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京大の数学の先生に数学のことを聞いてみた。

こんにちは。市川です。

2021年3月、京都大学数理解析研究所の先生にオンライン取材をさせていただく機会が得られましたので、数学のことをたくさん聞いてみました!

<お話をうかがった先生>

小林 佑輔 (こばやし ゆうすけ) 先生
京都大学数理解析研究所准教授。2010年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)取得。その後東京大学助教、筑波大学准教授を経て、2018年より現職。専門分野は、アルゴリズム理論、組合せ最適化、離散構造。

京都大学数理解析研究所とは?


(2019 年夏に行われた小林先生の公開講座の様子)

――京都大学数理解析研究所とはどのようなところですか?

京都大学数理解析研究所とは、数学・数理科学の総合的な研究を行う研究所です。1963年の設立以降、数学・数理科学の分野で世界的な研究所として認識されるに至っています。行っていることは純粋な数学の探求と、数学の諸科学への応用(数理科学)の両面の研究活動です。また、共同研究事業の拠点としての活動(ワークショップなど)、大学院教育なども行っています。

先生はなぜ数学の道に進んだのか?

――先生はなぜ数学の道へ進まれたのですか?

小中高で算数・数学が好きで得意だったので、漠然と数学に関わる分野に進もうと考えていました。ただ、大学入学後、すぐに数学の道に進んだというわけではなく、数学を含む様々な分野を勉強する中で「応用数学」というものに興味を持ったので、工学部の「計数工学科」(工学における数学を学ぶ学科)に進学しました。そこで勉強する中で、現在の専門分野である「アルゴリズム理論」や「組合せ最適化」という分野に出会いました。ですので、数学の道にまっすぐ進んだというよりは、興味のある分野を進むと、幅広い意味での数学に行き着いた、といえます。

数学の魅力とは?

――先生が感じる数学の魅力とは何でしょうか?

数学の魅力は多くあり、人によって何を魅力に感じるかはもちろん違いますが、ここでは4点ほどあげてみます。

1つ目は、研究面での話ですが、まだ誰も知らなかったことを解き明かすことができる点です。例えば、成り立つことがわからない性質や、今まで関係性がわからなかった事柄を結びつけること、問題解決のための新しい手法を開発することなど。今まで誰も知らなかったことを世界で初めて知ることができるということは、難しいことですが、大きな魅力の1つであります。

2つ目は、「問題を解く」というプロセスの楽しさです。パズル的な楽しさの部分ですね。どのような道具を使えばいいのかという部分を考えたり工夫したりしながら問題を解くことや、解けた時の爽快感が魅力的だと感じます。

3つ目は、様々な分野に応用することができる点です。自然科学や工学など、どんな分野にも数学は出てきます。高校数学の微積分や三角関数などはどんな数理科学の分野にも出てきますし、もっと先端的な事柄ですと、数百年前の整数論が現代の暗号技術に使われています。「理論的な興味からすすめられた研究が、ずっと後になって社会的に大きなインパクトを持つようになる」ということは、数学の重要性を示すと同時に魅力の1つといえると思います。

4つ目は、数学の理論体系の厳密さです。例えば、「実数」は実生活や中学高校では当然あるかのように扱われている概念ですが、それをどう厳密に扱うかということは当たり前ではありません。今まで当たり前のように思えていることをきちんと厳密に扱うことが数学では重要になります。あいまいさを排除して厳密に議論する、ということは数学ならではの魅力の1つです。

数学にはこれら以外の魅力もありますので、それらに魅力を感じる方もいるかと思いますし、それももちろんいいと思います。

――中学や高校のときに感動した数学の分野はありますか?

小林先生:整数論です。当時はまだ深くは学んでいなかったのですが、「暗号学に整数論が応用されている」という話を高校の時に聞き、理論的に重要な性質と現実での重要な応用が結びついている、ということに非常に興味を持ちました。

――問題を解くだけではなく、数学が現実世界と深くかかわっていることがわかると、数学に対する印象が変わってきますね。

そうですね。

なぜ数学を学ぶ必要があるのか?

――数学を学ぶ意義は何でしょうか?

中学高校の数学に関して言えば、数学を学ぶ一番の理由はその後のあらゆる分野で使うからと言えます。物理学や化学などの理学分野にも出てくれば、機械工学や建築学などの工学分野にも出てきます。もっと言えば情報学や、一般には文系とみなされる学問においても、例えば経済学では高度な数学を取り扱いますし、統計技術はどの分野にも出てくるかと思います。ですので、一番の理由は「使うから」ということになります。また、問題をどのように解くかということを思考する、正しく議論する、論証するための訓練の場という意味合いも大きいのではないかと思います。

研究者になりたい中高生へ

――最後に、研究者を目指す中高生に対してメッセージをお願いします。

中高生の時に「この分野をやる!」と狭く決めることは難しいですし、そのための準備をする段階ではないと思います。ですので、先端的な分野に興味を抱いているみなさんは、中学数学や高校数学の枠を気にせずに、枠の外にあっても自分の興味のあることを広く学び進めることがいいと思います。

取材を終えて

いかがでしたか?数学をなぜ学ぶのか、ということを私自身も考えさせられ、また、数学の魅力を再認識できた取材になりました。中高生の皆さんも普段の数学の勉強に楽しみを見つけられるといいですね!

小林先生、ありがとうございました!

(取材・文:京都工芸繊維大学 工芸科学部 市川峻)
(取材協力:京都大学 農学部 吉岡舞香)
(写真提供(1,2,3,6枚目):京都大学数理解析研究所 様)

京都大学数理解析研究所ホームページ:https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/

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