研究者とは違う歴史へのアプローチを│直木賞作家・澤田瞳子インタビュー
もくじ
歴史は京都の“その場にある”
——京都に長い間住まれている中で、京都の良いところは何ですか?
幅が広いことですね。歴史の幅だったり、暮らしている人々の様々な職種の幅だったり、考え方の幅だったり。
非常に自在というか融通無碍というか。あらゆる選択肢が多いと思います。
どんなお仕事の人でも大概いらっしゃるし、何かを勉強したいと思っても、大概学べるシステムがある。小さな街ではありますけど、自分自身が生きていくうえで願えばどんなものでも手が届くんですよ。
——例えば、京都で歴史を学びに来る学生が京都で歴史を学ぶ魅力はどこにあると思いますか?
“その場にある”ということですかね。その地域の過去の人が生きたであろう地形だったり空気だったりを感じられる。
結局歴史は過去の出来事であって、そこに迫ろうとしても「時間軸」は避けようがないんですよ。でも「地域軸」であればその場に行って追体験することができる。
もちろん両方なくても歴史を知ることはできますが、地域軸が京都だと「触れられる」という部分は大きなメリットだと思います。
距離感にしても京都の街を歩いてみると腑に落ちることがあります。例えば平安時代の嵯峨ってものすごく田舎なんですけど、実際に歩いてみると、「めっちゃ遠い!」ってなるんですよ。
——京都に来たらぜひ訪れてほしい歴史スポットはありますか?
京都御所はまず行っていただきたい。街中にあんなスポットがポンっとあるところは珍しいのではないでしょうか。また、先日行った桂離宮では、阪急電車が近くを走っているはずなのに“見えないし感じられない”。「日本庭園のすごさ」を改めて感じましたね。
4年間で味わい深く、掘りつくせない大学生活
——現在同志社大学の客員教授でありながら事務職員もされているということで、同志社にずっと関わりつづけている澤田さんから見て、“変わらないもの”はありますか?
この2年、コロナ禍で苦労する先生や学生さんを間近に見てきましたが、どんな時でも学びの姿勢は止めない大学側の努力はすごいな、と思います。
学生さんたちはやっぱりサークル活動等の束縛を受けていて大変だな、と思う一方で、それでも様々な形で繋がっている。コロナ禍であっても皆さんそれぞれの好奇心に忠実なのは「変わらないな」と思いますね。
——大学職員をやってみたきっかけや、やってよかったことがあれば教えてください。
きっかけは大学院を飛び出して何になるかもわからない私を指導教員が心配して、「アルバイトしたら」と言ってくれたというだけなので、あまり参考にはならないですが……(笑)。週1回のアルバイトで15年ほど職員として働いていています。
大学という場所に関わりつづけられたことで、若い方々の関心や、今皆さんが何を考えているのか、という生の声を聞けるのはありがたいです。
——同志社大学でよかったと思うことはありますか?
皆さんほんわかしているというか、あんまりギスギスしていない独特のマイペースさ、あとは学校法人同志社の距離の近さ・交友の深さは社会に出た時にものすごく助けられました。思いがけないところで「君、同志社か!」と言っていただくこともあり、本来であればあまり縁が持てない年上の方や違うお仕事とも“同志社”という一点で繋がっていけるということは非常にありがたいですね。
——澤田さんにとって“大学”はどんなところですか。
その方の立場によって違うのかもしれないけれど“選択肢の広い場所”だと思います。なんでも身に付けることができる。そういう意味では、“可能性の多い場所”でしょうか。
——もう一度大学生に戻ったら、やりたいことはありますか?
実は水産系の大学に行きたかったんですよ。水族館の飼育員になりたかったので。だから、もう一回学生になれるなら、そっちがやりたいですね。
——京都で大学生活を送る魅力は何ですか?
地方から来る方にとっては、知らない街で暮らすときに京都という街はちょうどいいサイズかな、と思います。
あまりにも範囲が広いと大学4年間では味わいつくせず、手に負えないかなと思う中で、京都という街はどれだけ掘ってもその時々で見せてくれる顔が違う。
そういう意味では、一見小さな街に見えるかもしれないけれど、実は“4年間でやっぱり堀りつくせない街”だと思うんですよ。なので、京都という街は学生生活において楽しんでもらえる場所じゃないかな、と思います。
——最後に澤田さんの作品の中で読者の中高生にお勧めの本があれば教えていただきたいです。
『泣くな道真 大宰府の詩』という大宰府の話なんですけれど、それが一番読みやすいと思います。おすすめです。
——ありがとうございました!
さいごに
いかがでしたか?
歴史学の学びを活かす道は研究者だけでなく、小説家にも開けていることが分かりました。澤田さんのお話を聞いて、歴史を学んだからこそ、さらに想像力を膨らませて完成する歴史小説に魅力を感じるとともに、歴史学への興味も興味がわいてきました。
また、歴史の現場に触れる機会が多いのも、京都で歴史を学ぶ魅力の一つ。
皆さんも、ぜひ京都に歴史を学びにきてみては?
(取材:立命館大学 文学部 田中陽奈子)
(取材協力・文:同志社大学 グローバル地域文化学部 西村彩恵)
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