【イグノーベル賞】京都工芸繊維大学・村上先生に研究のことを聞いてみた。
皆さん、こんにちは!
この度、2021年9月に第31回イグノーベル賞動力学賞を受賞された、京都工芸繊維大学の村上久助教に取材をさせていただきました!
もくじ
イグノーベル賞とは?
イグノーベル賞とはノーベル賞のパロディとして1991年にMarc Abrahams(マーク・エイブラハムズ)によって創設された賞で、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対して贈られます。
2021年には、歩いている人がお互いにぶつかる理由を調べた研究に対して、今回取材させていただいた京都工芸繊維大学の村上久助教のほか、東京大学のClaudio Feliciani特任准教授、長岡技術科学大学の西山雄大講師、東京大学の西成活裕教授(職名は全て受賞当時)が、動力学賞を受賞しました。また、2022年には、丸いツマミを回すときに何本の指を使うかを調べた研究に対して、千葉工業大学の松崎元教授らのグループが工学賞を受賞しました。日本人の受賞はこれで16年連続だそうです。
なお、コトカレでは、2016年にイグノーベル知覚賞を受賞された立命館大学の東山篤規教授に取材させていただいた記事を公開しています。こちらもぜひご覧ください!
<お話を伺った先生>
村上 久(むらかみ ひさし)先生
京都工芸繊維大学助教。比較集団行動学。2015年神戸大学大学院博士課程後期課程修了、博士(理学)。早稲田大学博士研究員、神奈川大学特別助教、東京大学特任助教を経て、2021年より現職。
動物の群れに魅せられて
(イワシの群れ)
――よろしくお願いします!
はい、よろしくお願いします。
――まずは、先生の研究内容について教えてください。
主に動物の群れ行動について研究をしています。例えば、水族館へ行くと、大水槽の中でイワシが群れを作っているでしょう。そのイワシの群れを見ると、イワシたちはどうしてそのような群れを作るのか?という疑問が湧いてくるかと思います。そこで、群れはどのようにして作られるか、その群れにはどのような機能があるのか、などといったことを様々な手法を用いて調べています。
――先生の研究対象が、ある時から動物から人に移ったとお伺いしましたが、何か理由はありますか?
研究を進めていくうちに動物だけでなく様々な群れを見たい、と思うようになりました。当時は人の集団は動物と違い、扱うのが難しいのでは?と考えていましたが、偶然人の集団行動を専門に研究している研究室に入ることができたので、その時から人も研究対象として取り扱うようになりました。
――研究者の道を選択された理由やきっかけはありましたか?
実はこれといった理由がないのですよ(笑)。研究室に入った後、就職活動もせずにぼーっとしていたら、指導教官から「村上くんは暇そうだから、大学院にでもいったらどうですか?」といわれて、それに妙に納得して研究を続けることにしました。
先生が研究をしていて楽しいと感じたこと、苦労したこと
(実験の様子)
――研究をしていて楽しいこと、苦労した時のことをそれぞれ教えてください。
楽しいことは、動物が意外な動きを見せた時ですね。いろんな動物を観察していると、中には意外な動きを見せるものがいます。そうした動きを自ら積極的に見に行きたいと思って実験をしています。
苦労した時のことに関しては、1つエピソードがあります。大学院を修了してすぐの頃に、あるカニに関する実験をしていた時期がありました。そのカニは沖縄にしかいない種類だったのですが、私は仕事の都合で2週間ぐらいしか(沖縄に)滞在することができない状況で……。実験を10種類ぐらい準備して沖縄に行ったのですが、なんと、実験が全て失敗に終わってしまったんです。幸い、まだ時間に余裕があったので、準備していなかった種類の実験もしてみることにしました。すると、思わぬ成果を得ることができたのです。
とはいえ、まったく準備もせずに実験に臨んでいたらあのような成果は得られなかったと思うので、失敗した過程にも意味があったのではないか、と思っています。
時には息抜きも
――おすすめの息抜き方法はありますか?
映画ですかね。他には京都に来てからは観光などで、ずっと歩いています。
――特にお気に入りの場所はありますか?
北大路の辺りの賀茂川は人が少なくて好きですね。植物園も非常にいいと思います。
京都は自然が近いのが魅力的です。宝ヶ池公園は(京都工芸繊維)大学から歩いていけますからね。
理科ができない文系学生の悩み
――高校の時、私(原田)は元々理系志望だったのですが、理科、特に物理がすごく苦手だったので文理選択で文系を選びました。そういう悩みを持つ高校生も多いかと思うのですが、そうした学生にアドバイスはありますか?
生物はとっつきやすい分野ではないかと思います。 そうした分野から学んでみてはいかがでしょうか。
他には、理科が好きな人の話を聞いてみてはいかがでしょうか。これは理科に限った話ではないと思います。誰かが何かを熱弁していたら「面白そうだな」と思っちゃいますよね。
――先生にとってそういう方はいらっしゃいましたか?
たくさんいます。特に大学生の時の指導教官にとても影響を受けました。
――どんな先生でしたか?
科学と哲学を同時に行なうような先生です。普通、そういう人はいないと思っていたので。その先生が考えていることは、普段生きていて考えていることや悩んでいることに関係しているとの直感がありました。それを私も自分なりに考えようとしてきたところがあります。
「偶然の出会い」を大切に
――最後に中高生へのメッセージをお願いします。
はっきりと目標を持ってやっていくことも重要だと思います。
しかし、「偶然の出会い」を大切にしてほしいです。
たまたま出会ったものにのめり込んでいったり、取り憑かれたようにハマってしまったりということが結構あると思います。
映画や小説でも有名だから必ず見ようというわけではないじゃないですか。そういう作品でもたまたま読んでみたら「なんだ、これはめちゃくちゃ面白いじゃないか」っていう風に思うこともありますよね。そういった偶然がある。そういうものに対してアンテナを立てておくことで、ふとした出会いに気づけるのではないかと思います。
おわりに
いかがでしたか?インタビューは私たちにとってもイグノーベル賞のように面白く、そして考えさせられるものになりました……。
この記事が中高生の皆さんの進路選択や勉強の参考になれば幸いです。
村上先生、ありがとうございました!
(取材・文・撮影:京都工芸繊維大学 工芸科学部 市川峻)
(取材・文・撮影:同志社大学 法学部 原田愛菜)
村上先生のホームページ:https://sites.google.com/view/hisashimurakami/home