インタビュー

“分からないけど、グサッと突き刺さる”インタビュー。【市立芸大学長・哲学者、鷲田清一さん】 ②市立芸大・学生生活編

“分からないけど、グサッと突き刺さる”インタビュー。【市立芸大学長・哲学者、鷲田清一さん】 ②市立芸大・学生生活編
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こんにちは!前編の学生時代・制服編(https://kotocollege.jp/archives/8949)に引き続き、後編は市立芸大・学生生活編です。学長から見た京都市立芸術大学(以下、市立芸大)や、今を生きる学生の皆さんへの熱い思いを語っていただきました。

市立芸大編:「卒業式の式辞は年中考えています(笑)。」

―ここからは、京都市立芸術大学の学長としての鷲田さんにお伺いします。学長から見た市立芸大のいいところを教えてください。

きちんと声が出る!例えば、僕とすれ違っても「おはようございまーす‼」って大きな声であいさつしてくれるし、先生が向こうからやってきたときにも「せーんせーっ‼」って声をかけてくれる。みんなしっかり声が出ていて、もごもごしたりしないんです。そこが本当に偉いなと思っています。一般の大学だったら、学長どころか教授でも気づかないふりして通り過ぎるからね。声が出る理由は、ほとんどの人が自分のやるべきことが分かっているからだと思います。もちろん製作とか演奏の中では悩むけど、自分が何したらいいんだろうっていう悩みがない。だから、人に対して遠慮したり恥ずかしがったりせず、パーッと声が出るんです。

―すごく活気がある学校なんですね!

その代わり、悩みも早くから深いよ。今まで周りから、「すごいなぁ!」と言われてきた人が、ここに来たらただの人になるわけじゃないですか。しかも、努力してきた人ほど他の人の実力がすぐにわかるから、ショックが大きくて、みんなものすごく悩むんです。自分の絵を先生に「汚いなぁ、それ。」って言われたら傷つくでしょう?でも、センスとか価値観そのものに対して指導が入ってくるわけだから、そのようにしか表現できないんです。楽器や画材を買うのにもお金がかかるから、家庭環境による差がもろに出るし、就職もプロになれるのは限られたほんの一握りの人だけで、一般の大学よりもシビアですね。一般の大学で就職活動するときも、自分の存在そのものが傷つけられて、「自分は何ほどのものなんやろ。」って愕然とするじゃないですか。でも彼らは、1年生の時からそれと同じような経験をしてくるんです。

僕は、これまで大阪大学、関西大学、大谷大学と大小様々な大学に勤めてきたんですけど、実技系の大学はと全然違うなと思いますね。最初にみんなが目指すところと出口がバラバラになってしまうから、卒業式の式辞はいつも難しい!留学が決まってさっそうと出ていく子もいれば、演奏家になるのをあきらめる子もいるし、芸術とは全然関係ない仕事につく子もいて、千差万別なんですよ。それをみんな同じ言葉で激励するというのが本当に難しい。だから、式辞にどんな言葉を送ったらいいかは年中考えていますね。時代の空気とか学年の特徴とかいろんなことを考えながら、「この言葉を知ってたら、力になるやろうな。」って思う言葉を探してきたり、自分で考えたりして、パソコンのフォルダに書き溜めていっています。卒業式ではみんなハイになっているから、グサッと突き刺さる言葉がないと伝わらないし、すごく重い仕事だなと思いますね。

学生生活編:「とにかく、色々な現場に行ってみてください!」

―中高生や大学生にオススメしたい本を教えてください。

毎日、朝日新聞を読んでください‼(笑)。コラムで毎日違う本を紹介しているので、その中でグサッと胸に刺さったり、何が言いたいのか分からないけど気になって気になって仕方がないと感じた本を読んでもらえたらいいかなと思います。薦めたい本は何百何千とあるんですけど、みんなにいい本なんてなくて、人によって何を最初に薦めたらいいかは違うんです。一人ずつお話しして紹介できたらいいんですけど、それはできないので、コラムを読んで心に引っ掛かった本から探っていってみてください。

―今を生きる中高生に対して、しておいて欲しいことはありますか?

ごちゃごちゃ考える前に、やってみたらいいんちゃうかな?みんな先に自分にできることとできないことの境界線を勝手に引いてしまっているんですよね。人ってやってみたら意外とすごいことでもできたりするし、合わないと思っていたこともやってみたらとても味のある仕事だなと感じたりするかもしれない。やる前に自分にふさわしいことを考えてみても分からないんです。そもそも、学びってそういうものじゃないですか。「何でこんなことしなきゃいけないんだろう。」って思いながら意味が分からないままやらされて、それが身についた後でやっと「こういう景色を見るために、やってたんだ!」っていうのが分かる。

例えば、語学の活用を覚えるみたいなね。意味が分からないままやることが学びであって、こういうことやったら就職につながりますよとか、こんなことが分かりますよっていうのは学びではなく、レールを通っているだけなんです。あらかじめその意味が分かるようなことでは、自分の世界は広がらない。じゃあ、どうして分からないことを始められるのかっていうと、グサッと突き刺されたり、心を鷲掴みにされたりするような景色や言葉と出会うからなんです。僕が哲学に進もうと思ったのも同じで、哲学の本って最初読んだら2割も分からないんです。この年になってもまだ8割くらいしか分かった感覚がない。でも、数ページもしくは何十ページに1つ、「意味は分からんけど、なんかすごいこと言ってるんじゃないか?」って掴まれる言葉があって、なんでこんな気分になるのか知りたくなってくるんです。

―なるほど!分からないけどやってみようって思うことが大事なんですね。

やってみようっていうより、やらされるって感じかな。“出会ってしまって、引きずり込まれる”みたいなところに自分の身を置かないといけない。そのためには、先に自分で線を引いて決めつけないで、いろいろな現場に行ってみること!とくに学校と関係ない場所がいいです。学校って学生っていう同類ばっかりだし、先生方もみんな元学生でしょ。違う世代とか違う生業の普段なじみのない人たちが生きている場所に、できるだけたくさん身を置くと、「なにこれ!」っていうものに出会うチャンスが遥かに広がります。年上の人だけじゃなくて、赤ちゃんでもいいですよ。とにかくそのような場に、たくさん自分で歩み出ていくことが大事。そのために学生生活があるんだし、どんな失敗をしてもやり直しがきくのが学生なんです。会社に入ったら何かあったら終わりだけどね。だから、学生のうちに小さな傷をたくさんつけていって欲しいですね。

―取材を終えて

哲学に対する勝手なイメージが先行して、「小難しい話ばっかりだったらどうしよう…。」と最初は少し不安だったのですが、とても面白いお話に驚きと納得の連続で、笑いの絶えないインタビュー現場でした。鷲田学長、お忙しい中インタビューへのご協力、本当にありがとうございました!読んでくださった皆さんも、学生生活を送るヒントをたくさん得られたのではないでしょうか?それぞれの目標を胸に、2018年度も頑張っていきましょう!

(文:同志社女子大学 生活科学部 呉原かれん)

(取材協力:立命館大学 産業社会学部 宇高浩嗣)

(写真:京都産業大学 文化学部 石永路人)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

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