進路に悩む高校生必見! イグノーベル賞受賞者東山教授に聞いた大学で学ぶ意味
2016年9月に、「股のぞき効果」に関する研究で第26回イグノーベル賞知覚賞を受賞された、立命館大学文学部の東山篤規教授にお話を伺ってきました。
インタビューでは、何のために大学へ行くのか、という疑問から研究の仕事についてまで幅広くお話いただきました。進路に不安を感じている高校生や大学って何のために行くの?と思ってる方、ぜひご一読を!
もくじ
イグノーベル賞って?
そもそも皆さんイグノーベル賞って知っていましたか?
簡単にまとめるとイグノーベル賞とは、人々を笑わせ、そして考えさせる業績を称える賞で、名前から想像がつくようにノーベル賞のパロディとして1991年に始まりました。2016年は、上半身をかがめて、股の間から物を見た時と普通に物を見たときの物の見え方の違いについての研究で東山教授と大阪大学の足立浩平教授が共同受賞。日本人は10年連続の受賞となりました。
インタビュースタート!
広報部員:実際に受賞された感想はいかがでしたか?
東山教授:正直びっくり、意外やったね。今回僕が受賞した内容の研究は、日本ではあんまり注目されないような研究やったんよね。受賞の候補になったとの連絡を受けたときも受けるかどうかでちょっと迷ったんよ。結局は共同受賞である大阪大学の足立先生とも相談して、受賞を決めました。
広報部員:研究をしていく上で大変なことや、やりがいはありますか?
東山教授:研究をしていて辛いと思うことはあまりないね。研究というと最終的に論文にすることが必要になるんだけど、その論文が著名な雑誌に掲載されるのがやっぱり嬉しいよね。そうやって論文を仕上げた時は達成感があるし、そのことはやっぱり研究をする上で励みになるよね。
広報部員:学生に向けて伝えたい研究の世界の魅力はありますか?
東山教授:学生のみなさんに、特にこれを言いたいってことはないけれども、言うとしたら好きなことをやればいいってことかな。自分の好きなことをやることで将来につながっていくんです。ですから研究のことも学生にとやかく言うことはないですよ。もし自分のやりたいことが研究だとしたら、それをやったらいいってことです。
文系と理系に分ける問題点とは?
東山教授:今の日本で特に大学進学の時に文系、理系という二つの軸で分けて考えることがすごく多いけど、あれはよくないね。本来、どんな学問にも文系的な部分も理系的な部分もある。なのにどうしても「私は文系だから…」「理系だから…」みたいなことを言う人が多い。言ってしまえば一種の洗脳なんよね。ちょっと勉強した科目が違うだけなのに、それだけで「僕は文系の人間」あるいは「理系の人間」なんだ、というふうに。だから文系、理系と分けずに幅広い分野を学んで欲しいね。そこで学んだことは、自分が好きなことをやっていく上でも必ず役に立つから。
教授が感じる、日本と海外の違い
広報部員:今回受賞された内容の研究で、日本の学会と海外の学会での反応の違いを感じられたそうですが、どのような違いがあったのですか?
東山教授:今回受賞したような研究も実は日本では誰も注目してる人はいなかったんよね。それが海外というフィールドに出ると注目してくれる人がいた。これは実は以前にも同じような経験があってね。電気皮膚刺激の知覚特性の研究をしたとき、皮膚に電流を流すと触られたような感覚を感じるというものやったんやけど、実際に海外の学会では反応があったんよね。このことからわかるけど、研究でも仕事でも、日本の枠にとらわれないことはとても重要やね。世の中広いよ、特に海外に出ると。みなさんもこれから生きていく中で、日本でウケなかったからという理由であきらめずに、どんどん海外に出てチャレンジすることは忘れないで欲しいね。
大学って何をするところ?
東山教授:役に立たないことに没頭できるのが大学のいいとこ。もし役に立つことをすぐにやりたいのなら専門学校とかに行けばいい。資格とか言語とか、そのことに特化してやれるから。役に立たないことってのは、たとえば人間は善か、悪か、なんて問いを真剣に考えてみること。これが実際の社会で役に立つっていう局面はほとんどないと思う。そんなことであっても深く考えたり、時間をかけて研究したりすることができる、そんな場所は大学以外には無いでしょ。役に立たないことを考える時間を人生の一時期で過ごすということはとっても有意義なことやと思うしね。
広報部員:進路に悩んでる高校生に向けてのメッセージをお願いします。
東山教授:大学は勉強したかったら来たらいい。でも、大卒の資格だけ取りに大学に行くというのでは大学生活の4年間、とってもつまらんと思うよ。なんでもいいから、自分がやりたい、好きだと思えるような分野で勉強したいことがある人にはとても刺激的だと思うけどね。「何回授業に出席すれば単位が取れますか?」などと聞きに来る学生もいるけどそういう学生を見ると、何のために大学に来てるのかと思ってしまう。やっぱり、何かしらやりたいことを見つけて、そのために大学に入ってほしい。
広報部員:「やりたいこと」がなかなか見つけられない場合はどうすればいいでしょうか?
東山教授:そういう人は無理に大学に来る必要は無いと思うんよね。実際に社会に出て働き始めるとか、そのためのスキルを身につけるために専門学校に行く、というのもあると思う。そして、しばらくしてから自分がやりたいことや興味が持てることが見つかったらそのときに大学に入る、という選択をすればいい。18歳になったから大学に行かないと、と思うのはステレオタイプ(固定観念)。高校を出たらそのまま大学へ進学、という流れがどうしてもあるとは思うし、親も大学に行けということも多いでしょう。だからといってそのような気持ちで大学に来たとしても学生の向学心は無いだろうし、勉強しなさいと言われても勉強しないだろうね。本当に勉強したかったら大学に来たらいい。今の時代なら、よっぽど難しい学校以外はどこでもいろんな手段で入れると思うから。高校生のみなさんにはそのようなこともしっかり頭に入れて、自分の進路について考えてほしい。
番外編:研究室の入り口横に吊してあった魚の干物
東山教授の研究室のドア横に干物が吊してありました、取材後これについて聞いてみると…
東山教授:ちゃんと勉強しろよ、という自分への戒めです(笑)。サボって勉強しなくなったらすぐに社会から干されてしまうぞ、そして最後には食われてしまうぞということです。自分が魚を食う側やのに、食われる側になったらあかんぞ、とね。
いかがでしたか? 大学で学ぶ意味についての深い話は現役大学生にとっても深く考えさせられるものがありました…。
高校生のみなさんは進路選択等を考える上でもぜひ参考にしてください!(あと、何となく大学生活を過ごしてしまっている大学生達も…)
東山教授、このたびは貴重なお時間ありがとうございました!
(立命館大学 産業社会学部 児玉邦宏)