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IT系僧侶に聞く、神社仏閣への親しみ方│神社仏閣オンライン

平日はIT企業で働きながら、休日は京都のお寺で副住職を務められている河村英昌さん。2020年6月から「神社仏閣オンライン」を起ち上げ、幅広い活動をされています。今回のインタビューでは、仏教をあまり身近に感じたことがない人にも興味を持ってもらえるような、「文化としての仏教」を教えていただきました。

どうしてお坊さんに?

――河村さんはどうして会社員をしながらお坊さんに?

私はもともとお寺で生まれ、いずれは住職としてお寺を継ぐと決めていましたが、お寺の外の世界でも仕事をしたいと思っていました。

仏教系の中高に通っていた時に周りが仏教に対してあまり関心が無かったことや、大学に通っていた時に留学生のほうが日本文化に詳しかったことなどに、漠然と危機感を持ったんです。

お寺や神社をもっと身近な存在にしていくためにも、まずは自分が社会に出ないといけないと思いました。

――外で働きながらお坊さんの仕事もすることは難しくないのでしょうか?

大変ではありますが、私のように副住職という立場であれば、不可能ではないと思います。実はいま、多くのお坊さんが副業をやっているんです。会社勤めの人は珍しいかもしれませんが、医者や、会社経営されている人もいるくらいです。

神社仏閣オンラインについて

――神社仏閣オンラインを始めたきっかけを教えてください。

大学生の頃、「フリースタイルな僧侶たち」というお坊さんたちの団体に関わるようになり、その団体の方々から特に影響を受けました。

宗派を越えて若い世代のお坊さんが集まり、フリーペーパーを作ったり就業体験のイベントをしたりする団体ですが、活動しているお坊さんたちがすごく輝いて見えて、自分もこういう形で社会に仏教を発信していきたいという思いが膨らみました。

とはいえ大学卒業後は、就職先で他県の配属となり、仕事も忙しくなかなか僧侶としての活動はできなかったので、まず自分の発信から始めることにしました。Kindleの本を書いたりブログを書いたりです。その後、会社員との両立もできるようになり、周りのお坊さんや神社仏閣の魅力を世界に発信するプラットフォームとして「神社仏閣オンライン」を作りました。

――神社仏閣オンラインのYouTubeでは、経営者の方など、幅広い業種の方とお話をされているのですね。そこから新しい発見はありましたか?

私もまだ28歳ですので、日々発見ばかりです。いろんな業種の方の経験を聞かせていただいた中には、仏教の教えに通じる内容がたくさんありました。

例を出しますと、ずっと利益を優先してきた方が、利益ではなく感謝で生きていこうとしたら会社が上手くいったという話がありました。仏教には「自利利他(相手の幸せを願って行動すると、いずれ自分の幸せになって返ってくる)」という考えがあります。経本でそれを理解することはもちろんできますが、実体験に基づく「生きた言葉」のほうが心に響いたりします。

――私も対談を見せていただきましたが、実世界との繋がりを感じ、仏教にとても親近感が湧きました。


(神社仏閣オンラインが配信する動画のひとつ)

学生との関わりを大切にする理由とは

――学生とも多く関わられているそうですが、どういった思いがあるのでしょうか?

学生の頃からプロジェクトに携わり、その中で得た経験を大人になった時に(神社やお寺との関わりで)生かしてもらえたら嬉しいなと思い、学生との繋がりは大切にしています。たとえば学生インターンとして就活イベントやコラボツアーなどを手伝ってもらったりもしています。

就職活動では、人生の大事な選択を自分でしなくてはなりません。
改めて「自分は何やりたかったんだっけ?」と迷う人も多いのではないでしょうか。
大学の知り合いには、「自分探しの旅に出る」と言ってインドへ飛んだ人もいました。

就活セミナーで様々な自己分析メソッドを試した方もいると思いますが、私はその中の一つに「仏教」を入れたかったんです。「自分を見つめる」ことが仏教の大きなテーマの一つであるからです。
自分を見つめる「就活」という時期にこそ、仏教に触れて欲しいと思い、就活関連の事業を始めました。


(お寺における就活イベントの様子)

現代における神社仏閣の存在とは

――幅広い取組をされていますが、どのようなことを目指されているのでしょうか?例えばより多くの人に仏教を信仰してもらうことですか?

まず、神社やお寺を身近に感じて、「守りたい、関わりたい」と思ってもらうこと。そして、関わったことによって心が豊かになることです。信仰するか否かは別として、仏教を自分の役に立ててもらい、その結果豊かな心になってもらえると嬉しいです。

そのためにも、神社やお寺が持続可能な社会をつくっていかなくてはいけないと思っています。

――持続可能なお寺や神社をつくるためにはどのような課題がありますか?

一つには、「寺離れ」や「仏教離れ」。

今の社会、「宗教」となると近寄り難く感じられる方が多く、その結果、多くのお寺や神社が経営難に直面しているのではないかと思います。

「宗教」という言葉は、幕末期に“religion”という単語を訳すために日本で作られた言葉だと伺っているので、仏教について分かりやすく話をする場では私は、「宗教」という言葉ではなく、日本になじんでいるであろう「文化」という言葉で伝えるように心がけています。

――私のような仏教に親しみのない人はどのように関わっていけばいいのでしょうか?

お寺には良さが二つ、ハード面とソフト面であるのではないかと私は考えています。ハード面は建物や周りの自然。お寺にいることで心が落ち着くといった体験等です。

ソフト面は仏教の教え。教えを知って悩みが解決するといったことです。このハード面とソフト面、どちらの要素でもいいので、関心を寄せていただけましたらまずは一度足を運んでいただけたら嬉しいです。

最近はお寺でヨガも行われていますが、これはハード面を生かした取組ではないでしょうか。「お寺」という非日常の場所を使うことによってヨガの精神や呼吸に集中でき、心身のリラックスが期待できるので、非常にいい組み合わせだと思います。

――今後やっていきたいことを教えていただけますか?

心の豊かさをどのように作っていくかを探究しながら、「お坊さんが社会に飛び込む」ことを引き続きやっていきたいです。2021年11月からはアニメとのコラボをはじめました。漫画の起源は平安時代に描かれた「鳥獣戯画」だと言われていますが、そこにもお坊さんが出てきます。昔からエンタメの分野にも仏教は絡んでいて、だから教えを伝える方法として、エンタメとのコラボには可能性があると思っています。


アニメ『五等分の花嫁』関連 五等分のお祈り
御守り&御朱印帳 (oinori-5hanayome.com)
(2022年1月25日まで数量限定で販売)

学生インターン募集について

神社仏閣オンラインでは一緒に活動をする学生を募集中です。

事務作業からイベントの運営まで、さまざまなスキルを得られます。
もちろん「日本文化に対して理解が深まる」というのもインターンの魅力の一つですね。

詳細はこちらをご覧ください。

さいごに

取材にあたり河村さんは、「私はあまりお坊さんっぽくないですが、大丈夫ですか?」と冒頭に仰っておられましたが、だからこそ仏教に馴染みのない若者も、親しみやすさを感じるのではないかと思いました。

私自身、お寺や仏教は格式ばったものとして感じていましたが、河村さんのお話を聞いて、「思い」が大事であることを学ばせていただきました。文化としての仏教について、これからもっと魅力を発信していきたいです。

(京都大学 法学部 矢野史穂)

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