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京都の学生は無料!「村上隆 もののけ 京都」に行ってきました!

京都の学生は無料!「村上隆 もののけ 京都」に行ってきました!
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皆さん、こんにちは!

今回は、2024年2月3日(土)〜9月1日(日)にかけて京都市京セラ美術館で開催されている「村上隆 もののけ 京都」をレポートしていきます。

この展覧会、なんと京都市内在住の学生、もしくは京都市内の学校へ通学している高校生、大学生、専門学校生なら無料で観覧できるんです!この記事の最後に詳しくご案内します!

私たちは先日、展覧会を企画された京都市京セラ美術館事業企画推進室ゼネラルマネージャーの高橋信也さんに、現在開催中の「村上隆 もののけ 京都」についてお話を伺いました。
今回は特別に美術館の休館日にお邪魔させていただき、誰もいない展示室で、それぞれの作品の魅力や込められた思いなどについても伺いました。

壁一面の桜と阿吽像が意味するものとは?

村上隆《吽像》《阿像》2014年

こちらは、エントランスに置かれている阿吽像です。仁王像のように守護神として敵の侵入を防ぐ役割を担っている彼らですが、その彼ら自身が悪であるという矛盾を表現しているそうです。小さい子供たちは怖がりそうだと感じましたが、実際は全然怖がらないのだそう。造形力のすごさに圧倒されました。
背景の壁は、展覧会のオープンが2月だったこともあり、桜を待つ気分になるという意味や、明治時代に活躍した作家、坂口安吾の短編小説『桜の森の満開の下』で桜の木の下には死体が埋まっているという描写があり、鬼との相性がいいということで桜がテーマになったそうです。

 

村上隆《お花の親子》(2020)とルイ・ヴィトンのトランクのインスタレーション Ⓒ2020 Takashi Murakami / Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved. ⓒLOUIS VUITTON

そして、エントランスを通り抜けるとまず目につくのは、日本庭園に現れる、ルイ・ヴィトンのトランクの上にそびえ立つ《お花の親子》。村上隆さんの「スーパーフラット」というコンセプトを表現した代表作です。高さは約13メートルで、重さは10.5トンあります。こちらの巨大彫刻を設置する際は、池の水を一度全部抜き、池の鯉を全て移動させるなど大変大がかりな作業だったそう。全て金箔で覆われており、金閣寺を思い起こさせる様相です。戦争やコロナなど困難な出来事に見舞われている現代ですが、家族の大切さや世界の平和を願うような作品であると感じました。

ついに展示室の中へ。一度は見たことのある、あの絵がお出迎え

村上隆《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》2023-2024年(部分)

ついに展示室の中へ。会場は、6つの部屋で構成されており、約170点の作品のうち約160点は今回の展覧会のために制作された新作なのだそう。まず出迎えてくれるのは、《洛中洛外図屏風 岩佐又兵衛  rip》。幅約13メートルの巨大な作品で、戦国時代の京都を斜め上の視点から描いたものです。当時の市民社会の生活が描かれており、原画に忠実に再現されていました。しかしよく見ると、絵の中には村上さんのオリジナルキャラクターが登場したり、金雲にはドクロが描き込まれるなど村上ワールドに変身していました。

暗闇の世界へ。京都を象徴する4体の神様。

村上隆《朱雀 京都》2023-2024年(部分)

続いて第2室へ移動すると、中は真っ暗な八角形の部屋で、東西南北の壁に象徴的な絵が飾られてありました。京都は平安京の時代から「四神相応の地」とされてきました。四神とは、東の「青龍」、西の「白虎」、南の「朱雀」、北の「玄武」のことであり、青龍は鴨川、白虎は山陰道、朱雀は巨椋池、船岡山は玄武に見立てられています。
中央には京都の災厄を知らせる鐘楼として機能していたとされる六角堂が置かれ、壁や床は一面黒いドクロで覆われていました。
京都は、その当時おびただしいほどに死体があったと言われていて、その死体の捨て場が鳥辺山、化野、蓮台野の3つあり、この空間はそんな当時の京都を彷彿とさせるような作りになっています。

なぜ日本のアニメをサブカルと呼ぶ?

続いて第3室です。ポップな部屋に移り、DOBという村上さんの代表的なキャラクターがお出迎えしてくれました。
ディズニーアニメと東映アニメを融合したようなキャラクターで、高橋さんも村上さんも「なぜ日本人はアニメやコミック、ゲームという完成度の高い文化のジャンルをサブカルというのか?まさしく本流のカルチャーではないのか?」と外国人によく聞かれるのだそうです。村上さんは、日本美術やアニメに見られる平面的な構成である絵画技法は日本人にとってはネイティブなものである、つまり「スーパーフラット」という概念を提唱しています。

村上隆《772772》2015年

そしてこちらのDOB《772772》は、さきほどの穏やかな表情からは一転して、「ゴジラ」のような凄まじい様相を呈しています。海外はよくディベート文化と言われますが、日本は歌舞伎で見られるような見得の文化で、この作品は、唯一の被爆国の悲哀を、火を吹きながら登場してくるゴジラのようなキャラクターに象徴させていると言われています。絵をよく見てみると輪郭線が何色にも重ねて塗られており、かなり細かな作業が施されていることが分かりました。

見どころ満載の第4室へ。村上さんは今でも筆で絵を描く?

村上隆《雷神図》2023-2024年
村上隆《風神図》2023-2024年

そして第4室へ。最初に現れるのは、建仁寺が所有する俵屋宗達の《風神雷神図屏風》をモチーフにした作品です。琳派の流れを汲んだ模写に挑戦した作品だそうです。
俵屋宗達が描く《風神雷神図屏風》は風神と雷神がマッチョでボクシングの選手のようにがっちりとした関ヶ原の戦士だったのですが、100年後に尾形光琳によって描かれたものは、風神と雷神が小さくなっています。
それらと村上さんの風神雷神図を比較してみると、筋肉もなく、緊張感もありませんが、雷を放つことや風を吹かせることはとても得意で、歴代の風神雷神の中で一番能力は高いかもしれないですね。

続いて、雲竜赤変図《辻惟雄先生に「あなた、たまには自分で描いたらどうなの?」と嫌味を言われて腹が立って自分で描いたバージョン》です。
明治維新の時に、日本の政府は廃仏毀釈と称して日本の古い文化を捨てていました。そこで、このままでは大和絵の文化がなくなってしまうことを危惧した岡倉天心とフェノロサが日本画という分野を作りました。
岡倉天心は大変国際的な人で、ボストン美術館にある日本の美術作品のコレクションの部長を務め、日本の優れた作品を紹介していたそう。その中に曾我蕭白の雲龍図がありました。
この雲龍図と、村上さんの作品を並べて展示する展覧会が2018年にボストン美術館で行われたそうです。その際に『奇想の系譜』の作者である辻惟雄さんに「たまには自分で描いたらどうなの?」と言われて描かれたそうです。村上さんはなんと、この絵を5日で完成させました!

そして次に、今回の展覧会のチラシやポスターにも起用されている《金色の空の夏のお花畑》です。この作品は、大きさや配置の構成がとてもシンプルであり、軽やかな作品です。しかし、豪華絢爛たる色で花々が表現され、日本美術の面白さや特徴が村上さんのオリジナリティあふれる作風とマッチし、見事に花開いた作品です。金箔の光沢を生かすため、花はマットに仕上げるなど様々な工夫がされています。

今、村上さんが特に力を入れているものとは?

第5室では、村上さんが取り組んでいるトレーディングカードやNFTアート等の作品が展示されています。この写真のNFT作品は色がグラデーションになるように並べられており、人間の煩悩の数と同じ108点あります。
全て手描きで描かれており、一目ではデジタルアートとは見分けのつかないほどです。シンプルな画像と絵画的に難しい技法を組み合わせて、いろんな試みをされているようです。

最後の部屋へ。この展覧会のしくみとは?

村上隆《五山送り火》2023-2024年

そして最後の第6室。市川團十郎白猿の襲名披露の祝幕のために描かれた《2020 十三代目市川團十郎白猿 襲名十八番》や舞妓、五山送り火をモチーフにした作品などが展示されています。
この展覧会はさらに追加作品を16点ほど予定しており、公開スケジュールはWebサイトで確認できます。展示エリアを出るとグッズやおみやげの販売コーナーもあり、展覧会で展示されている作品が様々なアイテムになって販売されています。

高橋さんへインタビュー

じっくりと展示を見させていただいた後は、解説してくださった高橋さんにお話を伺いました。

――普段高橋さんはどのような仕事をされていますか?

高橋:私は事業企画推進室に所属していて、営業や広報などのチームのゼネラルマネジャーという立場です。どちらかというと美術館経営やマネジメントに近いような形なのですが、この展覧会に関しては、企画から携わっていて、いわゆるキュレーターですね。展覧会によって幅広い役割を担っています。

――この展覧会を開催する上で、もっとも難しかったことは何ですか?

高橋:村上さんはとてもお忙しい方なのですが、展示作品を作っていただく期間が半年もなかったので、村上さんにも大変尽力していただいたし、我々もとても心配して色々お願いしました。そのためには村上さんの要請をお聞きして調整するなど、そのあたりが一番困難だったかなと思います。

――どのような観点でこの展覧会を見るといいですか?

高橋:現代美術は難しいとよく言われるんですけど、実際に同じ時代を生きて描いているものなので、見たら絶対楽しめる糸口があると思うんですよ。それを見つけていただくっていうことが大切だと思います。
村上さんが何を考えて、意図しているかが分かってくると思うので、ぜひ見慣れて楽しんでいただけたら嬉しいです。特に、村上さんにとっては京都に特別な意味があるから、日本での展覧会はやらないとおっしゃっていたのに、京都でやっていただいたんですね。村上さんにとって特別な意味のある京都はどのポイントなのかも見つけてほしいです。

――今後美術の道へ進もうと考えている高校生に向けたメッセージをお願いします。

高橋:まずは芸術を面白がって、絵を見たり描いたりしてもらうことが最初かな。その中で何が面白いか何がやりたいのかがはっきりとしてくるので、そのことを研ぎ澄ましていってくれればいいかなと思います。それに必要な技術が絵を描く能力だったり、物を見る目なんだろうと思います。
まずは面白がらないと何がなんだかわからないじゃないですか。ゲームだったらみんな面白がってやっていて、ああいう熱狂が音楽や美術に対しても必要だと思います。そうすると面白がりながら上手くなっていくと思います。

さいごに

今回は、京都市京セラ美術館事業企画推進室のゼネラルマネジャーをされている高橋信也さんに現在開催中の「村上隆もののけ京都」の展示室を案内していただき、いくつかの質問にも答えていただきました。お忙しい中貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました!
この展覧会は、7月より新たに展示される作品もあり、見どころいっぱいです。
また、企業版ふるさと納税の寄付により京都市内在住か、京都市内の学校に通学している学生は無料で入場できるので、一度訪れた人もぜひ何度も足を運んでみてください!

(取材・文)京都府立大学 公共政策学部 森田嵩史
(取材)立命館大学 産業社会学部 細田大和

Ⓒ Takashi Murakami / Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 

 

この記事を書いた学生

森田嵩史

森田嵩史

京都府立大学 公共政策学部

親しき仲にも礼儀あり