薬膳喫茶であたたまろう
もくじ
はじめに
一気に寒さが増した頃、私は大学内であたたかくなれるようなイベントを見かけました。この時は、学内茶座としての開催で小スペースではあったものの、このイベントの持つ大学生らしさとお客さんに対する親密さに魅かれました。
その後、山科にある春秋山荘で“薬膳喫茶”が開かれたとのこと。多くの人に薬膳喫茶に触れてもらいたいと思い、この記事では、薬膳喫茶を企画した共同学生団体ME-MEに所属する京都橘大学の学生さんに活動内容について伺い、活動の魅力や薬膳喫茶のあたたかさに触れていきます。
茶座とは、中国成都(せいと)の屋外喫茶文化を模しながら長く続く、公園や寺院などの開けた場所でお茶を飲みながら読書や会話を楽しむイベントです。今回、地域の方に、山科区の魅力を再発見してもらうために開かれたそうです。
(薬膳喫茶の看板)
共同学生団体ME-MEの紹介
薬膳喫茶を主催したのは、共同学生団体ME-ME(ミーム)。山科・醍醐地域の活性化を目的に、2020年度に発足した団体です。
この「ME-ME (ミーム)」という団体名は、「文化の中で人から人へと拡がっていくアイデア・行動・スタイル・慣習」を意味する「meme」という言葉が由来です。山科・醍醐地域の魅力をより引き出し、住みやすい場所にするための活動をしていきたいという思いが込められているそうです。また、名称中の-(ハイフン)はミームと読みやすくする働きを持つと同時に「me」、すなわち自分を意味する言葉を繋げる意味を持たせているそうです。
ME-MEは、山科区にある京都橘大学と京都薬科大学の学生で構成され、両大学の特色を最大限発揮した活動に励んでいます。
前年度の活動の1つは、京都市山科中央老人福祉センターでの介護予防ワークショップの開催でした。
このイベントは、ネイルと折り紙という手先の細かな作業をとおして認知症を予防すること、そして地元の大学生との交流をとおしてコミュニケーション不足を解消することを目的に行われました。
ネイルでの交流は、地域の方に学生がネイルを施すだけでなく、利き手で塗りやすい手はご本人が塗るという形にし、また、プレゼントとして、京都薬科大学生が効能を調べたポプリをお渡ししたそうです。
(認知症予防イベントの様子)
薬膳喫茶に至るまで
2020年の11月ごろから企画会議が行われたそうですが、コロナ禍の影響により全面オンライン会議という、今までの日常とは違う状態という難しさを抱えながらの企画。
薬膳喫茶の開催目的は、大きく2つ。山科区の良いところを発見すること、そして、山科地域の人々との交流の拠点をつくり、コミュニティをつくることだとおっしゃっていました。
ME-MEとして京都橘大学と京都薬科大学の強みを最大限発揮できるよう模索したそうです。
薬膳喫茶のあたたかさ
両者の強みが発揮された薬膳喫茶とは、どのようなものになったのでしょうか。
企画から本番までの道のりを見ていきましょう!
京都橘大学薬膳喫茶の企画以前から茶座マップ作成や空間づくりなどを行っており、山科区の良い景色をゆったり楽しめる場所のリサーチや、空間づくりを得意としていました。
京都橘大学の強みを活かし、進められてきた、場所の選定。秋の山科区の魅力をより感じてもらえる場所を選定の基準としたそうです。
これまでの茶座マップ作成などの経験から、お茶を楽しんでもらうお客さんの視点に立って考えてきたことで、地域の人々の紅葉狩りで人通りがにぎわう毘沙門堂前の春秋山荘に決定されました。
春秋山荘は、周辺地域の拠点になるよう意欲的に活動してきた山荘でもあり、今回の薬膳喫茶企画にマッチしていたとのこと。
(薬膳喫茶開催前の空間)
春秋山荘で11月6日・7日に開催された薬膳喫茶ですが、10月19日から21日にかけては試験的に、京都橘大学でも開かれていました。
感染症対策のためお茶こそ提供できなかったものの、学内で薬膳喫茶の空間を提供し、学生にほっこりしてもらえたとのこと。
そして、秋の深みも増した春秋山壮で開かれた薬膳喫茶の本番。提供されたお茶は、京都薬科大学の学生が選定した茶葉でした。
茶葉の選定には、豊富な薬の知識から季節感や効能のバランスに着目するなど、京都薬科大学の強みが活かされたそうです。
こうして考案されたのは、玉露(ぎょくろ)と凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)、そして秋香る桂花茶(けいかちゃ)の3つ。
(お茶の効能.ME-MEさんのポスターより)
当日、両大学の顔合わせは行えませんでしたが、京都橘大学の学生が座るレイアウトや検温、手指消毒などの感染症対策を徹底し、お茶出しを行ったそうです。
紅葉狩りで毘沙門堂に行く途中の人たちが温まりに訪れ、音楽を流したりボードゲームを置いたりすることで、春秋山荘での空間をじっくり楽しんでもらえたとのこと。
お客さんからは、「山科区の魅力を改めて感じられるような景色が見れて良かった」 や「次回もやってほしい」という声が多くあったとME-MEさんが語ってくれました。
また、お客さんとの交流によって、春秋山荘の魅力を教えてもらったり珍しい花の名前を教えてもらったりと、学生にとってもはじめて学ぶことも多い時間となったそうです。
今後もME-MEの薬膳喫茶をはじめ、地域のコミュニティを支える活動に期待したいと思います。
(文:京都橘大学 健康科学部 小池迪代)
(写真提供:共同学生団体 ME-ME)