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「HELLO WORLD」制作のグラフィニカに聞いた!映画と京都をつないだものとは?

「HELLO WORLD」制作のグラフィニカに聞いた!映画と京都をつないだものとは?
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2019年9月20日(金)から全国公開され、大ヒット上映中の「HELLO WORLD」。
脚本に「正解するカド」の野崎まど、キャラクターデザインに「けいおん!」の堀口裕紀子を迎えた“新機軸のハイスピードSF青春ラブストーリー”です。
この作品を制作した株式会社グラフィニカ(以下グラフィニカ)はアニメーションを中心に、ゲームや映画、CMなど幅広いジャンルで映像制作を手掛けています。
私たち京都学生広報部は、グラフィニカ代表の伊藤暢啓さん、プロデューサーの堀口広太郎さん、アニメーションプロデューサー二木啓輔さんへインタビューする機会をいただきました!

作品の魅力である3DCG(※)や、舞台となった京都についてお話をうかがってきたので、最後までぜひご覧ください。

※平面上に奥行き感や立体感のある画像を作るコンピューターグラフィックスの手法のこと。

<以下、敬称略>

縁をつないだ京都が舞台になった作品「HELLO WORLD」


アニメーションプロデューサーの二木啓輔さん

――「HELLO WORLD」、拝見しました。作品内では河原町や京都市バスなど日常生活でも見かけるものがたくさん出てきて、それを見るたびにワクワクしました。

二木:京都が舞台、かつ前半がラブコメパートということで、美術の担当会社と一緒に物語の舞台となる4月の京都の季節感や街並みを取材しました。また、京都の風景を可能な限り再現したいという思いが強く、実際にある場所を使いたくて、企画が固まった段階から京都市様を通じて各所に使用許可のお願いをしていました。

一方で、少し変えているところも見どころです。
10年後の京都の街並みについてリサーチをした結果、段階的に自動運転が導入されているのではないかと考えて、1レーンだけ自動運転用のレーンを作っています。
そのレーンを決められたルートで市バスが走っていると仮定し、バスの後ろに「自動運転中」の表示もさせています。
SF色の強い映画ですが、現在と地続きの話にしたかったので、細部にまでこだわりました。

――京都を舞台にした作品はたくさんありますが、京都市が後援というのはなかなか珍しいですよね?

二木:実は京都市様がアニメを後援するのも、制作段階から関わるのも初めてなんだそうです。
京都市の紋章を使いたい、という私たちの依頼に対し、リアリティを追求する熱意を感じてくださりご協力いただく運びとなりました。

伊藤:2年半前、京都にスタジオを作ったことで、京都市様含め、京都の皆様との交流が始まりました。
そこからつながっていたさまざまなご縁が、今回の「HELLO WORLD」にもつながったんです。

――なぜ京都にスタジオを作られたんですか?

伊藤:私たちの会社は地方展開を積極的に行っておりまして、きっかけはやはり人とのご縁でした。これまで京都のクリエイターの方に何年もお仕事をお願いしてきたなかで、その方たちと意気投合して京都にスタジオを立ち上げたんです。
昔はすべて手書きで制作していたので、情報のやり取りの便宜上、東京に一極集中していました。
しかし、デジタルになってくると、ネットがあればどこでもそのやり取りができるようになり、東京にこだわる必要がなくなってきたんです。
そのような時代の流れに乗って、人材を確保するために積極的に地方に出ていこうという考え方が基本としてありますね。

アニメーションをやりたいという人は、日本全国にいると思います。そういった人との関係を築く中で地方でのスタジオづくりはもっと広がっていくんじゃないかなと思いますね。

3DCGと作画の融合。そうして生まれた新たな表現とは?


プロデューサーの堀口広太郎さん

――「HELLO WORLD」の見どころのひとつでもある3DCG。3DCGアニメーションには、ロボットのようなかたいイメージがあったのですが作品のキャラクターたちの表情の豊かさや柔らかさに驚きました。

二木:3DCGアニメーションも、細かい修正はアニメーターが自分で作画(手書きで絵を作り上げること)することもあり、3DCGと言われるものも実は手描きの力が含まれているんです。
今回、キャラクターデザインの堀口悠紀子さんに重要なシーンの表情などは作画で修正指示をいただいて参考にしました。
作画でキャラクターを描くことはほとんどしていませんが、感情的な表情の場面では2Dのアニメーターの力も取り入れて、よりよいものを作れるというのがグラフィニカの制作会社としての強みかなと思いますね。

――制作過程で、作画のアニメと違い苦労した点や、逆に描きやすかった点を教えてください。

堀口:アニメ業界全体ではフリーランスの方々が多く、作品に応じて人を集め、それぞれの得意なところをお願いしています。
でも、私たちの会社は3DCGスタッフの社員比率が高いので、事前準備から納品まで社内のスタッフが中心となることができます。
そのため制作スケジュールを守りながら、安定したクオリティで作品を作ることができるところが私たちの会社の評価につながっているんです。

ただ、3DCGだけで作品を作り上げているわけではありません。
アクションシーンは3DCGならではのカメラワークを使いますが、回想シーンの一部など3DCGモデルが無いカットは作画で描いていただいています。。
また、3DCGと作画が混ざっているカットもあり、例えば主人公ではなく道中を歩いている人々などは、カットの内容に合わせて切り替えています。
3DCGと作画の良さを使い分け、それぞれのクリエイターが力を合わせて制作しています。

アニメーションのこれから


グラフィニカ代表の伊藤暢啓さん

――アニメーションを制作する人達の信念とは?-どういった気持ちで何を届けようと思っているのですか。

堀口:元々アニメが好きで業界に入ってきた人が多いので、私たちの作品を見て喜んでもらえるのが一番のモチベーションですね。
SNSの反応がいいと嬉しいですし、感想が聞こえてくると作品を作る上での原動力になります。

二木:今はネットやSNSなどで、ダイレクトにお客さんの反応が返ってくることがすごく楽しいです。やはりエンターテインメントなので、お客様ありきで自分の作ったものが世間にどう受け入れてもらえるかというのは怖い反面、面白いしモチベーションでもあります。

堀口:特に映画はテレビアニメよりもスタッフの思いが90分〜2時間弱という短い尺に集約され制作に加えてかける時間も長いです。
さらに、今回の作品では京都市様に制作をご助力していただくなど広がりを持って作ることができたので、より多くの人に見てもらいたいという思いが込められていると思います。

――先ほどお話しされていたように、全国でアニメーションが作れるようになっていけば、アニメに携わりたいという中高生もより増えていくと思います。そんな学生にメッセージをいただけたら嬉しいです。

伊藤:日本のアニメーションは世界に出ていけるコンテンツです。これからとても将来性がある成長産業だと僕は思います。
AIに取って代わられる職業というのは今、山ほどあると思いますが、アニメーションというのは人が作っていくもので一生なくならない仕事なのではないでしょうか。
ぜひ思い切ってこの業界に飛び込んでいただきたいです。

――最後にコトカレを見てくれている学生に向けて「HELLO WORLD」で注目してもらいたい、伝えたいことを一言お願いします。

二木:監督もおっしゃっているんですけど一カット一カットにいろんな意味が込められています。細かい背景にも注目して二回、三回と見ていただきたいです。
そして一緒に行った人と「これはこうだったんじゃないか」などいろいろ話していただけると嬉しいです。

さいごに

京都の大学に通われていたスタッフも多く、アニメーションを作る際に話を聞いて作品に活かせたそうです。
私たちの先輩が制作にも関わっていたことに親近感を感じます。
私は京都に来て間もないですが、市バスや京都駅など見慣れた街並みが美しく描かれていることにとても感動しました。
見慣れた京都のまちの中で主人公が大切な人を守るために戦う姿や迫力あるアクションシーンに夢中になること間違いなしです!ぜひ劇場に足を運んでみてください。

「京都国際マンガ・アニメフェア2019」通称”京まふ”に行ってきた!

さて、今回インタビューさせていただいたきっかけはというと、2019年9月21日、22日に京都市勧業館みやこめっせで開催された「京都国際マンガ・アニメフェア2019」通称”京まふ”だったんです!

京まふは総来場者数4万人を超える、その名の通りマンガ・アニメのイベントです。
さまざまなアニメやマンガのグッズ販売や新作アニメのPV、キャラクターのパネルやフィギュアなどが展示されていて、コスプレエリアやキャラカフェ、人気声優が出演するステージなどもありマンガやアニメに詳しくない人でも楽しめます!

見どころはたくさんありましたが、私が今回一番印象に残ったのは展示されていたアニメの原画です。
今年の京まふではTVアニメ「異世界チート魔術師」の原画やキャラクターデザイン資料が展示されていました。
一つ一つが丁寧で美しい絵で、アニメ制作の大変さが伝わってきます。
テレビや配信サイトなどで気軽に見られるアニメと違い、こういった裏側の部分はなかなか見られないので興味深かったです。

コトカレでは以前の京まふについてレポートした記事もあるのでぜひご覧ください!
→【京まふ】京都のマンガ・アニメの祭典に行ってきた!!https://kotocollege.jp/archives/3855

 


Ⓒ2019「HELLO WORLD」製作委員会
2019年9月20日(金)より全国東宝系にて公開中!
https://hello-world-movie.com/

 

(文章:立命館大学 文学部 田中陽奈子、同志社大学 社会学部 吉持寿志)
(写真:京都大学 公共政策大学院 太田アトム)
(取材協力:立命館大学 文学部 山下杏子)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

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卒業生が執筆した記事はかれんが紹介しているよ!