須藤蓮さんの初監督作品『逆光』への想いと京都との繋がりに迫る!
もくじ
東京出身の須藤さんが感じる京都の魅力とは?
――京都の出町座で『逆光』を公開することになった経緯を教えてください。
先ほど話した『ワンダーウォール』という京都大学の学生寮を舞台にした作品を映画化するにあたって、最初に劇場公開という形で受け入れてくれたうえに、一番長い期間公開してくださった劇場だからです。コロナ禍で京都には行けなかったのですが、その間も出町座で映画を上映してくださっていたことは、ありがたかったです。
――東京の大学生から見る京都の魅力はありますか?
京都は、学生料金で食べられる食堂がたくさんあってすごく羨ましいです。学生で利益を上げるつもりじゃないっていう学生に対する愛情を感じます。また、(『逆光』の)チラシを持って歩いているときに「京都の学生さんですか?」って聞かれることがありました。京都で学んでいる学生を「応援しよう」という気持ちがすごく強いところが魅力だと思います。
――京都の大学生について何か印象はありますか?
京都で学生生活を送れるって「恵まれた環境にあるなあ」とすごく思います。楽しいことに対して「楽しいです」っていう学生がちゃんといる。一緒にいて元気になります。京都の空気を吸って、4年生になるころには自分なりのものを見つけていますしね。
――京都に来たら立ち寄るスポットはありますか?
京都に滞在中、100件くらいのお店を回って挨拶しているので多すぎて困りますね(笑)。でも特に、六曜社珈琲店にはよく行きます。70年ぐらい歴史のある喫茶店で、1階と地下1階があります。当時から変わっていないタイルは特徴的で、今もそこで、イベントをやらせてもらっています。
映画監督としてのこだわり
――映画監督として人と関わる中で、難しかったことはありますか?
お金と責任と……いっぱいあります。楽しいことを実現する、人を巻き込むということは、ものすごく責任を伴います。例えば、「さあ映画作るんだ!」と宣言して、人から出資を受けて映画を作り始めたはいいけど「飽きたからやめます」とはできないじゃないですか。さらに、「映画を公開したい」と言うだけ言って「いい感じにお願いします。」とはできないというか……。自分が楽しいと思うことをやるためには、関わってくれた人たちをがっかりさせないように頑張らないといけないんです。一生懸命楽しいことを目指していけばいいだけとも言えるから、難しく考える必要はないけど、「楽しいからやってみればいいじゃん」と言えるほど楽じゃない。
――確かにそうですよね。
仮に、「絶対映画成功させるから、ちょっと宣伝手伝ってくれない?」って一カ月振り回されて、「ごめん、初日3人しか入らなかった」って言われたら困りませんか?それでは相手を「やっても意味ないのかな?」という気にさせてしまいます。数字がすべてじゃないと思いつつも、やっぱりみんなに喜んでもらえるように結果は出さないといけなくて。だからそれはすごく難しいです。
――監督として須藤さんが大切にされていることは何ですか?
僕は “モノを管理する・時間を守る”ってことが苦手なんです。だから例えば、こういった取材や舞台挨拶の機会があった時に、少しでもおもしろい話をしようと思うし、価値があったって思ってもらえるように“話す姿勢”を心掛けています。また、メールの返信が苦手だったりするので、“直接会って話す”ことをすごく大事にしています。
――須藤さんが思う、「やりたいことを実現するために大切にしていること」は何ですか?
“一番大変そうなことは自分でやること”ですね。“力なきものが一番大変な行為をしてるとき、人は助けてくれる”と思っているので、率先してやるようにしています。実際、「そこまでするなら手伝うよ」と言ってくれる人もいます。僕が「学生で俳優だからクオリティが低い作品を作っても仕方がない」と周りの人が許してくれるのかというと、そんなわけないんです。脚本家の渡辺あやさんからも「“初”監督作品とか関係ないから」って言われています。若いからちょっと甘えたことを言いたくなってしまうこともあるんですけどね……。でも、“やりたいことはこれだ”という情熱が伝わると、人は一緒に楽しんでくれるし、一緒に動いてくれるんです。だから自分の思いを伝えることはすごく大事だなと思います。「やりたいことって何ですか」って聞かれると困るんですけど……。“やりたくないこと”から順に思い浮かべて、ちょっとヤダって思っていることから試してみると、そのうちにやりたいことが見えてくるかもしれませんね。
学生へメッセージ
――大学生でありながら活躍の場を広げていらっしゃいますが、仲間・人の輪の広げ方のコツなどありますか?
京都ってすごくたくさんのコミュニティがありますよね。大学だけがコミュニティじゃない、ということをもっと知ってほしいと思います。喫茶店のマスターに話を聞いてみたら授業以上のことを学べるかもしれないし、本屋さんにお勧めの本を聞いたらいろんなことを教えてくれるかもしれない。そういった文化芸術に対する理解がある場所です。だから大学に友達ができなかったとしても大丈夫だと思います。京都には学びの材料がそこら中に転がっているので、関心のあることを見つけて一歩踏み出せば、その世界に飛び込むことができるはずです。可能性に溢れたすごくいい場所なので。
――最後に、夢を追う学生にエールを!
“やりたいこと”や“夢”って目の前の“やるべきこと”に簡単に押しつぶされてしまう儚いものだと思います。僕は“こんなにもやっている”ように見せかけて、毎朝やらない理由を考えてしまう癖があるんですよ。でも、実際行動してみるとやらない理由は自分の頭で作り出した幻想みたいなもので、“やる”ことって実はとてもシンプルなんです。「京都に一カ月滞在して宣伝活動してすごいですね」「行動力ありますね」とか言われますけど、新幹線のチケットを買えばいいだけで、誰でもできるじゃないですか。そこにあるハードルは、自分の中でやらない理由を探すその“言葉”だけ。そのやらない理由探しをやめればいいかな、と僕は思っています。「尾道に行って映画が完成しなかったらどうしよう」とやらない理由を並べるのは簡単だけど、僕は映画一本作るぐらいまでは何とかなりました。学生の皆さんが抱く“夢”もやってしまえば何とかなるかなと思います。夢を追ってその夢が形になるかどうかは僕には保証できないけれど、何かチャレンジして一つのものを起こすぐらいは誰にもできると思います。僕が今後、映画を撮り続けて映画監督として大成して世界を変えられるかどうか、それは自分自身の才能や今後の努力にかかっているからわからないけれど、少なくとも映画を一本作って映画館で上映して、自分の伝えたいことを伝えることは僕にもできたし、本気を出せば誰にでもできると思います。「映画を一本作る」それだけで自分にとっては勉強になったので、本当に夢ならやって損をすることってないと思うし、とにかくやってみればいいと思います。
〜インタビューを終えて〜
今回お話を伺って、「監督」としてのこだわりや「仕事」に対する姿勢について知ることができました。
須藤さんは、新型コロナウイルス感染症が流行し始めたときに映画『逆光』を撮影されたのですが、自分がそのような状況で映画を作ることで、少しでもみんなを勇気付けようとされている姿に感銘を受けました。まだ行動が制限されることはありますが、コロナ禍を言い訳にして何もしないのではなく、自分ができる範囲で何事にも挑戦しようと思いました。またインタビューするなかで「京都の魅力」や「京都で学生生活」を送れている、というありがたさにも気づくことができました。取材を受けてくださった須藤蓮さん、ありがとうございました!
(取材・文):龍谷大学 政策学部 梅垣舞央香
龍谷大学 政策学部 熊谷彩音
京都女子大学 文学部 吉田妃那
(撮影):京都工芸繊維大学 工芸科学部 市川峻
(取材協力): 同志社大学 グローバル地域文化部 西村彩恵
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