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嵐山で開催中!伊藤若冲の激レア巻物と芭蕉と蕪村、2人のカリスマ

嵐山で開催中!伊藤若冲の激レア巻物と芭蕉と蕪村、2人のカリスマ
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2024年10月11日、福田美術館の開館5周年記念「京都の嵐山に舞い降りた奇跡!!伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」と嵯峨嵐山文華館の「企画展:HaikuとHaigaー芭蕉と蕪村、二人のカリスマー」の報道内覧会が行われました!そこで、京都学生広報部の部員が取材に参加し、作品を鑑賞してきたので、その模様をお伝えします!

福田美術館と伊藤若冲

福田美術館は嵐山にあり、2024年10月で開館5周年を迎えました。伝統的な京町屋のエッセンスを踏まえつつ建築された建物で、渡月橋を見ることもできるカフェもあります。

今回の展示は、江戸時代中期の画家、伊藤若冲の画業を初期から順に辿り、同時期に活躍した曽我蕭白(そが しょうはく)と円山応挙に注目しています。全国各地や世界で若冲の展示が行われていますが、若い人に見てもらいたいということで、アニメやライトノベルの雰囲気に近づけてタイトルを決めたそうです。福田美術館では若冲の作品を30点所蔵しており、そのほとんどが展示されています。

京都の嵐山に舞い降りた奇跡!

今回の展示の目玉である「果蔬図巻(かそずかん)」は、若冲が70代の頃に描かれた全長3メートル余りの大作で、様々な野菜や果物が描かれた巻物です。

2023年の2月に美術商から連絡があり、8月に実物を確認の上購入。その後修復され2024年の3月に記者発表されました。明治から昭和のはじめに多く発行されたオークションカタログや当時の図録に全く記録がないことから、新しく発見された作品だと判定されました。

専門家の協力のもと、描かれている野菜と果物の推定を行ったところ、パッションフルーツやライチなど南国のものも含まれていました。

また、若中が40~50代の頃に親交の深かった相国寺の僧侶・梅荘顕常(ばいしょう けんじょう)によって書かれた跋文(ばつぶん)が添えられており、この作品の経緯などが記されているそうです。

1790年に描かれた作品ですが、このとき若冲は75歳、しかし署名には76歳とあります。若冲は実際の年齢よりも足した署名をしているといわれてきましたが、この作品が発表されたことによって、間違いなく1歳は加算していたことが判明しました。その意味でも今後の若冲研究にとって、とても大事な作品となるそうです。


また、「乗興舟(じょうこうしゅう)」という作品は、京都の伏見から大坂の天満橋まで淀川を通る船に乗っていた際に、その移動中に見える風景を若冲が描き、それに合わせて梅荘顕常(ばいしょうけんじょう)が短い詩を付けた作品です。正面摺(しょうめんずり)という版画の技法が用いられています。

部分

 

また、今回の企画では若冲と同年代に活躍した絵師・曾我蕭白(そが しょうはく)と円山応挙の作品も展示されています。応挙は努力の人、蕭白は天才的な人でもののかたちを正確に捉えることが上手だったと言われており、まさに真逆な二人の作品を見ることができます。

嵯峨嵐山文華館と松尾芭蕉、与謝蕪村

嵯峨嵐山文華館は百人一首の歴史と日本画の粋を伝えるミュージアムで、こちらも嵐山にあり、福田美術館のほど近くにあります。

今回の展示では、松尾芭蕉と与謝蕪村の俳句と、俳句と絵が一体となった俳画の魅力を感じることができます。嵐山は若い方や外国人観光客が多い場所なので、タイトルをみて気になってもらえるように工夫をしたそうです。

松尾芭蕉(1644-1694)は、当時古典を理解している上流階級の間でのみ楽しまれていた俳諧を、一般の人々にも楽しめるように裾野を広げたことが大きな功績のひとつで、江戸時代当時から人気があったとされています。

与謝蕪村(1716-1783)は大坂出身で、一時期江戸にいましたが、僧侶として全国を回りました。その際、芭蕉がかつて辿った奥の細道のルートを歩いていたのではないかと言われています。

芭蕉と蕪村、2人のカリスマ

上の画像にある「ふる池や」の発句短冊・極書は、芭蕉が書いたものが大切に保管され、芭蕉本人の直筆であることを横に記してあるものです。


この「野ざらし紀行図巻」は芭蕉自らが旅で感じたことを文章と絵で記したもので、その所々で読んだ句が記されています。昭和のはじめに発見されましたが、約50年以上前に一度行方不明になり、3年前に再発見された作品です。

特徴的なキャプションで目を引く

 

最後に今回の福田美術館と嵯峨嵐山文華館の展示の解説をしてくださった岡田学芸課長にお話を伺いました!

キャプションの解説文がわかりやすくておもしろいですね。
――ありがとうございます。学芸員たちでいろいろと話し合って決めました。

福田美術館にて、作品が来た経緯として美術商とのやりとりがきっかけとのことをおっしゃっていましたが、そういった連絡を日ごろからよくとっているのですか?
――さまざまな情報交換等を行っているなかで、たまたま作品があることを聞いてという形でした。

近年は訪日客の来館者も増えましたか?
――英語圏の方以外にも、中国語圏の方が良く来られますが、外国語対応は英語のみのため、英語以外の外国語対応は今後の課題です。

若い人たちに見てもらうために工夫していることはありますか?
――近年、若い人たちへの認知度を高めるために、たとえばインスタグラムでハッシュタグがつけやすそうなタイトルをつけ、ひっかかりを増やすようにしています。

福田美術館は若冲の繊細な絵はもちろん、曾我蕭白(そが しょうはく)と円山応挙の「虎図」は違いがはっきりと出ており面白いと思いました。また、嵯峨嵐山文華館は聞いたことのある俳句の俳画があったり、かわいらしい絵の入った俳画もあるなど、とても楽しめました!思わず見てしまうようなキャプションも多く、普段あまり美術館に行かない人も楽しめると思います!

(取材・文 立命館大学 産業社会学部 井上日菜里)
(取材 佛教大学 歴史学部 直江和宣)

この記事を書いた学生

井上日菜里

井上日菜里

立命館大学 産業社会学部

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