。
その他にも芸大生と一緒にアートイベントを行う活動も続けています。
2025年には山科の無印良品で大学生4名と一緒にライブペイントイベントを実施しました。基本的には学生さんが主体で企画・運営を行い、私たちは学生のフォローを行う立場で関わっています。
ー大学とのコラボは昔から行ってきたことなんでしょうか。
大学との取り組みは、いわゆる「コラボ」というよりも、昔から大学の中で店舗を運営してきた流れに近いです。現在、京都では本店のほかに3店舗あり、京都精華大学、京都美術工芸大学、京都市立芸術大学に出店しています。
現在は人件費や経費が上がる一方で、学生は夜遅くまで制作することも多く、必要な材料が買えない、食事ができないといった課題があります。そこで京都市立芸術大学さんの店舗では無人営業を取り入れ、朝8時から夜9時まで利用できる形にしています。
画材だけでなくパンやお菓子、音楽系の学生向けにバイオリンの弦など幅広い商品を扱っています。事前に実施した学生へのアンケートを基に品揃えを決め、学生の利便性を高めつつ運営コストを抑える仕組みになっています。
ーアーティストだけでなくアートに関わる多くの人たちを支える仕事をされています。学生たちに、アートに関わる仕事に興味を持ってほしいという思いや、一緒に仕事をしたいという思いはありますか。
毎年卒業する学生のうち、実際にアーティストとしてやっていこうと考える人はごくわずかだと思っています。
ただ、その中で一人でも、アーティストとして進むきっかけを作れたらいいなと思っています。大学生と一緒にイベントをやる中で、ライブペイントの際に投げ銭をお願いする活動を続けてきました。場所によっては難しいこともあるため、先日のイベントではステッカーを販売し、その売上をそのまま作家に渡す形で行いました。
これには二つの目的があります。一つは、絵を描くことでお金をもらうという体験を作家にしてもらうこと。もう一つは、来場者に「アートにお金を払う」という体験をしてもらうことです。その最初の一歩のハードルを少し下げるきっかけとして、お金をもらう側と払う側、両方の体験ができる仕組みを作れたらいいと考えています。
売って終わりではなく、アートが生まれ続ける活動へ。

ーこれから取り組みたい活動や、現在取り組まれている活動の中でより力を入れていきたいものはありますか?
私たちは材料を販売していますが、単に材料を売って終わりではなくて、作家さんがそれをもとに作品を作り、発表、販売というふうに循環していく流れが大事だと考えています。だからこそ、発表の場や彼らが活躍できる場所を作りたい。店舗の上には普段教室をしているスペースがあり、そこではアーティストを招いたワークショップを行っています。アーティストの方に先生役になってもらい、あまりアートに馴染みのない人にも来てもらって、実際に材料に触れてもらう体験ができる場所を作っています。
材料を売るだけでなく、体験まで含めた取り組みとしていわゆる「モノ消費」から「コト消費」へと広げていきたいと考えています。
終わりに

今回は画箋堂さんにインタビューを行いました。みなさん、いかがでしたか?
普段の生活でアートや画材に触れる機会がある人は少ないと思います。
しかし、今回お話を伺って、若いアーティストの皆さんを応援する熱い想いをとても感じました。
京都から日常を彩るきっかけを届ける画箋堂。一度ふらっと立ち寄ってみるのも楽しいかもしれません。
(取材・文 京都府立大学 公共政策学部 森川綾子)
(取材・京都大学 文学部 光安理子)


