【夏目真悟監督に聞く】『四畳半タイムマシンブルース』制作の裏側
もくじ
夏目監督の学生時代って……?
——『四畳半タイムマシンブルース』は大学生が主人公という設定ですが、夏目監督自身が学生時代に熱中されていたことはありますか。
すごく無気力な人間で、バイトをしている以外寝ているような生活でした。
就職氷河期の時代で、同世代の雰囲気が諦めに近いというか、世の中に対してそんなに期待していないような雰囲気で。自分の人生を面白いものにしようとせずとも、私を楽しませてくれる娯楽がいっぱいあった。ファミコン、PlayStationなどのゲームや漫画。完全に受け手の世代だったこともあり、それに甘んじて生活していました。
しかし、次第に自分で「作りたい」と思うようになり、学生時代には友達と自主制作映画を作っていました。
——もし夏目監督が大学生に戻れるなら、何をしたいですか。
青春がしたいです(笑)。大人になるとなかなかできないですからね。明日のことなど考えずに友達とわいわいしたり、ぶらぶら遊んでまわったり。そういう意味で学生時代は貴重な時期だと思います。
ずばり!京都の好きなところは?
——本作品は京都を舞台にした作品ですが、夏目監督はお仕事やプライベートなどで京都を訪れたことはありますか。
修学旅行で京都に来ましたね。その後は仕事で訪れました。「四畳半神話大系」のロケハンで10日間、去年は『四畳半タイムマシンブルース』のロケハンで3回訪れました。
——特に好きな場所はありますか。
京都は時間の流れがゆっくりしているイメージがあります。街の雰囲気も落ち着いていて、いいですね。「四畳半」のときは京都大学のまわりにいることが大方ですが、下鴨神社の静かな糺の森を歩いていると、浄化される感じがします。森見さんの小説にでてくる喫茶店にも行きました。
——森見さんの小説の雰囲気が感じられる場所として先斗町、木屋町などがありますよね。
僕も行ったことがあります。夜に行くと誘惑がいっぱいあって(笑)。
前作のロケハンへ行った時には仕事関係の方と美味しいものを食べました。すき焼きとか。良い思い出です。
——これから行きたい京都の場所はありますか。
同じところにもう一度行きたいなと思います。鴨川デルタでのんびりしたり、古本市に行ったり……。一日中、喫茶店で本を読むのもいいですね。
クリエーターとして大切なこと
——夏目監督にとってのアニメーターの仕事の魅力を教えてください。
自分のつくったものが残ることにやりがいを感じます。自己承認欲を満たしてくれるという部分も。キャリアを重ねて立場が上になると自由度が上がるので、自分のしたいこともできる。「自分が作った」という達成感を得ることができます。
絵やキャラクター、構図を描くのも好きなので楽しいです。元々ストーリーを映像化することが好きなんです。子供の頃から空想癖があるというか、他の本とかを読んでいても「自分だったらこうしたい」とか色々考えながら人の作品を見比べています。難しい作品であればあるほどやる気が出ますね。
若手の頃も楽しいですが、やはり経験を積むことで、絵コンテを描く技術も向上し、手数も多くなるのでより楽しくなります。
アニメ業界は特殊で、フリーランスの方も多いですし、あまり縛られる必要もなく自由ですね。
——“自由”な反面、アニメーターの“不安定さ”といった部分で苦労する点はありますか。
鈍感だからなのか、あまり苦労を感じないタイプです。実力主義で、頑張らないといけない。でも、そうした環境に身を置くことで「生きてるな」と感じます。そうした社会的立場も含めて楽しいと思います。ある意味、幸せな性格だと思います。そういう人のほうがこの仕事は続けられると思いますね。
私は安定したところにいたら、面白いものは作ることができないと思っています。甘えをなくすほうが、より洗練された表現が生まれる。自分の表現、作品に責任を持つことが大切だと思います。アニメ作品は適当に作れば楽ですが、貰うお金以上のことをしようとこだわりを持って作品と向き合うことが大切。そういう考えのアニメーターさんの作品はやっぱり面白いと思います。
——近年アニメーターを目指す人が多いと感じるのですが、そういった方にアドバイスがあればお願いします。
いろんなものを吸収しておくべきだなと思いますね。どんな状況でも頭を柔らかくして、実生活でもいろんなものを見て楽しむべきだと思います。絵や映像以外でも趣味を持っているアニメーターも多いです。
若手の方に「どう演出したらいいですか?」と判断を求められることがあるのですが「そんなこと聞いてくる時点でだめだ、自分で考えろ」と言って追い返しますね(笑)。自分の頭で考えることは大切だと思います。生きてきて思うのが、試行錯誤して自分で得たものは宝になる。そういうものをたくさん見つけておくべきだと思います。あまり人に頼りすぎずに。失敗していいと思うので。
取材を終えて
いかがでしたか?
『四畳半タイムマシンブルース』をこれから観る皆様へ作品の一面を知るきっかけになったのではないでしょうか?
夏目監督、ありがとうございました!
(文・撮影:同志社大学 法学部 原田愛菜)
(文・撮影:京都産業大学 文化学部 市場侑未)
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