『京都ホームズ』作者・望月麻衣先生にインタビュー! -物語はフィクション、世界観はノンフィクション-
もくじ
執筆は午前中が勝負、メリハリを。
―望月先生の執筆の際のルーティーンや行き詰った時の対処法などがあればお聞かせください。
仕事のルーティーンはしっかり決まっています。私は元々小説投稿サイトで、こっそりと趣味で書いていたんです。だから、私が小説を書いていること自体は家族も知っていたのですが、家族の前で書くことはなかったんですよね。子どもが小さいときは、子どもが幼稚園に行っている間に書いていました。そのうち日中に書くことに慣れてしまって、その時間じゃないとむしろ書けなくなったんです。
今も「朝の9時半くらいまでは家事をする。9時半にコーヒーを淹れて、午後1時くらいまで書く。その後休憩して、あとは家のことをやる。夜は8時くらいからパソコンの前に座って昼間書いたものの推敲を1時間ちょっとして、11時半には寝る。」というのがルーティーンになっています。
自分にとって午前中が捗る時間なので、その時間書けなかったらその日は書けないと諦めて、書くことから離れますね。出かけたり、動画配信サービスを利用して映画を見たり、本を読んだり……。ただ、作品のイメージに引きずられてしまうので自分が書いているようなジャンルの本は読まないようにしています。
あと、夕食後のウォーキングを日課にしているのですが、その時間に昼間書いたものを思い浮かべながら、こうしたらよかった、というようなアイディアを思いつくこともあるので、そうした時間も大事にしています。
―ウォーキングによって頭が整理されるのですね。
私もそうなんですが、今の人はスマホとかテレビとか、何かしらをずっと見ているじゃないですか。ウォーキングだと、景色以外は何も見ないから頭がよく活動するようになるというか。だからウォーキングの時間ってすごく大事だと思うので、レポートに忙しい学生さんもそこでリフレッシュしていただけるといいですね。
―京都は歩くだけでも見るものが沢山あるので、歩いている方が多い気がします。
歩いて飽きないので歩けてしまうんですよね。前に、『京都ホームズ』の表紙を書いてくださっているイラストレーターのヤマウチシズさんが、ダブルサイン会の時に京都に来てくれて、京都市役所の辺りで一緒にご飯を食べたんです。
そこで解散するときにヤマウチさんから「宿までどうやって帰ったらいいのか」と聞かれまして。
京都市役所から宿がある大丸京都店あたりまでは歩いて20分くらいなので、道順を教えて「歩いてすぐだよ」と言ったんです。
そしたら次の日、「めちゃくちゃ歩かされてびっくりした」と言われて(笑)。ヤマウチさんは徳島の方なんですが、主な移動手段が車なので、この距離は歩かないらしいんです。そうした感覚の違いから、「京都って歩くんだな」と気づきました。京都市役所から大丸京都店がある烏丸四条への移動であれば、バスに乗るのも面倒くさいし、地下鉄に乗るほどでもないし、平気で歩きますよね。
―確かに、京都だと「それくらいなら」と歩いてしまいますね。それが積み重なると、結果的に物凄く歩いているのかもしれないです(笑)。
(インタビューの様子)
伝統と今を生きる京都の起源は「元首都」
―望月先生は北海道出身ということですが、京都に住んでみて、住む前との京都に対するイメージに変化はありますか?
主人が京都出身だったので、住む前は年末年始などには一週間くらい京都に帰っていましたが、清水寺や金閣寺に行くといった観光しかしていませんでした。いざ住んでみたら、何もないところに「○○跡地」の石碑があるといった、そんな些細なことに驚くようになりました。
また、多くの地域ではお祭の開催日は週末に移しますが、京都では昔ながらの日程できっちりやったり。6時に鐘の音がゴーンと鳴ったり、夜に「火の用心」と声を上げながら拍子木を打って歩いてるのも時代劇みたいで、同じ日本だけど「異世界」みたいなのを感じましたね。
他にも、北海道っておせちを作っても待ちきれなくて大晦日のうちに食べてしまうんですよね。紅白(歌合戦)とかを見ながら食べて、元旦はその残りとともにお雑煮を食べるみたいな(わが家に限ってのことかもしれませんが。笑)。だから、きっちりと伝統に基づいている京都を見ると驚くんですよ。
―そういった違いもあったんですね(笑)。京都に数年間住んでみて、今の望月先生から見た京都の魅力は何ですか?
“長い歴史と伝統を守りながら、今を生きている”ことですかね。やっぱり元首都なので、新しいものも実は好きで、取り入れる感覚や柔軟性もあるんです。ちゃんとお付き合いすればちゃんと返してくれる義理堅い性格もあります。
京都の人は「こわい」と言われることもありますが、きちっとしていることの裏返しでもあると思います。「お昼時に来てね」と言うと、「それなら終わった頃にお茶しましょう」と相手に負担をかけさせないような。いい意味で、変に深入りをしないので、適度な距離を保つので大人の付き合いがすごく楽にできるんです。
―歴史が長い京都だからこそたどり着いた感覚なのかもしれないですね。では最後に、読者に向けて一言お願いします。
作品は京都に住んでる方も住んでない方も楽しめるように工夫して書いていますが、読んでみて京都のまちの新しい発見があったり、行ってみたいと思ってもらえたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
―ありがとうございました!
インタビューを終えて
いかがでしたか?
京都の情景がそのまま思い浮かぶような望月先生の作品。背景には、ご自身が京都に移り住んでからの感動した経験や、五感での体験が大きく影響していたことがわかりました。望月先生自身の感動を作品に反映させているからこそ、読者も京都が好きになるのだと思います(私もその1人です)。
また、京都を舞台にした作品を多く執筆されてきた望月先生だからこそ見える、京都の「人とのつながり」や京都観についても伺うことができました。
この記事を読んで初めて望月先生のことを知った方や、京都への進学を考えている中高生の皆さんも、この読書の秋に作品を読んでみてはいかがでしょうか?
読めばあなたもきっと京都を好きになるはず。
(取材・文 同志社大学 グローバル地域文化学部 西村彩恵)
(取材協力 同志社女子大学 現代社会学部 石黒裕理)
(取材協力 平安女学院大学 国際観光学部 柳生未来)
(取材協力 同志社大学 社会学部 成田萌)