【京都三大祭 祇園祭】大学生囃子方 佐々木さんが語る長年の想いとは…!?
7月になると、京都の街中からコンチキチンとお囃子の音色。
京都では7月の間、京都三大祭の一つであり、日本三大祭の一つにも挙げられる「祇園祭」が行われます。そして、このお祭りに欠かせないのが「祇園囃子」。ムードを盛り上げてくれる囃子の音は、京都では「コンチキチン」という表現で親しまれています。
祇園祭とは…?
祇園祭は八坂神社の祭礼で、およそ1,100年まえに行われた疫病退散のための御霊会が始まりとされ、7月の間に行われる様々な行事や祭儀をまとめて祇園祭と呼んでいます。前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)に分かれていて、17日が神幸祭(前祭巡行)、24日が還幸祭(後祭巡行)です。見どころは山鉾巡行と神輿で、約25mもある鉾が京都の街を進みます。巡行の他にも、大きな鉾が組み立てられる山・鉾建て(前祭10~14日、後祭18~21日)や、巡行直前の宵山(前祭14~16日、後祭21~23日)が、祭りを彩ります。
第15回京都学生祭典の企画として、学生が文化について学び、毎月15日に発信する「京都学生文化発信の日」。
今回は、鉾に乗って祇園祭を盛り上げる大船鉾(おおふねほこ※)の囃子方である佐々木良輔さんにインタビューしました!
※大船鉾…元治元年(1864年)に焼失して以来、長らく休み鉾として巡行に参加していなかったが、平成9年にお囃子、平成26年に鉾が復興した。
大学生の囃子方、佐々木良輔さん
佐々木良輔さん
京都産業大学経営学部3回生。小学2年生の頃から大船鉾(おおふねほこ)の囃子方を担っている。京都学生祭典実行委員会では,京炎みこしプロジェクトのメンバーとして活動。
――小学生の頃からお囃子に参加していたということですが、幼い頃、祇園祭はどのようなお祭りだと思っていましたか?
祖父が四条町で店を営んでいたこともあり、幼稚園の頃から祇園祭の宵山期間はそこで過ごすことが多かったです。最初の頃は夜店めぐりが何より楽しみでした。また、夕方から何回か演奏されるお囃子も楽しみで、太鼓や笛・鉦(かね)の音に引き寄せられるようにお囃子を聞きに連れて行ってもらっていましたね。
――そのお囃子を見て、自分もやってみたいと思うようになったんですね。
そうですね。囃子方の揃いの浴衣、お腹に響く太鼓の音、心地いい笛の音、遠くまで響きわたる鉦の音、そのすべてがカッコイイ!と思って、いつか自分もこんな風にお囃子をやってみたいと思うようになりました。
小学生のころの佐々木さん
――お囃子を始めたころはどのような気持ちでしたか?
お囃子を始めた頃は、ただやっているだけで楽しかったです。囃子方の大人の人が「子どもは町の宝」と言って膝にのせ、手を添えて一つ一つ教えてくださりました。お囃子は太鼓・笛・鉦の3種類で構成されていて、1つの楽器を習得するのに10年はかかると言われています。私は鉦を10年以上担当し、現在は太鼓の見習いをしています。
――子どもは町の中で大切にされていたんですね。
宵山期間、他の鉾のお囃子を聞きに連れて行ってもらったり、懸装品を見に連れて行ってもらったりしていました。また、大船鉾は昔巡行に参加していたこと、幾度の大火で車輪などが焼けてしまい休み鉾となってしまったこと、大火の中で町内の人達が必死になって懸装品を守ってきたこと、休み鉾となっても御神体と懸装品を飾るだけの居祭は続けられてきたこと、その居祭さえ一時なくなり神事のみが行われていたこと、それを憂いた町内の若手有志によりお囃子が復活したこと…。お囃子を続けていく中で、大船鉾の歴史や町内の方々のお祭に対する熱い思いを聞くことができました。
――小学校から今まで祇園祭に長く関わってきていると思いますが、祇園祭に対しての見方・考え方はどのように変化はありましたか?
囃子方を始めたばかりの頃はただ楽しいと感じていたんですけど、居祭が復活し町内の人と囃子方の大人たちが一緒になって伝統を守り、繋いでいく姿をすぐそばで見ているうちに変わりましたね。こうして千何十年も人から人へ受け継がれているんだと思うと、自分もしっかりそのバトンを次の世代へと繋いでいかなくてはと思うようになりました。
また、お囃子の事だけでなく、居祭や様々な準備の手伝いをさせてもらっている中で、改めてお祭りはこんなにも多くの人によって支えられているんだと実感すると共に、少しでも役に立ちたいという気持ちが強くなりました。作事方さん、車方さん、曳き手さん、ボランティアの方々。普段の生活の中では関わることの出来ない方との出会いは、とても貴重な体験です。色々な方のお話を聞かせてもらい、自分の中の世界観が広がった気がしましたね。
――お囃子というのは長くやっていても緊張するものなんですか?
練習しているときはいろんな人にずっと見られて緊張するんですが、巡行や祭り期間の時は周りの雰囲気や賑わいで、緊張より楽しいが勝ちますね。正直、本番の方がリラックスできます(笑)。鉾に乗っているときは,長年囃子方をやって来てよかったと思える瞬間です。
――今までの祇園祭で一番印象に残っている事はなんですか?
大船鉾が復興したことですね。お囃子を始めた頃は復興するとは思ってもみませんでした。
鉾が復興し初めて巡行に出た時、鉾に乗ってお囃子をしているのが夢のようでした。巡行中あちこちから「おめでとう!」と声をかけてもらった事、四条新町の最後の辻回しが終わり町内に帰ってきた時、沢山の人の割れんばかりの温かい拍手で出迎えてもらったことなど、こんなにもたくさんの人に支えてもらっているんだと思うと、胸がいっぱいになりました。今思い出しても涙が出そうなくらい感動しました。
――祇園祭に興味のある中高生にメッセージをお願いします。
祇園祭は7月1日から1か月間、様々な行事が行われます。鉾によって違うお囃子を聞き、各鉾町の方々が大切に守ってこられた歴史的・文化的に価値にある豪華絢爛な懸装品を、四方から見てほしいですね。それぞれ個性のある御朱印集めも楽しいと思います。
それから、八坂神社三基の神輿が、氏子区域内をそれぞれ渡御する神輿渡御。祇園祭の主役は神輿です。17日の神幸祭、24日の還幸祭の神輿渡御は迫力満点なので、祇園祭の歴史を感じに、ぜひ足を運んでみてください。
17日は前祭巡行の神幸祭。そして、24日は佐々木さんが鉾に乗って巡行する還幸祭です。還幸祭はぜひ大船鉾の囃子方に注目してみてくださいね。
来月の第15回京都学生祭典「京都学生文化発信の日」は、京都の和食文化「出汁」がテーマです。来月もお楽しみに!
(先月の京都学生文化発信の日 葵祭斎王代へのインタビューはコチラ)
(京都産業大学 文化学部 石永路人)