京都在住アーティストに迫る! ~音楽を通して感じる京都@Homecomings編~
「みんなに京都の音楽をもっと知ってもらいたい」という思いで立ち上げた筆者の自主企画、『京都在住アーティスト特集』第1弾として、華々しく記事を飾っていただくのはHomecomingsの皆さん!
Homecomingsは、2012年(当時、京都精華大学3年生)に結成。3度に渡る「FUJI ROCK FESTIVAL」の出場経験もある京都在住の4ピース・バンド。毎週水曜日23:00~FM京都αステーションでのレギュラー番組「MOONRISE KINGDOM」、今年4月に公開された映画「リズと青い鳥」の主題歌を担当の他、京都新聞のイメージキャラクターを務めるなど京都を拠点に精力的に活動中。今年の10月24日には3rd ALBUM『WHALE LIVING』がリリース決定!
今回、インタビューに応じてくださったのは、ギターボーカルの畳野彩加(たたみのあやか)さん(ue上の写真、左)とギターの福富優樹(ふくとみゆうき)さん(写真、右)です。
(以下、畳野さん・福富さん)
もくじ
高校時代から漠然と描いていたこと、形にしてくれたのは京都だった
連日続く猛暑の中、行われた取材。ライブのリハーサルの合間を縫って現れたおふたりの額には汗がにじんでいた。京都に住み始めてから8年目の夏を迎えるおふたりに聞いた、京都で音楽活動を本格的に始めることになったルーツとは?
福富:家に古いアコースティックギターがあったことと、父がギターを弾くことができたという環境が、音楽を始めるうえで大きく関係していたかもしれません。実際、小学校の時は父からギターを教えてもらっていましたし、バンドの音楽を聴くことも好きでした。でも、田舎だったので、中学まで「バンドを組む」という感じはなくて、高校に入ってから、コピーバンドを組んで活動していました。畳野さんと同じクラスだったんです。ある時、僕たちのバンドが公園でライブをするときにクラスのみんなにチケットを配ったんですが、畳野さんがそれを持って、来てくれて。そこで僕に衝撃を受けたらしいです(笑)。それまで音楽とか全く興味なく、バレーボール部だったのに…。でしょ?
畳野:…(笑)。『僕に惚れた』みたいな言い方には納得いかない!もともと幼い頃からピアノは習っていました。でも、バンドにはそれまで興味がなくて。福富さんのライブがきっかけでバンドの音楽を聴いたり、ギターを弾くようにはなりました。
福富:そう、それで僕たちのバンドに畳野さんが入ってきたんですよね。
―なるほど。おふたりは大学も一緒ですよね?大学では絶対に音楽をやろうって決めていたんですか?
福富:もちろん、音楽はやりたかったんですけど、僕はそれ以外にも多くのことに興味があったんです。小説が好きで出版関係や映画にも関心がありました。そういう様々なことを学べる大学がいいなって思っていて、パンフレットを見ていた時に京都精華大学がピンと来たんです。季節ごとに音楽特集やアート特集などのパンフレットが届いて、行きたいなって思っていました。ちなみに、畳野さんとは全く別の大学に行くつもりだったんですが、畳野さんは受験で色々ありまして…結果一緒の大学になりました(笑)。
行きたい大学が京都にあった。縁あって京都の大学に来た。どれも素敵な京都との出会い。
―大学で一番楽しかったことはなんですか?
福富:大学の図書館にたくさん映画があって、全部、無料なんです。それをみんなで観ていたことですかね。音楽はやはり複合的なものですから、大学の授業や読んだ本、観た映画、その全てが音楽活動に生きていると思います。
畳野:私も、図書館で色々な映画を観たことは楽しかったです。サークルはフォークソング部に入っていましたが、あまり馴染めず、3回生の時にやっと今のHomecomingsを結成しました。大学に在学しながら、バンド活動ができたことは良かったですね。京都精華大学はとても自由な学校だったので、自分の好きなことを追及できたことはとても良い機会でした。
失うものより、受け取るものが多い京都
話は穏やかに進み、話題は「京都」へ。普通、どのバンドでも「ライブハウスの聖地」下北沢がある東京進出に目を向けてしまいそうだが、京都に留まる理由、そこに隠された魅力とは?
畳野:やっぱり、今所属している事務所であったり、結成当時から見てくれているライブハウスであったり、昔からお世話になっている人たちが京都に多いのは大きいです。
福富:もちろん、自分たちが音楽をこだわって作ろうとすればするほど、東京でない不便さを感じることは多いです。
―そんな不便さにも勝るような京都の魅力は何ですか?
福富:去年から始めたイベント「New Neighbors」のときに京都の良さを改めて感じました。このイベントは、自分たちが選んだ映画の上映とライブをセットで行うというものなんですが、最初東京でやろうとしたときに、全然映画館が借りれなかったんです。それに比べて京都は寛容で、場所を気軽に提供してくれることが多いんです。それは、京都にいたからこそできたって感じですね。
畳野:自分が曲作りをするうえでも京都はとても大きな影響を与えていると思います。ずっと住んでいると気付かなかったかもしれませんが、地方にライブに行って京都に帰ってきたとき、鴨川を見たり、建物が低いおかげで見えるどこまでも続く空を見ると、「京都に帰ってきたな」って思うようになりましたね。そういうある意味『自然』が残っている場所で楽曲製作ができることは、とても幸せなことだと思います。
福富:それでいうと、大学時代からずっと通っている本屋さんやアメリカの漫画を多く取り扱っているお店が京都にあることも、魅力のひとつかもしれません。今でも、自分の作品に影響していますし、普段の生活から音楽は生まれますから。
——最近、Homecomingsとして、京都に関する仕事が増えたというおふたり。そんなおふたりに聞いた京都との関わり方とは?
福富:Homecomingsが京都を伝える媒体になればいいなって思っています。自分は自転車で街を散歩しながら気になったお店に立ち寄るのが好きなんです。京都は、自転車でどこへでも行けるし、新しいものを受け入れつつも、古くからある良いものが残っていく「まち」だと思っています。でも、最近はたくさんあった映画館やレコード屋さんの数が少しずつ減ってきているんです。それは、とてももったいないことだと思うので、雑誌では紹介されない、そういうお店を紹介していきたいですね。
畳野:ご飯屋さんにしても、レコード屋さんにしても、個人で経営しているお店や京都にしかないようなお店が多く、どこに行っても「まち」としてきちんと成立しているのが京都の良さだと思います。また、最近、新しいことを京都で始めようとしている人も多いので、場所によって立ち並ぶお店の雰囲気が違うのも魅力です。そういうお店を人から聞いて行ってみたり、京都に根付いている雑誌を見て、行ってみたりすることも、自分ができることかなと思います。
全国の中高生へ
福富:怖がらずに、色々考えずにまずは挑戦してみることです。様々な世界をみることは大切だと思います。
畳野:面白い映画を上映している映画館、レコード屋さんやCD屋さん、古くからあるご飯屋さんや面白い本屋さんなどが凝縮して集まっているのが京都の「まち」です。京都には、好きになれるきっかけがたくさんありますよ。
(写真)左から米島(部員)、畳野さん、福富さん、山下(部員)、丸山(部員)
~取材後記~
畳野さん、福富さんをはじめとするHomecomingsの皆さん、貴重なお時間をありがとうございました。おふたりが石川県から上京してきたからこそ、そして長く住み続けているからこそ話すことができる京都の魅力、読者の皆さんにも伝わりましたか?
次回は、京都在住アーティスト、ユニット編です。いったい誰なのかは、ぜひ記事を見て確認してくださいね!
(立命館大学 文学部 山下杏子)