嵐山にて絶景を眺めながらの演奏会~円相 Annulus 2021~
2021年11月。嵐山の景色を一望できる虚空蔵法輪寺(以下、「法輪寺」という)の見晴台にて、パフォーミング・アーツ公演「円相 Annulus 2021」が行われました。(ホームページはこちら)
円相とは、禅宗における書画のひとつで、「悟りの象徴として描いた円形」のこと。
自然、建物、歴史、日常。これらの場を活かしながら、古典芸能と現代音楽を融合させ、主観的にアートを体験するというコンセプトの公演です。
私たちは11月19日から2日間にかけて行われたイベントの2日目に参加しました。
2日目は慣れ親しみのある西洋楽器だけでなく、雅楽器、ペルシャ楽器、電子楽器が融合し、ひとつの音楽を作り上げます。
もくじ
嵐山、法輪寺へ。
嵐電嵐山駅から渡月橋を渡り、少し山を登ると法輪寺につきます。
今の時期は紅葉の季節でもあり、嵐山は観光客でとても混雑していましたが、人込みから離れた見晴台では清々しい空気を味わえました。公演開始は16時半。夕暮れ前からのスタートです。
到着してすぐ気になったのは、会場のあちらこちらに設置されていた、木目調の12面体。
よく見たところ、スピーカーでした。
一般的なスピーカーは一方向に向けて音を発しますが、この12面体スピーカーは、全方向に向けて音を発するため、より本来の楽器の響きを再現できるそうです。
かなり細部までのこだわりを感じます……。
開幕!
2日目の出演者はこちらの方々。
原 摩利彦(ピアノ&シンセ)
根本 理恵(バイオリン)
銘苅 麻野(バイオリン)
角谷 奈緒子(ヴィオラ)
巌 裕美子(チェロ)
千葉 広樹(コントラバス)
井原 季子(笙(ショウ))
岩崎 和音(サントゥール)
Polar M(ギター)
作曲・構成:原摩利彦さん
京都大学教育学部卒。クラシカルからサウンドスケープなど先鋭的な音響作品まで、舞台・現代アート・映画など、さまざまな媒体形式で制作活動を行っています。
笙(ショウ)の独奏
(笙を演奏する井原季子さん)動画6:50~
笙は雅楽で使われる管楽器で、原理としてはハーモニカに似ているそうです。
公演はこの笙の独奏とともに始まり、会場は一気に神秘的な空気に包まれました。
ひとつの楽器だけで、何層にも重なったような音色を奏でるところが面白く感じました。
サントゥールの独奏
(サントゥールを演奏する岩崎和音さん)動画42:30~
サントゥールとはペルシャの古典楽器で、現代でいうピアノにあたる打弦楽器の一種です。
最も印象的な音色で、響きがとてもきれいでした。
この日は月食の翌日。ちょうどサントゥールの独奏とともに、赤くなった月が上ってゆき、幻想的な世界に吸い込まれていくようでした。
9人の演奏家によるアンサンブル
笙、サントゥールと、あまり聞き慣れない楽器が組み合わさった構成ですが、それに加えてシンセサイザーが空間をさらに重層的なものにしていました。
シンセサイザーによる電子音が加わることによって、簡単に例えると「映画の壮大なサントラ」のようになるのです。
自然の音、電子音、深い楽器の音、冷たい空気、これらが融合して、今までに体験したことのない感覚を全身で味わうことができました。
終盤に近付くと、空はすっかり暗くなり、昼間の喧騒が嘘のように静かになる法輪寺一帯。
体の芯まで音が染み込んでいくようで、心揺さぶられました。
さいごに
1時間半の演奏でしたが、あっという間に過ぎてゆき、余韻に浸りながら晩秋の嵐山をあとにしました。
「演奏会」というと、音楽に精通していない学生にとっては、参加のハードルが少し高く感じる方も多いのではないでしょうか。私自身もその一人で、今までプロの演奏を生で聴く機会はほとんど無かったのですが、今回、このような特別な環境で、音楽を全身で感じることができ、とても充実した時間を過ごすことができました。
素晴らしい演奏を作り上げてくださったアーティストの皆様、運営の方々、法輪寺の皆様、ありがとうございました!
当日の様子は公式YOUTUBEチャンネルで映像で配信されています。
そのほか、各種SNSにも取り上げられています。
Twitter https://twitter.com/AnnulusProject
Instagram https://www.instagram.com/annulus_pj/
今回のイベント主催者の方は「若い人にもっと本物の音楽を知ってほしい」という思いで2018年にも同じ場所で「ベース縁日 in 京都 法輪寺」というイベントを開催され、私たち京都学生広報部も参加させていただきました。そちらの記事もぜひご覧ください。
(Photo by RIKI)
(文・京都大学法学部 矢野史穂)
(取材協力・同志社大学グローバル地域文化学部 西村彩恵)