“BORDER”ってなんだろう? ―KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2023を巡ってみた―
4月15日から5月14日まで、国際的な写真展が京都で開催されていました。その名も「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。
今年は“BORDER(境界線)”をテーマに、世界的なアーティストの作品が京都の歴史的建造物やギャラリーに展示されました。
全部で18のプログラムが用意されているのですが、今回、私は「ASPHODEL」「伊藤佑 町家跡地(いとうゆう まちやあとち)」「Sfera」の3つの会場を回り、その様子を写真とともにまとめました。
二条城、八竹庵、京都文化博物館の3会場をレポートした記事はコチラ
もくじ
京都の若者が訴えかけるもの
最初に訪れたのは、祇園四条にあるギャラリー、“ASPHODEL”。
ここでは、ココ・カピタン氏の作品が展示されていました。
まず入り口に見えるのは、「おおきに・COCO CAPITÁN」と書かれた青いのれん。
実は、このプログラムの名前が”Ookini”(「おおきに」は関西弁で「ありがとう」の意)で、カピタン氏は撮影に協力してもらったモデルにいつも「おおきに!」と声をかけていたそうです。
中に入ると、カピタン氏が京都に滞在しているときに撮影したという10代の若者の写真が多く並んでいました。
放課後の教室にいる高校生や、狂言師の息子、舞妓さんなど、さまざまな被写体がカメラを見つめていて、それぞれが何かを訴えかけているように感じました。
圧巻!陶磁器でできた壁
次に訪れたのは、伊藤佑 町家跡地の“Breaking Walls”というプログラム。
スペイン出身のアーティスト、インマ・バレッロ氏が作成した本作品は、陶磁器の破片を集めて金網に詰め、巨大な壁を形成していました。
展示の説明には、「壁は何かと何かの境界線になる一方で、その内側に集まる人々のコミュニティを形成する役目を果たすこともできる」と書いてありました。
ひとつひとつはもろく壊れやすいものでも、集まって壁をなすことで何かに強烈に作用することができる。そんなメッセージを読み取りました。
さらに、このプログラムの魅力は、壮大な陶磁器の壁だけではありません。
足元に目をやると、地面にも大量の破片が敷き詰められていて、歩くたびに陶磁器が擦れ合ったり、割れたりする音が聞こえるんです。
展示を見るだけではなく、聴いて、触って楽しめる展示になっていました。
ヨーロッパへの長い旅と、その後
最後は、セザール・デズフリ氏のプログラム、“Passengers”。
地中海で救助された難民を記録し、その後の移住先であるヨーロッパでの生活を追いかけた物語が展示されています。
毎年、アフリカ沿岸からヨーロッパへ向けて多くの難民が海を渡っています。デズフリ氏は2016年に難民救助船を取材し、そこで救助された難民をひとりひとり撮影しました。
そして、彼らがヨーロッパにたどり着いた後も取材を続け、どのような足跡を辿ったのかを記録しています。
展示では、彼らの幼少期の写真、救助された時に実際に着ていたライフジャケット、そしてヨーロッパ到着後、それぞれの生活を歩んでいる様子などが紹介されていました。
ここでの“BORDER”とは、アフリカとヨーロッパの間に厳然として存在する地中海ではないでしょうか。
国を追われて、また、より良い生活を求めてヨーロッパを目指す難民たちに、地中海は越え難い境界線として立ちはだかります。
しかし、大きな決意を持った彼らには、この境界線はとても小さなものに見えているのかもしれません。
今も存在する難民問題について、深く考えさせられました。
さいごに
今回は、学生パスポートを利用していくつかの会場を回ってみましたが、どのプログラムも見せ方がすばらしく、思わず展示に没頭してしまいました。
今年のKYOTOGRAPHIEでは、今回紹介したプログラム以外にも多数展示があるのに加えて、姉妹イベントである「KYOTOPHONIE」や「KG+」も開催されていました。
来年、これらのプログラムがさらにパワーアップして京都に戻ってくることを期待しています。
また、こちらの記事では、2022年のKYOTOGRAPHIEにインターンとして関わる大学生を取材しています。こちらもあわせてご覧ください。
(同志社大学 法学部 足立隼太郎)