『響け!ユーフォニアム』の原作者、武田綾乃さんが語る!京都での青春
もくじ
小説にユーフォニアムが選ばれた驚きの理由!
——なぜ、あまりメジャーではないユーフォニアムを小説の題材に選んだんですか?
自分がやっていたのが大きいですね。本を書くときに、ユーフォニアムをやっている子達なら絶対手にとってくれると信じて書いたんです(笑)。 なので自分のユーフォニアム愛はけっこう強い方なのかなと思っています。
あとは、トランペットとかだとけっこうドラマとか映画とかで扱われてるじゃないですか。ユーフォニアムはそうじゃないからみんな手に取ってくれるかなと(笑)。
——青春に関する小説をたくさん書いていらっしゃると思うんですが、どのような意図で青春のジャンルが多いんですか?
シンプルに青春小説が好きなんです。小説を書き始めたのが思春期だったのもすごく大きくて。 あとは、学生時代に自分が考えていたことは、時間が経つにつれて絶対に忘れていくと思うので、思い出しやすい形で作品として昇華して残せたらいいなという理由もありますね。
進路に迷うとき必要なのは、軸
——中高生は進路について悩むと思うんですが、武田さんの学生時代の経験も含めて夢をかなえる方法やアドバイスをいただきたいです。
大切なのは、軸をどこに置くかだと思っています。
例えば、何か目的があってより良い高校や大学に行きたいというなら分かるんですけど、目的がない状態で上を目指し続けるのは辛いんじゃないかなと思います。
——夢を叶えるにはどのような努力をすればいいですか?
大人になって気付いたことは、夢を叶えるためのルールなんてないってことですかね 。 学生の頃は見えている世界が小さくなりがちで、自分の知らない選択肢があることに気付かないことが多い気がします。
どうしても叶えたい夢があるのなら、一つのルートばかりに固執する必要はないのかな、と思います。
まず自分が何をしたいかという軸を固めて、プラスアルファで、どうやったら夢により近づけるかということを考えればいいと思います。 一つのルートがダメだったからといって残りの人生が全てダメになるわけではないということを覚えておくと、冷静になれる気がしますね。
夢がない場合は、自分がいたいと思う環境を基準に考えるのが良いかと思います。私の場合、文学部という環境は非常に居心地が良かったです。
居心地がよくない環境に自分から入っていくのは、それが目標のためならいいですけど、プライドや世間体を理由に選んでしまうと、後々たくさんの我慢が必要になる生き方になってしまうのかなぁ。だから、自分の好きな環境・好きなものというしっかりとした軸足があれば、失敗しても後悔は減る気がしますね。
——そういった軸足はどのようにして見つけますか?
学生のときは、好きなこと以外は全部ダメだ、みたいな考え方になりがちだと思います。
だけど、 頑張ったって思うことよりも苦じゃなくできることっていうのがその人の強み、特性だったりするんですよ。すごく努力して頑張ったことの方が記憶に残りやすいから、自分はそれに向いていると思いがちなんですけど。これなら何時間でもやれるということのほうが、意外とその人の本当の適正だったりしますね。
——どうしたらその適正が見つかりますか?
そうですね。まずは自己分析してみるのが一番いいのかなと思いますね。 自分自身を理解することが一番大事な気がしています。
進路って、下した選択によって人生を左右することもあるじゃないですか。そのときに正しい選択肢を求めて右往左往するよりは、決めた選択肢を自分の力で正しいものにしていこうと努力していくと、 後悔する確率は一気に下がります。
——最後に、進路に悩む中高生に向けてメッセージをください。
進路がなぜ不安かというと、未来の予定が立たないからだと思います。
中高生の進路って数か月後の自分がどうなるかを左右するから不安になると思うんですけど、 不安の感情を混同して考えないことが大切な気がします。
「自分は何者になりたいのかという葛藤」「来年の予定が立たないという不安」「このままでいいのかという焦り」といったように、自分に襲い掛かってくる感情は実はたくさんの種類があると思うんです。
だけど、それを混ぜずにひとつひとつ潰していけば、自分の行動する意味が分かってくるんじゃないかなって。誰かに言われるがままに従って漠然とした未来を追いかけるのは辛いと思うので、まずは自分が本当は何がしたいのかを考えるのが重要ですね。
——そうですよね。自分がしたいことをして生きたほうがかっこいいですよね。
でも私は「何もしたくない」っていう選択肢もアリだと思っていて(笑)。
中学生や高校生の頃って、「自分が何をしたいかわからない」という焦りもあると思うんです。本当にしたいことがある人なんて実は一握りじゃないですか。だから、自分がしたいことが見つかったときに備えて、万全の準備をしておくのも一つの進路の考え方かなと思います。
私は 「現状は楽しめ」派です(笑)。今を目いっぱい楽しんだ方がいいと思ってますし、もし自分の思い通りの選択にならなかったとしても、後でやっぱり正解だったっていうところまで持ち上げれば、未来の自分が辻褄合わせしてくれると思うので。
悩むのはもちろん分かるんですけど、自分の周りで怒っていることをしっかり認識しながら学生時代を楽しんでいただければ、それが一番かなって思います。
最後に
武田さん、インタビューに協力していただき、本当にありがとうございました。自分 がとても緊張している中で、非常に物腰がやわらかく、丁寧に質問に答えていただきました。
また、自分も進路に悩むいち学生として、武田さんのお話は共感できて、新しい考え方や見方を得られた非常にいい経験だったと思います。
今回は本当にありがとうございました。
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(文:同志社大学 グローバル地域文化学部 西岡正人)
(写真:京都産業大学 文化学部 石永路人)
(取材協力:立命館大学 産業社会学部 山本菜摘)