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京都で建築を学ぶということ。京都美術工芸大学で聞いてみた

こんにちは!皆さんは「卒業制作展」って聞いたことはありますか?多くの学部では4年間の学びの集大成として「卒業論文」を書くのですが、芸術系学部や工学部の一部などでは学びの成果として「卒業制作」を制作して展示を行います。

今回お伝えするのは京都美術工芸大学で2020年(令和2年)2月に行われた卒業制作展です。当時卒業を控えていた京都学生広報部の先輩に、大学で学んだことや学校の魅力について聞いてみました!

京都美術工芸大学とは

京都美術工芸大学は2012年(平成24年)に生まれた京都の中でも新しい大学です。「工芸」が学べる全国でも珍しい大学で、「建築学部」と「工芸学部」の2学部・2学科で構成されています。

キャンパスは東山区にある「京都東山キャンパス」と南丹市の「京都園部キャンパス」の2つがあり、なかでも京都東山キャンパスは元京都市立貞教小学校の跡地にあり、当時の校舎の一部をリノベーションした校舎で学べるのも特徴です。

京都の伝統建築を徹底解剖!?

まずは京都学生広報部PRチーム(取材当時)の鈴木先輩に話を聞きました。先輩は以前、京都で伝統建築を学ぶ魅力に関する記事も書かれています。

——大学では何を勉強されてるんですか?
京都美術工芸大学の建築学科では伝統建築と建築デザインの2つを学ぶことができます。私が在籍しているのは伝統建築コース(取材当時。令和4年現在は「伝統建築領域」)です。

伝統建築コースでは主にお寺や神社、町家についての勉強をします。具体的には図面の模写や、建物の実測調査、模型制作などですね。

京都美術工芸大学は東山区の七条通そばにあります。この辺りには神社仏閣や祇園の花街など伝統建築が多く、常に「本物」に触れながら学ぶことが出来るところが特徴といえると思います。

——なるほど!卒業制作はどんなものですか?
「卒展」では京都の河原町五条そばに明治時代からあるお茶屋さんの構造について調べて、保存のための改修や今後の利用法を提案するという研究を行いました。

まず建物を実際に測って現状がどうなっているのかを調べ、経年によって破損している所や改造されている所などを、実際に床板をめくったり小屋裏に入ったりして調べました。

調査と同時にパソコンに図面を描いていきます。この建物は2回改装しているので、今回は「当初」「一期」「現状」と3パターン用意しました。図面が書けたら保存・復元する所、整備して使いやすくする所という感じで仕分けしていきます。

図面が書けたら改修提案です。今回は「学術的な根拠を持った」改修案なので、建物の復旧や保存を重視した案を提案しました。

広い空間がいいから吹き抜けにする、とかではなくて当初に吹き抜けだった痕跡があるから吹き抜けに戻す、みたいな感じですね。最後に一連の流れを論文にまとめて完成です!

——なるほど。実際にやってみてどうでしたか?
現状図を描く時には苦労しました。見えない所も多いし柱とか壁とかが歪んでいたりするから、授業で描く図面みたいにグリッド(図面上に引く格子)に沿って真っ直ぐ並べられなくて困ったかな。

実際に建物の隅々まで見せていただいて、その建物がたどってきた歴史を建物から知れたのは面白かったです。

京都に残る町家が実際どういう状態なのか、を少しでも見ることができて貴重な体験したなと思います。

——大学のおすすめポイントを教えてください。
新しい学校なので、校舎が綺麗です!また人数が少ないので、先生との距離が近いのも魅力ですね。

在学中に二級建築士や木造建築士の資格が取れるのも特徴です。私も2回生修了時に二級建築士を取得しました!

まだまだ出来たばかりの大学なので大学と一緒に成長しているように感じます。

その分、校舎の使い方を開拓したり、サークルを作ったりと学生からさまざまな提案することができます。

資格取得に関しては、自発的に動かなければいけない所もあるので気をつけてください。資格試験の対策もしっかり見てもらえるのでちゃんと勉強すれば合格出来ます!

伝統建築とか工芸とか他大学とはちょっと違ったことを学べる大学なので、興味のある方は1度大学に来てみると雰囲気とかが分かりやすいかなと、思います。

勉強、部活、イベント事など中高生のみなさんも大変な事がいっぱいあると思いますが、ちょっと将来に目を向けてみると新たな楽しみを発見できるかも!

——ありがとうございました!

市民を守る「箱舟」をつくる

続いては、こちらも京都学生広報部PRチーム(取材当時)の目見田先輩の作品を見に行きました。先輩は以前、和菓子の魅力についての記事も書かれています。

一見ドームのようなこちらの建築、一体どのようなものなのでしょうか?

——大学では何を勉強されてるんですか?
建築学科の「建築デザインコース」(当時。令和4年現在は「建築デザイン領域」)で勉強しています。ここでは建築設計や構造・意匠(デザイン)・インテリア(内装)・計画などを勉強します。

 

——なるほど。このドーム?面白い建物ですね。
卒業制作では「ARK―屋内広場と避難所」というタイトルで作品を作りました。

「ARK」とは「箱舟」という意味です。普段は地域の憩いの場でありながら、いざというときにはノアの箱舟のように命を守る避難所として利用することが出来る建物を設計しました。

テーマが決まったら建築を建てる仮想の敷地を選定します。私は愛媛県出身なので、松山市の城山公園にあるさくら広場を選びました。実際に現地まで行ってロケーションを確認しました。

次は設計・模型制作です。建物は4層構造になっています。普段は広場や休憩スペースとして使いながら、非常時にはシェルターとして使えるように設計されています。全体的に吹き抜け構造になっていて、圧迫感を与えないような工夫がなされています。

模型は周辺模型(スケールの大きい、周辺も含んだ模型)と建築模型(スケールの小さい、建物そのものの模型)の2つを作りました。

最後は発表のためのプレゼンボードづくりです。建築設計ソフトで設計した3Dモデルをプレゼンボードに載せるための「レンダリング」という作業を行います。これにはまるまる一日かけました。加工まで合わせると2日間かかりましたね。

——実際に作ってみていかがでしたか?
私は、テーマと敷地を決めるのは早かったですが、模型制作に時間が掛かってしまいました。先輩方の卒業制作を手伝ったことがあるので、スケジュール管理が重要なのは分かっていましたが、なかなか思い通りになりませんでした。

4年間を通して、どの課題をやるにしても、スケジュール管理をすべきだと思います。卒業制作だけ頑張ろうと思っても難しい……。

また、建築は社会問題だけでなく環境問題にも配慮していかなければいけない時代なので、卒業制作もそれらを意識しなければならないと感じました。

——大学の良いところを教えてください。
まずは学内でWスクールできる(グループ校の授業を受けて資格がとれる)ことです。通常、大学で建築士の資格を取得する場合は卒業時に受験資格を得るのですが、ここでは希望して「受験資格取得講座」を受講すると2回生修了時に二級建築士、木造建築士の受験資格を得られます。

さらに、1学部2学科(当時)で専門的なことを学べることも魅力ですね。うちの大学は「工芸学部」というひとつの学部(当時)なのですが、その中に建築を学ぶ「建築学科」と伝統工芸やデザインを学ぶ「美術工芸学科」があって、両方の知識を習得することが出来ます

(※令和4年時点では「建築学部」「工芸学部」の2つの学部があり、建築学部の中に「建築学科」、工芸学部の中に「美術工芸学科」があります)。

あとは立地のよさですかね。京阪電車の七条駅からは歩いてすぐですし、京都駅からも徒歩圏内です。

京都は伝統建築が多く、建築を学ぶ学生にとって最高の学び場だと思います。

是非、京都の大学に通いながら充実した学生生活を送ってもらいたいです。

取材を終えて

今回の展示を見て、「建築」は単なる構造物ではなく暮らしや歴史、地域などの知識が絡んだ奥深いものであることが分かりました。卒業制作展には建築以外にも教室を使ったインスタレーション(室内展示)や伝統技術を生かした工芸作品など、多くの作品が展示されていました。

コロナ禍で学校行事は多くの影響を受けましたが、多くの大学で卒業制作展は開催されています。また多くが無料なので、興味のある皆さんは感染症対策にも気を付けながら、ぜひ実際に行ってみられることをおすすめします!

今回は、京都学生広報部員の在籍していた大学を取材しましたが、大学ごとに特徴的な学びがあることをあらためて知りました。まさに「大学のまち・京都」「学生のまち・京都」です。これは、自分の大学に通っているだけでは気づかなかったことだと感じました。

長い歴史や伝統文化はもちろん、多様な学生と共に学べることも京都で学ぶ魅力の一つではないでしょうか。

 

 

(文:同志社大学 社会学部 西野洋史)
(協力:京都美術工芸大学 工芸学部 鈴木萌絵)
(協力:京都美術工芸大学 工芸学部 目見田光穂)

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