【京都国際学生映画祭レポ①】大ヒット映画『侍タイムスリッパー』安田淳一監督による映画『ごはん』上映会&トークショー

皆さんは京都で毎年開催されている、京都学生国際映画祭をご存知ですか?
京都学生国際映画祭とは、学生が制作した自主映画を世界中から集め、京都を中心とした関西圏の大学生たちが実行委員となり、その魅力を届ける映画祭です。
第28回目となった今年は、2月20日〜23日にかけて京都文化博物館で開催されました。
初日は特別企画として、安田淳一監督による映画『ごはん』の上映とトークショーが行われました。本記事では、そんな特別企画の様子をお伝えします!
昨年日本アカデミー賞を受賞した大ヒット映画、『侍タイムスリッパー』などで知られる安田監督。昨年京都学生広報部にて行われた動画コンテストでは、審査員としてお招きしました。ぜひこちらもご覧ください!
もくじ
映画『ごはん』(2017)を鑑賞した感想
皆さんは、普段当たり前に食べている「お米」が、どのように作られているか知っていますか?
2017年に公開された安田監督による映画『ごはん』は、亡き父の田んぼを引き継いだ女性が米作りに奮闘する姿を通して、日本の米づくりの現状や苦悩をリアルに描いた作品です。
実は、安田監督のご実家は米農家であり、「父に何かあったら自分はどうなるのか」と考えたことが、この作品を作るきっかけだったそうです。現在、安田監督はお父さまから米づくりを引き継ぎ、米農家と映画監督を両立されています。
作品を鑑賞して印象的だったのは、映像の美しさと、ドキュメンタリーのような“リアルさ”です。田植えを終えたばかりの青々とした稲が、季節とともに黄金色へと変化していく様子から、日本ならではの景色の美しさに感動しました。また、米作りの工程ひとつひとつが丁寧に描かれており、お米ができるまでにかかる長い時間や、人手不足といった現実的な苦悩も伝わってきます。
筆者自身も新たな学びを得られた作品で、ぜひ学生の皆さんに観てほしい映画だと感じました。

安田監督が語る映画への想い
映画上映後には、安田監督ご本人によるトークショーが行われ、京都国際学生映画祭の学生委員や観客からの質問に、数多く答えてくださいました。
ここでは、その中でも特に印象に残った、安田監督の「映画に対する考え方」について、3つの言葉から紹介します。

「キャラクターの考えが変わる瞬間を必ず描く」
安田監督は、映画の中で「キャラクターの考えが変わる瞬間を必ず描く」ことによって、観客に「応援」や「共感」をしてもらうことを大切にしている、とおっしゃっていました。映画を“アート”としてではなく、“エンターテインメント”として多くの人に楽しんでもらうことが、安田監督なりのこだわりだそうです。
私たちが『ごはん』や『侍タイムスリッパー』に共通して感じたのは、老若男女問わず楽しめる世界観でした。人と人とのつながりに心を動かされる場面もあれば、思わずクスッと笑ってしまう場面もあり、観終わった後には映画から大きなメッセージを受け取ったような感覚になります。
これは安田監督の作品ならではの魅力だと感じました。
「自分なりの一つの、“裏テーマ”みたいなものを持つようにしている。
それは、日本映画でかつてなかったエポックメイキング的なことを何か1つ映画の中に含めること。」
トークショーの中でも特に印象的だった言葉です。エポックメイキングとは、「新時代を切り拓く」「画期的」という意味。映画制作の取り組みの中で“新しさ”を見出して入れ込んでいくことを大切にされているそうです。
そして、その“新しさ”の判断基準は、「他の人が見てどう思うか」ではなく、「自分が新しいと認められるかどうか」。数ある作品の中で、自分の作品を強靭にする秘訣を教えていただきました。
このお話から、安田監督は映画制作において、常に明確な目的意識を持ち、「何を映画として残すのか」を考え続けていることが伝わってきました。そして、発想力だけでなく、あるものの中から“新しさ”を見出す思考量が重要だと学びました。
「できることは全部自分でやる。自分でリスクを背負う」
安田監督は、映画制作において私財を投じ、撮影、照明、脚本、演出、美術など、あらゆる役割を自ら担ってきたそうです。自分自身でリスクを背負い、責任を引き受ける姿勢があるからこそ、作品ひとつひとつに強いメッセージや説得力が生まれているのだと感じました。
学生へ向けて、安田監督からのメッセージ
「死なないと思ったら飛べ」

「最近は、失敗をしない確実な道を選ぶ人が多い」と安田監督は指摘します。
才能があってもお金の問題や現実的な難しさを理由に、作品を一本も作らずに終わってしまう人を数多く見てきたそうです。
だからこそ、安田監督は、「僕は死なないと思ったらとにかく飛び込むのが大事だと思っている。死なないかどうかだけを確認できたら、見切り発車でスタートするくらい。その中で頑張っていれば、必ず手を差し伸べてくれる人がいるから」と、学生に向けて力強い言葉を送ってくださいました。
筆者自身、何事にも慎重になりがちで、なかなか一歩を踏み出せない性格です。しかし、安田監督の「死なないと分かれば飛んでみる」という言葉から、とりあえずやってみることで初めて生まれるもの、初めて形作られる人生があるのだという、大切な気付きを得ることができました。
おわりに
昨年、日本アカデミー賞を受賞し、映画界の第一線へと駆け上がった安田監督。
その歴史的快挙の裏には、失敗を恐れず、自らリスクと責任を引き受けながら作品と向き合い続けてきた姿勢がありました。
今回のトークショーを通して印象的だったのは、「完璧でなくても、まずやってみる」という一貫した姿勢です。挑戦することに迷いを感じがちな学生にとって、その言葉や経験談は、「まず一歩を踏み出すこと」の大切さを強く実感できるものでした。
今回の映画祭の特別企画では、映画制作の裏側を知る貴重な機会であると同時に、これから自分がどのように生き、何に挑戦していくのかを見つめ直すきっかけにもなりました。
来年以降も京都国際学生映画祭は続きます。
ぜひ皆様も貴重な機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
京都国際学生映画祭公式HPはこちら↓
コトカレでは、過去にも京都国際学生映画祭関連の記事を発信しています。
併せてご覧ください↓
(取材・文 同志社大学 商学部 村上紗都)
(取材・文 立命館大学 産業社会学部 笹瀨明子)



