京都の大学生から芸妓の道へ。惠美華さんにインタビュー!
三味線や唄でお座敷を盛り上げる芸妓である「地方」(じかた)を知っていますか。京都の夜に彩りを添えるうえで欠かせない存在です。
京都産業大学 文化学部京都文化学科を卒業し、今は祇園甲部の芸妓・地方として活躍する惠美華(えみか)さんにお話を伺いました。
もくじ
惠美華さんのプロフィール
伏見区出身。京都産業大学 文化学部京都文化学科卒業。
高校生の頃から花街文化に興味があり年中行事に足を運ぶ。
在学中から、お茶屋(兼業置屋:おきや 舞妓や仕込みさんが生活し、花街のしきたりや作法を学ぶ場所)で仲居のアルバイトをしながら三味線のお稽古に励む。卒業後、祇園甲部の地方となった。
取材開始前に、惠美華さんからシールとしても使うことができる花名刺をいただきました!かわいらしいコーヒーのイラストを発見。
――惠美華さんはコーヒーがお好きなんですか?
そうどす、うちコーヒーが好きで、自分で名刺のデザインが選べるんどす。デザインは無限で、お手本が稽古場に何冊かあって気に入ったのがあれば「同じデザインで『惠美華』でおたのもうします」って作っていただいたり……オムライスとかのイラストを自分で描いて作ったりしてはる舞妓さんもいて、名刺でもいろいろ遊べるんどす。
京都産業大学で京都文化を学んだ日々
――京都産業大学 文化学部 京都文化学科を選んだのはどうしてですか。
うち、もともと大学行く気があらへんかったんどすけど、高校の先生がうちが京都好きというのを知ってくれはってたんで、「こんな学科知っているか」って紹介してくださって。オープンキャンパス行った時に、すごい気になった先生がいらして、「この先生のもとで学びたいな」と思って入学したので、ここ一択でしたね。この大学に入っていなかったら花街に入ろうとも思わへんかったかな。
――珍しい学科ですが、印象に残った授業はありましたか。
英語で茶道をしたり、生花をしたり、あとは京都の食事。「ざっくり茶道」「ざっくり日本食」ではなく「京都の」食文化、ピンポイントに京都のことを学べたので面白おしたね。
――京都の食文化の授業だったら実際にお料理を食べたりするのでしょうか。
それは、おへんかった(無かった)どすけど、うちのゼミの先生が「体験してこそや」という考えの人だったので、生徒連れ出して「一緒にご飯行こか」と言って割烹料理屋に連れて行ってくれはったり、ゼミのフィールド演習の時にもそんなことがありましたね。
――学外での学びが多いように感じましたが、座学とフィールドはどれくらいの割合でしたか。
学科としてやったら座学のほうが多い気がするんどすけど、ゼミによっては、祇園祭で実際にちまきを売ったり鉾の綱を曳いたりといった体験をしたり、金閣寺辺りで発掘して歴史について学んだり、花街をぶらぶら歩いたり。結構、学外に出る機会は多い気はします。やはり、実際に出向いて見るという授業は記憶に残りますね。
芸妓として
大学コンソーシアム京都の京都学講座で演奏する惠美華さん
――大学3年生の春からお茶屋でアルバイトされたということですが、花街に興味を持ったのはいつごろだったのでしょうか。
中学生の時からそういう世界は知っていたけれど「舞妓さんになりたい」っていう感じではなく、高校生になってから年中行事を見に行くようになって。京都検定を取り始めたのも高校2年生の時どす。大学生の時には2級に合格しました。
――花街に実際足を踏み入れるというのは大きな決断だと思うのですが……
中学生くらいで舞妓さんを目指してきた子とうちとでは、決意の重さが違います。仕込みさんに来はる前に1週間とか体験もあったりするけれど、1週間で決めることはうちにはできません。うちの場合は大学生やったということや、アルバイトから始めたというのもありますし、住み込みの仕込みさんで入る前からある程度、世界が分かった上で入ることができました。
――仕事をしていて「楽しい」「嬉しい」と思う瞬間はどんな時ですか。
「楽しいな」と思う時は、お客さんも芸妓も舞妓もみんなでげらげら笑っているとき。みんなが笑顔でお席を楽しんでいて、みんなが幸せな空間に自分がいることで「幸せすぎるー」って思います。
「嬉しい」と思う時は、自分が日々お稽古している曲を初めてお座敷でさしてもろうた時に充実感を感じますね。
――反対に、大変だと思うのはどんな時ですか。
ありがたいことでもあるんどすけど、地方さんって人数が少ない分、いろいろなお舞台や発表に立たしてもらう機会が多いんどす。
お稽古に追われて「さっきまでこの曲してたけど、頭切り替えてこの曲しなあかん」とか。
最初はその忙しさにプチパニックを起こしていました。
京都の魅力は〇〇
――惠美華さんが思う京都の魅力は何ですか。
町中に川が流れているところどすね。特に鴨川が好きなんどす。
京都は「学生のまち」とも言われますけど、鴨川デルタでみんなが各々の日常を生きているのを見るのが大好きなんどす。学生さんがよさこい踊ってたり縄跳びやってたり、本読んでたりする光景を見ると、京都っぽいなあと思ったり。時間さえあれば自転車でぷらーっと鴨川に行ったり。お父さん(お茶屋「美の八重」の主人)の自転車借りて(笑)。パン屋さんにも行きます(笑)。
――鴨川良いですよね。他にもお気に入りの京都の場所はありますか。
出身が伏見で、小学校高学年までは中書島のほうに住んでいたので、もともと遊郭だった独特の雰囲気も好きどすね。内装全部に絵が描いてあるコインランドリーとかもあるんです(笑)。
(夜の鴨川 筆者撮影)
――ご出身が同じ京都の伏見区ということでしたがどれくらいの頻度で実家に帰られますか。
お休みがあるとたまに帰っています。公休日(第二日曜、最後の日曜)にお仕事を入れた場合は代休を取ることができるので、代休を使って、好きなアーティストのライブへ行ったりもします。長期休暇はゴールデンウィークとお盆と年末年始の3回なんどす。このお盆も実家に帰っていました。
――ライブにも行かれるとは意外でした!最後になりますが今後の夢や目標を教えてください。
「座持ちの良い芸妓」になることどす。
お稽古はもちろん気張らなあきまへんし、お席での振る舞いとかは憧れのお姉さんを見て「こういう時こういう返し方したら盛り上がるんやな」というように、良い所を盗んでいくしかあらへんので、場数を踏んで日々勉強という感じどすね。
さいごに
学生時代の様子、芸妓としての心意気、そしてプライベートのことまでお伺いすることができたインタビューでした。
惠美華さんが高校生の時に、たびたび足を運んだという花街の年中行事。同じ京都で大学生として過ごすうちに私も見に行こうと思いました。
とても楽しいお時間をいただき、本当にありがとうございました。
(同志社大学 社会学部 阿部雪音)