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展覧会担当者に聞く!若者が訪れる【アンディ・ウォーホル・キョウト】の裏側

“京都を歩いて楽しんでほしい“の想いの下に


(京都市京セラ美術館。周囲には岡崎の観光スポットも。)

——今回は京セラ美術館の中だけでなく、京都の街全体でいろいろな企画をされていますよね。

これはコロナ禍でホワイト・キューブ(一般的に近代以降の美術作品の展示空間を指す)の中でアートを楽しみ切ることに制約があったという状況もありますが、何よりも京都という街の特性を考えたときに、美術館で展覧会を観て終わり……ではあまりにももったいない場所だとずっと思っていました。そこで我々ならではの気づきをウォーホル展に取り入れていこうと、 “アウトサイドミュージアム、インサイドミュージアム”という裏コンセプトを掲げて、これまでこのウォーホル展を作り上げてきました。

——その1つが「ウォーホル・ウォーキング」ですか?

「ウォーホル・ウォーキング」は、コロナ前に固めたコンセプトではあったのですが、いわゆる“京都への2泊3日の小旅行”を想定して、その旅のプランの1つに、このウォーホル展を入れていただけることを目指していました。開催期間がちょうど紅葉のハイシーズンを挟んでいたので、いつもの秋の京都の旅としては、紅葉を見て美味しいものを食べて終わりとなるところを、「どうやら今年は京都でしか観れないアンディ・ウォーホル展が開催されているみたいだから、せっかくだから観て帰ろうか」となっていただく意味合いも含めて、ウォーホルが生前2度、京都を訪れた際の足跡を辿る街歩き企画を通して、京都とウォーホルのゆかりを伝えることが出来るといいなと考えたんです。

美術館を訪れる時間の前後でも、京都の街にウォーホルと京都を繋ぐスポットがあることで、よりお客様にこの展覧会への理解度も深めていただけるのではないかなと思ったんですね。ウォーホルが訪ねた神社仏閣や場所はコロナ禍前にリサーチできていましたので、会期延期後も京都の方々とお話を再開することが出来ました。


(祇園白川筋に現れた「ウォーホル・ウォーキング」のスポット)

——この企画は共に展覧会を主催している京都市との共同企画とのことですが、どういった経緯があったのでしょうか?

京都市京セラ美術館は京都市が運営管理されている美術館ですが、本展の主催にも入っていただいています。コロナ禍によって会期延期を判断し、改めて展覧会を立ち上げ直すにあたり、改めて京都市と何か一緒に具体的なお取り組みができないか、ご相談させていただきました。その時に「実はもうすぐ文化庁が移転してくるんですよ」というお話がありまして。

——最近京都では「文化庁」の名前をよく見かけますね。

コロナ禍前に多くの外国人観光客が京都に来られていたことで、オーバーツーリズムの課題も京都市としてお持ちで、“歩いて楽しめる街、京都”として今後PRされる目的も含めて、京都の街を歩いてアートを楽しむ “ART WALK KYOTO”をコンセプトに文化庁を迎え入れようとされている、とお聞きしました。ちょうど昨年秋から今年の春くらいまでが「ようこそ文化庁、京都へ」のテーマを広げられる期間として、京都市としても力を入れられるとのこと。アンディ・ウォーホル・キョウトの会期ともぴったりと重なるというところでご一緒に組めるのではないか、というお話をいただいたんです。

——確かに私自身、京都は“歩いて楽しむことができる街”だと感じます。見どころは何ですか?

今回、「ウォーホル・ウォーキング」のスポットとして京都駅、三十三間堂、清水寺、祇園白川筋、京都市京セラ美術館が位置する岡崎界隈をクローズアップさせていただいていますが、特に三十三間堂の皆さまとはコロナ前からお話をさせていただいておりました。ウォーホルが2度京都を訪れた際に共に、三十三間堂の千手観音菩薩立像を見に行っているんですよね。同じ形状の仏像が整然と並んでいる様子から、同じモチーフを繰り返し並べる“リピート”の手法の着想を得たという考え方がこれまでの文献からも見て取れるとの話が、アンディ・ウォーホル美術館の本展キュレーターのリサーチからも出てきました。ウォーホルの作品の中には今回展示している「WALL PAPER (COW)」の赤い牛の壁紙のような同じモチーフを繰り返している技法も多く見られます。

——ウォーホルの作品作りに、京都での体験が生きているということですね。

またこの展覧会を開くにあたり、京都でウォーホルとのゆかりをリサーチするうちに、ウォーホルの三十三間堂の千手観音菩薩立像のスケッチが京都で見つかったんですよ!さらに1974年の二回目の来訪時に、ウォーホルが三十三間堂を訪れた写真も出てきたこともあって、展覧会会期中、三十三間堂本堂入口では、「ウォーホル・ウォーキング」の一環としてスケッチと写真の特別展示を開催していただいています。美術館での展示とはひと味違う、貴重な体験になると思いますのでぜひ訪れてみてください!


(展示されている千手観音菩薩立像のスケッチとウォーホルの写真)

——本当に貴重ですね!他のスポットについてはいかがですか?

1956年の1回目の旅では、ウォーホルは清水寺を訪れ、三重塔のスケッチを残しています。そこで、このスケッチを清水寺のどの場所から描いたのか特定出来ないか、ご相談に行かせて頂いたのですが、恐らく音羽の滝に行く参道の途中が一番角度的に近いのではないかというお話を頂き、そちらを「ウォーホル・ウォーキング」のスポットにさせていただくことが出来ました。

——とても骨が折れる作業だったのでは……?

我々のメインオフィスがある東京と展覧会会場である京都との物理的な距離という面では大変な部分はありましたが、ウォーホル・ウォーキングを通じて街全体がアートであふれるこの企画は、今回 京都でしかできないのと同時に京都の街の魅力も伝えられる点でもやれてよかった企画の1つです。

ちなみにこの「ウォーホル・ウォーキング」というタイトルはコロナ禍の中で、京都に足を運べない時間に、京都で何が出来るかイメージを膨らませながら考えたタイトルでして……それが“ART WALK KYOTO”のコンセプト重なりすぎていて正直びっくりしたのですけれど(笑)。「私も“ウォーキング”っていう言葉で京都の街で企画をやりたいと思っていたんですよ」というお話をさせていただいてお互いの方向性がぴったりですね、ということでご一緒させていただくことが出来ました。

——すごい偶然ですね(笑)!


(ウォーホルが清水寺で見た景色)
©The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. / Artists Rights
Society (ARS), New York

地域と繋がるアンディ・ウォーホル・キョウト

——また今回、展覧会会場では京都の老舗店とのコラボ商品も販売されているんですよね?

展覧会開催にあたって、地元の方々との結びつきも大事だと感じていました。物販会場には京の老舗とのコラボレーション商品があるんですが、ここでご一緒させていただいた老舗様にはある共通点がありまして。美術館のある岡崎を中心に東山エリアにお店を構えていらっしゃる方々とご一緒させていただいております。地元を盛り上げるためにお力をお借りすることで、よりウォーホルと京都の結び付きのストーリーが浸透するといいな、と思ったんです。

——地域全体でウォーホル展を盛り上げるという視点からコラボされていたんですね。それでは最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

実は、私も学生時代の“青春時期”を京都で過ごした1人でして、世界的な視点でも京都は独特の特性を持つ魅力的な街だと思います。1日2日では決して作ることができない、長い歴史の中で育まれた圧倒的なものが京都にはあると感じます。こうして私もウォーホル展を通して、改めて京都の魅力に向き合える良い機会をいただきました。

そのような京都の魅力を出来る限り取り込んだ展覧会にしたいという想いもあり、アートを通じて、京都の街の空間や時間を味わっていただくのに最高の機会だと思うので、ぜひ学生の皆さまにも、京都にウォーホル展を見に来ていただければと思います。

——ありがとうございました!

さいごに

いかがでしたか?
1つの展覧会に込められた沢山の想いを感じられたのではないでしょうか?
取材を受けてくださった中村さん、本当にありがとうございました!

取材後、もう一度アンディ・ウォーホル・キョウトを観にいきたくなりました。
アンディ・ウォーホルを、彼が作品に影響を受けた京都で堪能できるまたとないチャンス。
皆さんも訪れてみてはいかがでしょうか?


アンディ・ウォーホル・キョウト公式Twitter:
https://twitter.com/andywarholkyoto
アンディ・ウォーホル・キョウト公式Instagram:
https://www.instagram.com/andywarholkyoto/

(取材・文:同志社大学 グローバル地域文化学部 西村彩恵)
(取材:同志社大学 スポーツ健康科学部 早川茉美)
(一部写真提供:ソニー・ミュージックエンタテインメント)

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