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ヤサカ観光バスに聞く!!これからの京都観光について

みなさん、こんにちは。最近、京都を歩いていると修学旅行生や観光バスを見かけることが多く、修学旅行の季節だな、と感じます。そんな修学旅行に欠かせないのが「観光バス」ですよね!!観光バスに1度も乗ったことがないという人は少ないのではないでしょうか。
また、修学旅行に関わらず、京都を観光する上では「バス」は欠かせません。京都の路線バスを利用すれば、わずか片道230円でどこでも行けるのです!!とてもお得ですね!

それはさておき、昨年11月、京都市と京都市観光協会が京都の観光関連業界の皆様と共に、「新しい京都観光に向けた共同宣言」を行いました。それを機に、実際に宣言に向けてご尽力されている観光事業者の1つとして、ヤサカ観光バス株式会社の取締役・統括部長の阿辻さんとバスガイド指導教官の前田さん、バスガイドの石橋さんと古川さんにお話をお伺いしました。

「観光バスの新しい形」としてヤサカ観光バスさんが取り組まれていることや、コロナ禍のバスガイド業務について、詳しくご紹介したいと思います。

(「新しい京都観光に向けた共同宣言」については「安心・安全な観光を楽しむために!〜これからの京都観光を考えよう〜」の記事で詳しく紹介しています。そちらも、ぜひご一読ください。)

安心・安全な京都観光に向けた取り組みについて

(取締役・統括部長の阿辻康雄さん)

――安心・安全な京都観光に向けた取り組みの一環として「文化財防災マイスター研修会」の認定ガイドがいるとお聞きしました。現在何人が文化財防災マイスターに認定されていますか?
阿辻さん:まず、「文化財防災マイスター」とは、主に京都の観光地に日ごろ携わっているバスガイドやタクシー乗務員を中心に、災害時にお客様含め周りの方の安全確保をするほか、文化財社寺も守り、京都の観光を支える人材のことを指しています。京都市消防局が主催となって平成22年から始まりました。

京都市消防局で1日、普通救命講習・防火講習・防災施設活用訓練を受講することで、マイスターに任命されます。現在は当時受講したガイドが13名在籍しております。

文化財防災マイスター研修会(第1回)の開催

https://www.city.kyoto.lg.jp/shobo/page/0000205491.html

――取り組みの一つとして、障害者の方でも気軽に旅行を楽しめるように「リフト付きバス」を導入しているとお聞きしました。このバスはどのような場面で使用しますか?また、実際に利用されたお客様からどんな反応がありましたか?

(こちらがリフト付きバス。車椅子ごと乗り降りでき、専用のシートベルトも着用するので移動中も安心です!)

阿辻さん:当社の観光バスは69台あり、そのうちの1台がリフト付きバスです。このバスはお客様のご要望に合わせて運行しています。
支援学校や高齢者施設での旅行、あるいは一般の学校で車椅子生活をされている方などにご用命いただいております。


(バスガイド指導教官の前田紗里さん)

前田さん:身体の不自由な方は旅行に行くとなっても「周りの人に迷惑をかけてしまうのではないか」と不安になってしまい、結局、旅行に行く足がどんどん遠のいてしまいます。その中で、リフト付きバスは「私でも旅行に行ける」という自信につながって、とても旅行を楽しみにして来ていただける人が多いですね。

また、健常な方と同じように旅行を楽しめるということがご自身の励みにもなり、「旅行は楽しい、また旅行に行ける」と自信を持って帰る人が多いです。リフト付きバスは、その方々にとって旅行の楽しさ“+α”なのだと思っていつもお供させていただいております。

――ワクチンの集団接種会場への輸送の取り組みなど、コロナ禍で観光バスが本来の用途以外でも活躍されたそうですが、どのような経緯があったのでしょうか。
阿辻さん:大規模接種会場への輸送は、行政からの依頼でした。大阪で実施された、国の大規模接種では、京都府から依頼を受け、北は京丹後市から南は木津川市まで、全地区からの輸送に携わりました。また、亀岡市と学研都市で行われた府の大規模接種でも同様です。これについては、京都府のバス協会が、何とかバスを使った輸送を、と府にお願いをして実現したことなので、働きかけなかったら実現しなかったかもしれません。

それ以外にも、シャトルバスが、東京オリンピック・パラリンピック期間中の輸送に携わりました。今後は、本来の観光バスとしての仕事を早く復活させたいというのが本心です。

――昨年4月に「働きやすい職場認証制度」の1つ星を取得されたそうですね。この制度を取り入れようとした背景や、取得後の求人の変化について教えてください。

阿辻さん:認証推進機関の一つである、三井住友海上火災保険株式会社より紹介していただいて、この制度を活用することになりました。
雇用については、コロナ禍で、正直まだ成果は出ておりませんが、今後はこの制度を活用したいと考えております。自動車運送業を含むたくさんの会社がこの認定を受けておられるので、その仲間に入れたのは良かったと思っております。
独自の取組として、嘱託定年の引き上げと女性ドライバーの積極的な採用を進めてまいります。

――お客様と接するバスガイドさんの成長のために、実施されていることはありますか?
前田さん:当社では、「おもてなし研修会」「健康講座」というものを実施しています。
まず、「おもてなし研修会」は旅行会社の営業マンが講師となって、旅行会社から見て「バスガイドの接客とは何か?」を教えていただきました。私は現在、若手のバスガイドを指導・養成する立場にいますが、同じ会社の先輩が後輩に指導することは良い反面、慣れてくると次第に先輩との距離がぐっと狭まるので、どうしても友達と接するような態度になってしまいがちです。そのため、外部の営業マン、特にベテランと言われる年齢層の方をあえてお招きすることで、若手バスガイドの緊張感を持ってもらえるようにしています。
お客さんと一番近くで接するのはバスガイドさん」であること、「バスガイドさんは主役。周りに支えてもらいながらお客様に“おもてなし”をして下さいね」といったことを教えていただきました。

次に、「健康講座」についてです。以前はメイクアップ講座やアナウンス講座を導入していましたが、これらは最終的に経験を積むことに尽きるので、視点をガラっと変えて、“社員の健康は社内で保証”してお客様にも安心していただけるよう、「健康講座」を新たに導入しました。大きく2つあり、1つは安全確認、もう1つはメンタル講座です。

安全確認に関してはお客様の安全を守るために、当社は視力0.7以上の人物(矯正視力を含む)を前提に採用しています。
メンタルに関してですが、バスガイドって皆さんが思っている以上に長期戦で、体力とメンタルをいかに保てるかが大事なんですね。
朝は大体5~6時出勤で、夜は道路の渋滞状況にもよりますが19時~20時退勤。翌日出勤がある場合は、お化粧や身だしなみを整える時間を逆算したら、遅くとも4時には起床しないと間に合いません。すると次第にメンタルがダウンしたり、目や身体の疲れが残ったまま出勤することとなり、非常に悪循環です。
そこで専門家を呼び、目・身体の疲れを残さない方法や、状況に応じてメンタルを安定させる工夫などをレクチャーしていただきました。

――2つの研修会の影響はどうでしたか?
前田さん:おもてなし研修会では、研修後に受講者から、「真にお客様と接するのはバスガイドということが分った」、「時が経っても研修の事を思い出して、一生懸命、お客様におもてなしをしたい」等の反応があり、外部に委託したことで良い影響をいただきました。
また、緊急事態宣言が発令された昨年の夏、あえて仕事がない期間に研修を実施し、勉強に費やす期間を設けたことがよかったと思います。
緊急事態宣言解除後の仕事ではお客様と接する機会が少なかったのにも関わらず、度胸も据わっていましたし、実際に研修で学んだことが存分に発揮できていました。

「健康講座」に関しては、受講後に「まずバスガイドが日常や仕事の安全を守らなければならないと分かった」とか、「しんどい状況を乗り切る方法が学べた」などの感想が挙げられました。切り口を変えたことで、バスガイドにとって今まで見えなかったことが見え、仕事で役に立つことが多くなったように思います。

コロナ禍での団体旅行・修学旅行の受け入れで大変だったこと、やりがいを得たこと

阿辻さん:まずはやはり、感染対策を一番念頭に置きました。大人数だと感染リスクがぐっと上がるので……。現場に出る運転手やバスガイドのみならず会社全体で「何としても感染させたらあかん!」という気持ちを持つことを心掛けました。
実際に修学旅行や団体旅行では、運転手やバスガイドがバスに乗る前、見学地から帰ってきた後の二重で消毒を行うほか、お客様が帰られる度に座席・手すりの消毒を行っていました。
現場にいる運転手やバスガイドは、それぞれ自分たちの仕事もある中で、仕事量が3~4倍に増えてしまいましたが本当によく頑張ってくれました。
その成果が実を結んだのか、感染者がほとんど出ない結果となりました!!

(バスガイドの石橋桃子さん(左)と古川暖さん(右)。入社2年目のフレッシュなお二人です!!)

石橋さん:コロナはあまり関係ありませんが、修学旅行でも団体旅行でも、前日までに事前学習や準備を進めることが大変ですね。私自身が入社して2年しか経っていないので、まだまだ知らないことが多くて。
特に修学旅行生は関西以外の地域からいらっしゃるので、京都の歴史や文化を知らない方が圧倒的に多いんです。
これから向かう神社仏閣などの由緒や魅力を皆さんに分かりやすく簡潔に伝えるのはすごく難しいし、前日まで悩みます。でも、事前に粘り強く勉強・準備したからこそ、仕事は上手くいきますし、お客様の反応も良いです。それらが私の仕事に対するモチベーションアップにつながりますね。

あとは、修学旅行生に安心して京都を楽しんでもらうことを心掛けています。特に、感染者の多い地域から修学旅行で来た学生さんを観光地でガイドしたとき、地元の方に心無い言葉を投げかけられたことがありました。そういう状況に遭ったら、まず自ら修学旅行生を守る姿勢を取り、学生さんの見えない場所で、その方々に丁寧に事情を説明して納得してもらうとか、帰りの車内で学生さんが「京都の修学旅行は苦い思い出になった」とならないよう、全体へのフォローを心掛けました。

古川さん:私は中高生の皆さんに「修学旅行、凄く楽しかったです」とか、「また会いたいです」って言われることにやりがいを感じますね。また、どのお仕事でもそうですが、特にコロナ禍で皆さんマスクを着用しているので、今どのような反応をされたとか、お客様とのコミュニケーションが難しいと感じています。
そのため、お客様に少しでも反応していただけたら、自分自身の反応が相手に伝わりやすいようにマスクをしていても常に笑顔を絶やさないことを心がけています。前田さんが先ほど仰っていた、「おもてなし研修会」が非常に役に立ちました。3月に入社して緊急事態宣言が明ける秋までは空白期間があったので、まだまだ経験が足りないですが、早速研修会で学んだことが活かせました。
ちなみに、暫くお客様にはお見せできませんが、私のチャームポイントは“えくぼ”です(笑)。

――石橋さん・古川さんがバスガイドになろうと思ったきっかけは?

石橋さん:私は鹿児島県出身で、幼いころから関西に憧れがありました。また、母がバスガイドをしていて、バスガイドという存在を身近に感じていたので、バスガイドさんの仕事って良いなぁ、とずっと思っていました。高校の修学旅行が京都で、実際にバスガイドさんのお姿を見て、「自分も京都でバスガイドをやってみたい!」と決意しました。

古川さん:私は愛媛県出身で、私も高校の修学旅行が京都だったんですね。それがきっかけで京都に憧れを持ち、将来は京都に来てそこででしか味わえない仕事に携わりたいと考えていました。偶然ですが、その時担当だったバスガイドさんが高校のOGだったこともあり、「私も同じ道に進もう!」と決心しました。実際に業務に携わる中で、「バスガイドの仕事は自分の為にある、もはや“天職”なのでは?」と思うほど、とても充実しています。
京都の大学に通っている学生さんも、修学旅行がきっかけで京都に憧れて進学される方が多いので、私たちと何か通じるものがありますよね。

最後に

ヤサカ観光バスさんのインタビュー、いかがでしたか?
皆さんの修学旅行や家族旅行が素敵な思い出になったのは、きっとヤサカ観光バスさんのように影で常に皆さんの旅行が良いものになるようにご尽力くださっている方々の努力のおかげですね!!
これから修学旅行や京都観光に行く方がこの記事を読んで、ヤサカ観光バスさんの観光に対する熱い思いやお客様に対するおもてなしの心を少しでも受け取っていただければ幸いです。

次回は、「新しい京都観光」に向けて実際に取り組みをされている観光事業者さんへのインタビュー第2弾として、綿善旅館さんのインタビュー記事をお送りします!よければそちらもぜひご一読ください。
最後まで読んで頂き誠にありがとうございました!!

 

 

(京都女子大学  文学部  田中澪弥渚・内海万知子)
(京都大学   文学部 角田景織子)

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