インタビュー

綿善旅館に聞く!!これからの京都観光について

綿善旅館に聞く!!これからの京都観光について
この記事をシェアする

みなさん、こんにちは。
最近、大学の通学途中や京都の観光地などで、修学旅行で訪れている多くの中高生を見かけることはありませんか?これも「新しい京都観光に向けた共同宣言」の成果の1つかもしれませんね。あの頃に戻って一緒に修学旅行を楽しみたいものです。
前回のヤサカ観光バスのインタビューに続き、今回も、「新しい京都観光に向けた共同宣言」に沿ってご尽力されており、コロナ禍以前から多くの修学旅行生を受け入れていらっしゃる、綿善(わたぜん)旅館・おかみの小野雅世さんにお話を伺いました!

(「新しい京都観光に向けた共同宣言」については「安心安全な観光を楽しむために!〜これからの京都観光を考えよう〜」の記事で詳しく紹介されています。そちらも、ぜひご覧ください。)

 

―京都の一旅館としてやり直したい―スタッフと進めた社内改革

――綿善旅館には「売上増は悪魔の声、顧客増は天使の声」という標語があるそうですが、この標語はどのような意味で使われているのですか?
実は……、スタッフ含め私たちはもうこの標語をあまり意識して仕事に携わっていないんです(笑)。と言うのも、コロナ禍以前の京都って“オーバーツーリズム”(観光客の過度な増加により、地元民の生活に悪影響を与えたり、その土地の魅力を低下させたりすること)と言われていましたよね。特に2017年・2018年にピークを迎えて、私たちもその影響を受けました。
2018年の宿泊者人数が2017年より増えたのにも関わらず、売上は2017年よりも下がったんです。なぜだと思いますか?実は当時京都のあちこちにゲストハウス・ビジネスホテルが急増して我々は価格競争に巻き込まれていたのです。私たちは京都の一旅館として、“おもてなしのプロ”としてお客様をお迎えしているわけであって、それらと同じ土俵に立って戦っていませんでした。

しかし、当時は先代が旅館を仕切っていたことと、当時の流れには逆らえず宿泊料金を下げました。そうしたら連日沢山のお客様がいらして、スタッフ全員が忙しく休みもない中、必死で働くのですが……いざ蓋を開けてみたら、お客様の数が増えたにも関わらず、売上やスタッフの賞与にも全然反映されていなくて。結局、多くのスタッフが疲弊結果に至りました。
だから、標語に惑わされず京都の一旅館として、もう一度やり直そうと社内改革を進めていきました。

・1人でも多くのお客様を受け入れて1人1人が一生懸命、一日中血眼になって働くけれども、その日いらしたお客様のお名前やお顔は翌日にはもう忘れてしまうような接客をする。

・「おこしやす」ってスタッフみんなでお出迎えして、最初から最後までお客様のお名前を呼んで最後には丁寧にお見送りをする接客。そのお客様がいつの日か再びいらして「また来てくれはったんですか、お久しぶりです」という接客をする。

どちらが良いか?と話し合うと、スタッフ皆が、おもてなしを、接客をしたくて後者を選ぶんですよね。自然とスタッフの接客クオリティが高くなるとお客様の満足度もあがり、我々の働く意欲も高まる。
それを考えると、かつての標語は合っていないですよね。

――おもてなしを大切にされている綿善旅館では、コロナ禍の「安心安全な修学旅行」に向けた取り組みとしてどのような感染症対策を意識されていますか?
マスク専用のふた付きのゴミ箱を設置したり、ご希望の学校さんには使い捨てのスリッパを提供したりしました。アルコール消毒や検温は、100人、150人になってくると大変ではありましたが、毎回きちんとお伺いをして、欠かさずやるようにしていました。また、生徒さんで発熱の申し出があれば専門のダイヤルに連絡した上で受け入れ先の病院を決めるといった手順があり、先生方と連携を取りながら何か起こったときのための準備はしっかり行いました。

――大人数の修学旅行の場合、食事などはどのようにされるのですか。
基本は「部屋食」をご提案しています。現在は学校さんによっては全員外を向いて“黙食”するといった決まりがあるので、私たちは受け入れ先の学校さんの方針に基づいて設置をしています。コロナ禍直後は、大広間に大人数が集まってお互いが正面を向いて、わいわいと召し上がることが難しくなりました。以降は、大広間を使われた学校さんは一つもありません。

「新しい京都観光に向けた共同宣言」後の変化について

宣言後、オミクロン株の感染拡大などもありましたので、一般のお客様も、修学旅行生も一時的に減ったかもしれません。緊急事態宣言下では、教育委員会が修学旅行を禁止する地域がほとんどでした。
しかし、思い出がなくて悔しい思いを生徒たちにさせたくないという先生方の想いで、なんとか修学旅行を実現させて来られる学校さんもありました。感染爆発が起こらないよう、先生方のご苦労はかなりのものだったと思います。

このように、特別な思いで来てくださる修学旅行生が多かったので、私たちも心から楽しんでもらうために、着ぐるみを着てお迎えするということをやっていました。綿善旅館ではパンダの着ぐるみがよく登場しますが、これがとても喜ばれるんです。保護者の方から「『旅館の人が面白すぎた』と子どもが帰ってきて開口一番に言っていた。ありがとうございました。」というメッセージが、私個人のSNSに届くこともありました。

(実際に着ぐるみでお出迎えの様子を見せていただきました!)

――コロナ禍で遠方から京都に来れない修学旅行生のために「出張修学旅行」を検討されているとお聞きしました。どのようなものですか?

まず、「出張修学旅行」と言うのは、コロナ禍に修学旅行で受け入れ予定だった学校さんからキャンセルの連絡が続々とあったことが発案のきっかけです。また、中止となった学校の先生方や保護者の方から「中止になって本当に悔しい」とお声をいただきまして、「何か我々ができることはないか」と考えたところ、コロナ禍の“新しい京都観光”の楽しみ方として「出張修学旅行」のアイデアが浮かびました。
可能なら直接学校さんを訪問したいと思うのですが、まだ実現できる状況ではないというのが実際のところです。

――新しい思い出の作り方になると感じます。もし「出張修学旅行」が実現するとしたら、修学旅行生にどんなことを体験してほしいですか?
このご時世、“修学旅行に行けず、つまらない”と感じている生徒さんが多いと思います。修学旅行って泊まらないと分からない部分もたくさんあるじゃないですか。
「出張修学旅行」では、同じ想いいを持った京都の職人さんや文化人の方々と集まって何かお届けできたらいいと思っています。でも、「これを届けたい!」とか、「京都!」を推していくつもりはあまりありません。
「修学旅行で京都に連れて行かれたけど全然楽しくない」って、せっかく京都に来ているのに、全国にあるファストフード店で時間を潰して欲しくないですし、それでは修学旅行に行った意味がないと思うんです。“京都”というキーワードはあくまでもおまけで、何か体験することによって、「学校生活の思い出を作ってね!」という想いです。
私たちがきっかけをお届けして、あとは主体的に自分たちでおもしろいこと、興味深いモノ・コトを見つけていただきたいと思います。

――コロナ禍の突然の休校で困っていたお母さんや子供たちにとって、綿善旅館の「旅館で寺子屋」は非常にありがたかったと思います。この取り組みを行おうと決心したきっかけや理由は何ですか?
緊急事態宣言が発令されたときに、綿善旅館で働く、小学校1年生のお子さんを持つパートさんが「来週から子どもの学校が休校になるので、今後、仕事をするのが難しそうです。復帰の目処も分りません。どうしたらいいでしょうか……」という連絡が入りました。幸い、私の子どもはまだ保育園の年長さんだったので、特に影響は無かったのですが、もし1年学年がずれていたら……。そう考えると、「絶対世の中に困っているお母さんがたくさんいるな」と容易に予想できましたし、まずそこを何とか解決したいと思うようになりました。
また、八百屋の友人に相談をしてみたら、その友人は今コロナ禍で野菜を卸している飲食店・学校がどこも休業中で、市場に大量に野菜が余っている、世の中の野菜の流通が止まってしまっていると。最近よく耳にする“フードロス”問題で頭を抱えていて、何とかしないといけないと言っていました。

そこで、綿善旅館だったら場所も貸せるし、お野菜を美味しく調理する料理人もいるので何か一緒にできないかと考えたのがきっかけです。それに加えて、インバウンドの家族連れ向けに事業展開している知人に知恵を貸してもらって、予算のこともあり5日間だけ「旅館で寺子屋」を実施しました。

(綿善旅館オリジナル缶バッジ。修学旅行生に大人気だそうです!)

実際にやってみて、短い期間でしたが、企画に携わったみんなや参加者と同じ思いを共有できる喜びを味わえたことと、綿善旅館としてのこれからの動き方が分かりました。
それもきっかけで、最近新たに綿善旅館のお取り寄せサイト「綿善旅館ショップ」を作りまして、綿善公式キャラクターのグッズ販売や、過去に宿泊していただいたお客様に好評だったプリンや寄せ鍋をご自宅でも味わえるようにしました。京都に住んでいる学生さんだと、なかなか市内に宿泊する機会がないと思いますので、是非“綿善旅館の味”を家庭でも楽しんでほしいです。お取り寄せサイトは秋ごろオープン予定です。

おわりに

いかかでしたか?
今京都の大学に通っている皆さんも、全国の中高生のみなさんも、京都の旅館に泊まって“和の文化”を嗜んだり、お取り寄せサイトで“本格的な旅館の味”を自宅で気軽に味わったり、コロナ禍だからこそできる“新しい京都観光”を一緒に考えながら楽しんでみませんか??

また、綿善旅館ではお取り寄せサイトの他に、公式ホームページとFacebook、Twitter、Instagram、YouTubeを運営されています!是非こちらもチェックしてみてくださいね♪

 

・綿善旅館 公式HP
https://www.watazen.com/

・綿善旅館 公式Facebook
https://www.facebook.com/watazen/

・綿善旅館 公式Instagram
https://www.instagram.com/watazenryokan/

・綿善旅館 公式Twitter
https://twitter.com/watazenkyoto

・綿善旅館 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCh18PEN1AWVLARZ9OPZ74Dg/videos

 

(京都大学・角田景織子)
(京都女子大学・内海万知子、田中澪弥渚)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

かれんちゃん

卒業生が執筆した記事はかれんが紹介しているよ!