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日常で感じる花への感謝の気持ちとは                未生流笹岡 家元 笹岡 隆甫さんインタビュー

日常で感じる花への感謝の気持ちとは 未生流笹岡 家元 笹岡 隆甫さんインタビュー

毎月15日は第15回京都学生祭典の企画として、学生が文化について学び、発信する「京都学生文化発信の日」。今回は、日本の伝統文化の一つであり、歴史や趣を感じる生け花の世界について、自身も京都で学生生活を過ごされていた未生流笹岡 家元の笹岡 隆甫さんにお話いただきました。華道の世界について詳しく知りたい方も、興味はあるけどちょっと難しそう…と思っている方も必見です。

笹岡 隆甫さん

華道「未生流笹岡」家元。1974年京都生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。3歳より祖父である二代家元笹岡勲甫の指導を受け、2011年、三代家元を継承。舞台芸術としてのいけばなの可能性を追求し、日本-スイス 国交樹立150周年記念式典をはじめ、海外での公式行事でも、いけばなパフォーマンスを披露。2016年には、G7伊勢志摩サミットの会場装花を担当した。

京都での学生生活

─―笹岡さんが過ごされていた京都での学生生活はどのようなものでしたか?

工学部の建築学科で学んでいました。夜になると製図室に集まって図面を書く、という環境で共にいろいろなことを語ったり、遊んだり、勉強したり、という感じでしたね。もうなくなってしまいましたが、キタバチ(北白川バッティングセンター)で朝まで遊んだのもよい思い出です。今の学生を見ていると、すごくまじめだなあと感心しますが、もっと遊んでもいいのにと思うこともあります。学生時代の友人たちはそれぞれの分野で活躍していますが、今でも関係は続いていますし、仕事で関わることもあるんですよ。

─―生け花をする際に大学で学んだことが生きていると感じる点はありますか?

大学、大学院では日本建築の歴史を専攻し、例えば非対称を好むことなど、日本文化に共通する美の法則のようなものを学ぶことができ。それはきっと日本文化の一つである生け花にも通底するものがあると思うので、一見生け花と関係が薄いように見える建築学科での学びも、今となっては回り回ってつながっている、と感じています。

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─大学生のうちにやっておけばよかったと後悔していることはありますか?

海外経験ですね。私は学生の頃、旅行で何回か海外に行ったくらいだったので、さらに踏み込んで、海外に住む友人を持つことができたらいいと思います。特にこれからの時代、海外経験はとても重要になってくると思うので、これは現役の学生さんに伝えたいことでもありますね。

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華道 生け花の世界

─日常生活の中で生け花はどういう役割を果たすのでしょうか?

生け花というと、完成された作品、というイメージを持つ人が多いかもしれません。そのようなイメージから、日常生活とは少し離れた場所にあるものなのかな、と感じる人もいるかと思います。しかし、本来生け花というのは花に対する感謝の気持ちを持って、花から人生観や世の中の真理など様々なことを学ぶのが原点です。なので、完成された作品を見ることだけが生け花の全てではなく、道ばたに咲いている小さな花のことを気にかけることも、季節の移ろいを感じることも、すべてが生け花において大切にしたい気持ち。花に対する思いやりを持つことが、きっと人生を豊かにしてくれます。

─日本の生け花と海外のフラワーアレンジメントはどのような違いがありますか?

海外のフラワーアレンジメントは、花そのものの美しさを一つの完成品として見せます。花が満開になって華やかな様子、というようなイメージでしょうか。一方、日本の生け花は花や木を用いて「余白」を作り、花が咲いたその瞬間だけではなく、時間の経過と共に移ろいゆく花の様子を見届けるものです。「余白」を作るとは、花や木で作品全体を埋め尽くしてしまうのではなく、それらを組み合わせてうまく作品の中に空間を作り出す、ということです。だからこそ生け花では必ずつぼみを入れますし、「変わっていくものを見る」ことを大切にしています。

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─笹岡さんにとって生け花とはどのような存在ですか?

私の場合、本当に小さい頃から生け花はとても身近にあるものでした。小さい頃は、兄弟や幼なじみと一緒に祖父の稽古場に行って花とふれあう、という形だったので、生け花は遊びという感覚がありました。ただ、家元である祖父の所に学びに来ていた一人の先生が、生け花を始めたきっかけについて語ってくれたことがあったんです。その先生は戦後シベリアに抑留されていて、そこでは一切れのパンを巡って同じ仲間の日本人同士が殴り合いのけんかをするようなすさんだ状況であったそうです。そんな中で、ある一人の男性が強制労働の間に見つけた一本の花を空き缶に挿していたそうです。その男性の背筋がしゃんと伸びた姿勢を見て、生け花というのは生き様であるのだ、と感じ、もし無事に日本に戻ることができたら生け花の道を志そうと決めたそうです。その先生は無事日本にお戻りになり、生け花をされることとなったわけですが、その話を聞いて以降、私自身も生け花というのは生き様であると心得ています。

─生け花をする上で最も大切にしていることは何ですか?

花に対する感謝の気持ちです。私たちの世界では毎日のように花を生けます。そうするともちろん生けた分だけ処分しなくてはならない花も出てきますよね。そのように傷んでしまった花を処分する時に、役目を終えた花にきちんと“ありがとう”と感謝の気持ちを込めることを忘れてはいけないな、と感じています。

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─生け花を見てもらう時に、どこに注目してほしいとお考えでしょうか?

基本的に、技とか型というのはあくまで方法論でそこまで重要じゃないと思うんです。大げさな言い方かもしれないですが、花と会話をして花と向き合ってほしいですね。別に何かの評価をする必要はなくて、単純に花とふれあうことで、花から一人一人それぞれが自分なりに人生観や生き様を学ぶことが大事かなと思います。これは生け花の作品を見る時だけではなく、道ばたに咲いている花などを見た時でも同じです。何気ない日常でも、道ばたの小さな花に一瞬でも思いを寄せてみる、そのようなことはまさに今日の日本社会にとっても必要なことではないかな、と感じます。

─全国の中高生に向けてのメッセージをお願いします。

京都は学生も多いですし、住みやすい街ですね。京都という街は昔から様々な人々や文化が盆地にひしめき合っていて、気負わずにジャンルを越えたコラボができるところも魅力です。同じように、いろいろなタイプの学生が集まって、そこで自分の仲間と出会ったり、新しいものが生まれたりと、さまざまな可能性にあふれた街が京都だと思います。

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インタビュー終了後に、笹岡さんに生け花の実演をしていただきました。

その様子がこちらです。一つ一つの所作が美しく、見入ってしまいます!

インタビューを通して生け花は生き様という言葉が印象に残りました。花と人を重ねて考えることが生け花の第一歩なのではないでしょうか。そして花に対する感謝の気持ちを忘れずに日常生活を過ごすことで、生け花の本質が理解できるのだと思いました。

 

毎月15日に発信している「京都学生文化発信の日」、来月は最終回です。最終回は特別編として門川市長×文化庁地域文化創生本部の松坂事務局長×京都学生祭典実行委員長×京都学生広報部の座談会の様子をお送りします。来月もお楽しみに!

 

 

(立命館大学 産業社会学部 児玉邦宏)

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