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ドリンク代0円?!逆転の発想で成し遂げたライブハウス経営者の挑戦

京都ライブハウスGROWLYはドリンク代0円にするクラウドファンディングに挑戦します」

Twitterのタイムラインに飛び込んできたその言葉は私にとって衝撃的なものでした。
通常、ライブハウスで音楽を聴きに行く時、チケット代とは別に500円~600円程度のドリンク代が必要となります。
それはライブハウスを経営していく中で大切な収入源のはず……。
まさかそれを0円にするという発想があったのかと驚き、成り行きを見守っていました。
そして後日、無事目標の120万円をクラウドファンディングで達成し、2019年4月からの約1ヵ月間「ドリンク代0円にする」ことが実現したことを知りました。
これまでにない企画に挑戦した京都GROWLYの経営者の方にいつかお話を伺ってみたいと思い、実現したのが今回のインタビューです。
「京都にいる」というつながりを大切にされている、その想いの強さをぜひご覧ください。

※クラウドファンディングとは……?
クラウドファンディングとは、インターネットを通して自分の活動や夢を発信することで、想いに共感した人や活動を応援したいと思ってくれる人から資金を募るしくみです。途上国支援や商品開発、自伝本の制作など幅広いプロジェクトが実施されています。
https://readyfor.jp/crowdfunding/参照)

プロフィール

角田恭平(つのだ・きょうへい)さん

(株)ケイピーエスを設立し現在代表取締役、京都ライブハウスGROWLY(地下鉄二条駅から徒歩2分)を中心にいくつかの飲食店を経営。
熊本県出身で立命館大学への入学を機に上京、以後京都で活動を続ける。
また、YouTubeやブログでも精力的に活動し、音楽業界に新しい風を吹き込んでいる。

・京都ライブハウスGROWLY(https://growly.net/
・Youtube(https://www.youtube.com/channel/UCLfAl5l9ihmlXp1mPS_3DAQ
・ブログ(https://www.kyoopees.net/

「偶然」は「選択」の積み重ね

「京都」で会社を経営しながらも上京したころは「京都」を選んだことにこだわりはなかったと言う角田さん。
予想外のカミングアウトに驚きましたが、何が角田さんにその「偶然」ともいえる選択をさせたのでしょうか。

元々音楽が好きで、高校生の時から文化祭など年に2回ほどバンドを組んで演奏していました。ですが、高校生なのでお金もなかったですし、地元が田舎だったこともあってなかなかライブハウスに足を運んで楽器の練習をしたり、バンドを組んだりすることが難しかったんです。

だから、大学生になったら必ず九州を出て音楽をやりたいと思っていました。

勉強は得意だったこともあり無事に立命館大学(私立大学)と横浜国立大学(国公立大学)に合格しました。そしてどちらに行こうか迷った時に、「私立のほうが大学生の人数が多いから、自分と同じように音楽をやりたいと思っている人も多いだろう」「大阪の隣だし、関西のほうが面白い個性を持った学生が多そうだ」という理由で「京都」にある立命館大学を選択したんです。

大学に入学してすぐ軽音サークルに入って一緒に音楽をやっていく仲間を見つけ、オリジナル曲を作って大学の文化祭など大きなステージで演奏していました。その後、メジャーなバンドも所属しているレーベルに入ってCDを出したり、ライブハウスやフェスで演奏したりもしました。
大学で「何か学びたい」というよりも「音楽をやりたい」という思いが強かったために、音楽を最優先にした大学生活を送っていましたね。

そんな音楽活動をしていく中で、自分が「人と人をつなぐ」ことが好きだと気付きました。
バンドを前に進めるようにするためには、自らが打ち上げやほかのバンドのライブなどに参加してつながりの輪を広げていかなければなりません。
バンドの中で僕はその役割を担っていて、次第につながりを作る努力をすれば自分のバンドが売れることに気付き、その役割に楽しさを覚えていました。

そしていつしか、よくお世話になっていたライブハウスの方からアルバイトのお話をもらいました。
ライブハウスのアルバイトというと、バーカウンターで飲み物を作ったり、音響や照明などを調整することを想像するかもしれませんがそれだけではありません。
僕はイベントのブッキング(対象のバンドに合いそうなほかのバンドを紹介してバンド同士のコネクションを作ったり、イベントに出演するバンドを集め日時や演奏時間を設定する)の役割をもらって働いていました。
そして自分のバンドが解散した後、そのライブハウスの店長を任されることになったんです。

「京都」にいるからつながる・広がる

「大学」と「音楽」という二つの大きな選択を大学時代に経験した角田さん。
しかし、大きな選択はそれだけにはとどまりませんでした。
様々な選択肢の中から「京都に残る」ことを選んだ理由とは一体何だったのでしょうか。

僕がライブハウスの店長になってから、ある時、そのライブハウスが入っていた建物自体取り壊されることになって閉店せざるを得なくなったんです。
当然僕も職を失うことになりますからあらゆる選択肢を考えました。
地元に帰って就職する、専門学校に通って手に職をつける、ほかのライブハウスで働く……。

けれど、それらの選択肢は僕が大学時代の4年間培ってきた様々なつながりを全てゼロにすることを意味していました。そのことがどうしようもなく悔しくて、なにか方法はないだろうかと考えた時に思いついたのが、自分で会社を設立し新たにライブハウスを作ることでした。

今まで自分が大学の時から培ってきた「京都」でのつながりを大切にしたい、18歳や19歳という多感な学生たちが様々な場所から集まり、成熟して様々な場所に散らばっていくという意味であらゆる文化の起点となる場所「京都」から情報や文化を発信していきたいと考え、京都に残ってライブハウスを新たに作ることに決めました。
例えば「大学生の時に京都のライブハウスGROWLYで演奏した、バンドを見に行った」っていう思い出を持って様々な場所に飛び立ってくれると嬉しいじゃないですか。
実際、京都ライブハウスGROWLYを利用してくれているほとんどのバンドが大学生です。
「京都」が若者の多い「学生のまち」だからこそ感じるやりがいかもしれないですね。

それに、多くの人が成功を求めて東京や大阪に出て起業をする中で、僕も同じように東京や大阪に出ていってしまうと、京都に息づく文化を発信できる拠点がもっと減っていくと思って……。
「京都にいる」からこそ「京都」が更に活気づくことを第一に考えていたいですね。

「つながり」から広がる新たな挑戦


「自分が今住んでいる土地を大切にする」
その強い信念が根幹にあるからこそ、今では「京都にいる」ことに強いこだわりを持つ角田さん。
最後に私と角田さんがつながるきっかけとなったクラウドファンディングについて聞いてみました。

クラウドファンディングも、京都ライブハウスGROWLYが生んだ「偶然」の縁が積み重なったものから始まりました。もともとクラウドファンディングにあまり関心が持っていなかったのですが、僕は新しいもの好きですので京都ライブハウスGROWLYの7周年記念の企画として挑戦してみることにしました。
クラウドファンディングに多いのが新しいものを作るために協力を呼び掛けてお金を集めるというものですが、逆転の発想でもともとあるものを0にしてみるのはどうだろうと考え、ドリンク代を0円にしてみることにしました。
クラウドファンディングの期間は、なかなか資金が集まらないなど困難なことも多かったのですが、無事皆さんの協力があって赤字にもならなかったですし、なにより周知の為にYouTubeやブログを始めることになったことも大きかったですね。
この機会を通して、京都ライブハウスGROWLYを様々な人に知ってもらったり、さらに新たなことを始めたりするきっかけになったのですから。

さいごに

大学時代を過ごした京都でのつながりを大切にしたいと、自身で会社を設立し、ライブハウスを経営している角田さんには「京都にいる」ことへの並々ならぬこだわりと野心がありました。
今回のインタビューで「自分が今住んでいる土地」を大切にし、一つ一つの出会いを大切にすること、「京都」という場所が大学生にとっていかに恵まれているのか、学んだ気がします。

(立命館大学 文学部 山下杏子)

 

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