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吉岡里帆さんインタビュー(後編) −挫折なくして強さは獲得できない−

ドラマや舞台、映画などで大活躍の女優・吉岡里帆さん。京都のご出身であり、京都で学生生活を送られたということで、今回、念願叶ってインタビューさせていただきました!
インタビュー後編では、吉岡さんの現在のお仕事について詳しくお聞きしました。

学生時代についてお聞きしたインタビュー前編はこちらから!↓

それではどうぞ!

「自分らしさ」に悩み、掴んだ女優への道

――学生のころから演劇をされているということですが、芸能界に入るにあたって躊躇や不安だったことはありましたか?

本当に難しいんだな、と思ったのは、競争率の高さですね。
通っていた養成所だけでも、たくさんの所属生がいたんです。役者を目指す人がこんなにいるんだと東京に出てきて痛感しました。自分の個性を磨くとか、「自分って何者なんだろう」とその時期は考えていましたね。
周りに馴染んで、みんなと同じことができることが正義だった中学高校生時代から、急に「自分らしさ」を求められる世界に入っていったので、かなり戸惑ったことを覚えています。
当時は「自分の強みってなんだろう」というのは何回も考えていました。そして分からなくなって彷徨う、みたいな(笑)。そこから自信もなくなって。

――そんなに競争率が高いんですね。

そうなんです!オーディション会場に行ったら、みんないろんな特技を持っていて。審査員の人に「何が得意ですか?」とか「どういうことが表現できますか?」とか聞かれたときに、自分が何者なのか伝えられないと話にならないというか。

――今の話を聞いて、やはり個性を出すことや自分をいかに表現するかというのは難しいなと、自分の過去の経験を思い出して痛感しました。

そうですよね……。どうしたら「おもしろいな」、「楽しい」と思ってもらえるか、ずっと考えていました。それは芸能という特殊な舞台だけではなくて、就職活動のときにも多くの方が悩むことなのかな、と思います。「隣の人と比べて何ができるの?」みたいな。その怖さのようなものはありました。

――では、逆に実際に芸能界に入られて嬉しかったことなどはありますか?

嬉しかったことは、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)に出演したときに街の人が役名で呼んでくれたことです!
本当に感動しましたね……。「役者の仕事をしているんだ」という感覚になって、初めて誇りに思いました。

――吉岡さんは演劇以外に現在京都観光大使としても活躍されていますが、選ばれたときの心境はどうでしたか?

嬉しかったですね。割烹料理屋や伝統工芸品のお店といった「京都らしいお店」を学生時代は知らなかったので、大人になってから「京都の美味しいお店を教えて」とか「京都旅行のおすすめの場所は?」という質問に答えられなくて。そのときに、私全然京都のことを知らなかったかも、とすごく思ったんです。
自分自身がもっと京都のことを知りたいという思いを持って務められると感じたので、もっと京都を好きになれる良い機会だなと思いました。

どんな役柄でもエンタメに

――先ほどNHKの朝ドラ『あさが来た』を挙げられていましたが、CMや舞台、ドラマや映画など数多く出演されていて、その中でも特に心に残っている作品や役などありますか?

特に心に残っているのはドラマ『カルテット』です。朝ドラでは純情で真面目で清廉潔白な役を演じていたのですが、その後にクセの強い悪役を演じて(笑)。プロデューサーに「全国の人に嫌われるかもしれないんだけど、このセリフ言える?」と聞かれたことを覚えていますね(笑)。
そのときに「メディアに出て人に楽しんでもらうにはそのくらいの振り切った感情が必要だし、自分がどう思われるかは一旦さておき、自分の感情を剥き出しにして演じないと届かないものがあるんだな」と身をもって感じました。案の定、放送されると「怖い」とか「こんな人いたら嫌だ」とか、たくさんリアクションをいただいたんですが、それがなぜか私にとっては応援のメッセージに聞こえたんです。
なぜならそのコメントの裏返しに「すごく印象に残ったよ」とか、「笑っちゃった」、「ストレス発散になりました」という声もたくさんあったから、強烈な嫌な役でもエンタメにしたら楽しんでもらえるんだ、と希望を持てました。

――『カルテット』を見てましたが、特に第5話の終盤のシーンは、吉岡さん演じるアリスちゃんを「怖い」と思いながら見ていました。

私も怖いと思います(笑)。
恥ずかしくて見られないですし、あんなに長いセリフも言ったことがなかったので、当時は「私、覚えられるのかな!?」と。でも、主演を務める松たか子さんや満島ひかりさんがものすごいエネルギーで引っ張ってくださって「好きに演じていいよ」と言われているような気がして、今も強く記憶に残っています。

――そのような長いセリフはどのように覚えられているのですか?

2023年末に、全体で3時間40分くらいある舞台をやったのですが、やはりそのときも「私、覚えられるのかな」と思っていましたし、セリフ量の多い現場では毎回考えてしまって不安になります。でもすごく不思議なのですけど、覚えられちゃうんですよね(笑)。きっと追い込まれるからだと思います。
昔、初めての連続ドラマの現場で緊張しすぎて萎縮しちゃっていたときがあったんです。どうすれば「個性」が出せるか、どうすれば役に立てるか、をずっと考えていて、覚えてきたセリフが言えなくて。緊張しすぎて言葉が詰まってしまったんです。
でもそのときに、共演していた女優さんが察してくれて、帰りに車に乗せてくださって、いろいろ話してくださって。そのことを今もずっと覚えています。自分もそういう先輩になりたいと思いました。

腐るにはまだ早い!今を頑張る皆さんへメッセージ

――先ほど就職活動の話もありましたが、将来に悩む若者に向けてメッセージがあったらお聞きしたいです。

私もたくさん悩んで、たくさん挫折を味わって、今の自分の仕事をすごく大事に思って力強く進めているんですけど、やはり「挫折なくして強さは獲得できない」と思っています。心が折れることとか悲しいこともありますが、経験した人にしか味わえない自分だけの成功の道とか、幸せがあると思うので、苦しいことに溺れないでほしいと思います。
苦しんでいるときに、「すごくいい経験をしているし、その経験があるから自分はすごくいいステップアップをしている」ともっと思えたらよかったと今になって感じます。
失敗してすごく打ちひしがれてる日もたくさんありましたが、「そうじゃないよ」と当時の自分に言ってあげたいです。よく「若いときの苦労は買ってでもしろ」と言いますよね。当時は「そんなの絶対嫌だ!」と思っていたけど、実際そうなのかもなって。

――やはり「苦労するからこそ」というものはあるのですね。

腐るにはまだ早いかな、と。まだまだ若いですし、「これからだよ」って自分に言ってあげるのは大事だと思います。あと「努力している時間をやめない」こと。続けていないと到達できない場所がある気がしていて。
やり続けることの大事さを今も自分で自分に説いて鼓舞しています。

――では最後に、女優としての将来の展望や目標を教えてください。

女優を志したときから、何かを表現している人を見てパワーをもらっていました。だから、誰かにパワーを送ったり、癒しだったり、一瞬クスッと笑ってもらえたりとか、「何この人」と苛立つけど感情が動くとか。とにかく誰かの心を少しでも揺らせるような、一瞬がちょっとだけ色づくような、その人の人生に関われるような役者になっていきたいです。
そして最終的な目標は、人々の心に残るような作品に携わりたいということです。私も忘れられない作品が数本あるので、いつかそのような作品を届けられるような役者になっていきたいです。

さいごに

みなさん、いかがでしたか?
数多くの舞台で活躍する吉岡里帆さん。吉岡さんの素敵なお人柄や魅力がこの記事を通して、より伝われば嬉しいです。

吉岡里帆さん、貴重なお話をありがとうございました!

吉岡里帆(よしおか・りほ)さんプロフィール
1993年1月15日生まれ、京都府出身。
NHK連続テレビ小説『あさが来た』やドラマ『カルテット』など多くの話題作品に出演。
2023年、『ハケンアニメ!』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。
現在京都観光大使を務め、ドラマや映画、舞台やラジオなど幅広く活躍している。

(取材・文:同志社大学 社会学部 成田萌)
(取材:京都女子大学 文学部 内海万知子)
(取材・撮影:同志社大学 法学部 足立隼太郎)
(取材協力:京都女子大学 文学部 吉田妃那)
(取材協力:立命館大学 文学部 吉田玲音)

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