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学生の背中を後押し。「マイ・チャレンジ」講演前の山中伸弥教授に直撃!

学生の背中を後押し。「マイ・チャレンジ」講演前の山中伸弥教授に直撃!
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どんな偉い人も自分と変わらない時があった。そう思って挑戦を!

今年創立50周年という節目の年を迎えた京都産業大学。1月21日、同大学の永田和宏先生が各界で活躍する著名人を迎えて対談する企画「マイ・チャレンジ」がスタートしました。第1回のゲストは、ノーベル賞受賞者で京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥先生。前半は「失敗を恐れずに挑戦を!」と題して山中先生の講演が、後半は山中先生と永田先生による対談が行われました。

一歩踏み出すことってとても大事。(永田先生)
ついこの間まで学生でした。(山中先生)

学生の背中を後押し。「マイ・チャレンジ」講演前の山中伸弥教授に直撃!

広報部員:今日はよろしくお願いします!さっそくですが、「マイ・チャレンジ」のような機会を通じて、学生たちに伝えたいことは何ですか?また、どんな学生になってほしいとお考えですか?

永田先生:今の学生は、偉い人は偉い人で、自分たちとは別の世界に住んでいると思ってる。ああいう人になりたいとかあまり思わないんです。尊敬はするけど、自分はああいう風にはなれないと最初から決めつけている。どんなに偉い先生でも、若いときは将来どうなるかわからなくて不安で、今の自分たちとは変わらなかったんだ、ということを実感してほしいです。
ただ、偉い人はどこかで一歩踏み出している。この一歩踏み出すということが大事なんです。山中先生にはそこを語ってもらいたいです。

山中先生:僕は気持ちとしては、ついこの間まで学生でした。

永田先生:年とったら皆そう言うよね(笑)。

山中先生:自分が学生の時どうだったか、ついこの間のことのように覚えているので、そういったことを皆さんに紹介できたらなと。かっこいい話や作り話じゃなくて、本当にどうだったかをありのままに伝えたいです。

体力と根性。学生時代の柔道とラグビーで身につきました。(山中先生)

学生の背中を後押し。「マイ・チャレンジ」講演前の山中伸弥教授に直撃!

広報部員:山中先生に質問です。学生時代に得たもので、何が一番役立っていますか?

山中先生:柔道とラグビーをやっていたから、体力と根性かな。
研究者になると、研究者同士で競争して研究費をもらわなければなりません。大きい研究費だと必ず最後に面接があって、それで研究費をもらえるかどうかが決まります。今から13年前、iPS細胞の研究に一番大切な大きな研究費をいただいた時のことです。東京まで面接に行って、最後に面接官の大先生が「あんたの強みはなんや。」と言いました。単純に「どんな研究が得意か」ということだったと思いますが、僕は緊張していたこともあり、「先生!僕は柔道とラグビーをやっていたので体力には自信があります!」と言ってしまいました。「そんなことは誰も聞いてないよ…」と言われましたが(笑)。それが良かったのか悪かったのか採用されて、研究費をいただけました。だから最後は体力と、ここというところで頑張る根性です。ずっと頑張っていたら疲れるけれど、時々「ここは頑張らなあかん」という時が絶対にあります。そこを頑張れる体力と根性は学生時代のスポーツで身についたと思っています。

永田先生:その面接官だった先生に会った時にね、「あれは絶対無理やと思ったけど、(山中先生の)迫力に負けた!」と言っておられたよ(笑)。

答えがない世界への準備期間。それが大学生活です。(永田先生)
一生懸命学んだ後は疑ってみることも重要。(山中先生)

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広報部員:もっと多くの人に京都の大学に来てもらうため、私たちは全国の中高生に向けてPRをしています。そこで、大学に進むことの良さや意義を教えてください。

永田先生:できれば皆大学に進学してほしいと思っています。高校までの先生に申し訳ないんだけど、高校までの教育をいかに放り投げるかという期間が大学生活です。高校までの勉強って、教えてもらったことを「いかに理解して」「いかに覚えて」「いかに応用するか」ですよね。つまり、高校までの教育って必ず答えがあるよね。でも社会に出たら正解がある問題なんてない。
そういう意味で言うと、大学では何も勉強しなくていいと思うよ、本当は。絶対答えがあって、教えてもらったものが正解だと思っていたところから、これから何も答えがない世界へ進んでいく。その間の期間が大学という4年間だと思います。それで十分だと思うんだ。こう言うとクビになるからあんまり言いませんけど(笑)。大学に入ってまで言われたことを一生懸命日々勉強して覚えるだけでは損だと思うから、大学の間にもっと他のことをしてみるといいです。今さっきおっしゃらなかったけど、山中先生の学生時代、一番の成果は奥さんを得られたことですよ(笑)。

山中先生:ありがとうございます(笑)。
永田先生の言う通りで、本当にそうですね。僕は10年以上アメリカと日本を行ったり来たりしていますが、その前はアメリカに住んでいました。だから子供はアメリカの教育を受けました。やはり日本とアメリカでは教育がだいぶ違います。日本では10代の時、正解ありきでその正解をちゃんと覚えて、その通りに答えをテストに書いたら丸がもらえる、というような教育になっています。それはいい面と悪い面があると思いますが、正解と言われる答えが間違っていることもあります。僕たちの分野でも昔には、体の中の遺伝子は10万個あると言われていました。今では10万個もないということが分かっていて、だいたい2~3万個ぐらいではないかと言われています。やはり大学生の期間というのは、精神的に成長して余裕がありますよね。そういう時に中学・高校までと違った、学んだ上で疑う姿勢、「もしかしたら間違っているかもしれない」という気持ちを持てるのが大学なのではないかと思います。

大切な大学時代。日本の大学生は自分が何に向いているのかもっと探してみては。(山中先生)

山中先生:アメリカは中学・高校で日本の大学のようにあまり詰め込み教育せずに自由にさせています。大学に入ってからは皆猛烈に勉強する。教育システム全部を変えることは困難ですが、今の日本のシステムの中で、大切な大学の時にそういう意識の転換ができたらいいですね。僕は医学部でしたが、他の学部と同じように、普通に受験して入試の成績で判定されました。アメリカは高校を出てすぐには大学医学部に入れず、いろんな研究所に勤めて研究のお手伝いをしたり、病院でボランティアをしたり、そういう研修先の推薦状をもらって、やっと医学部に入れます。成績だけではなくて人間として医者に向いているかというところまで見られます。日本にはそういうシステムは見られませんが、逆に大学の間は自分が何に向いているかを探す期間ではないかと思います。

広報部員:今日は本当にありがとうございました!

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お二人とも大先生でありながら、私たちの質問に気さくに答えてくださいました。
憧れの先生方だっただけに、夢のようであっという間の時間でした。

まだまだ続く「マイ・チャレンジ」。豪華ゲストに乞うご期待!!

京都産業大学特別対談シリーズ「マイ・チャレンジ」はこれからもまだまだ続きます。第2回のゲスト、将棋棋士羽生善治さんをはじめ、映画監督・テレビディレクター是枝裕和さん、京都大学総長山極壽一さんというような豪華ラインナップ。全8回が予定されています。あなたも偉大な功績を持つ各界の著名人の“大きな決断の時一歩踏み出した瞬間”、知りたいと思いませんか?

[京都産業大学 公式Webサイト]
http://www.kyoto-su.ac.jp/
[京都産業大学特別対談シリーズ「マイ・チャレンジ」]
http://www.kyoto-su.ac.jp/more/2016/305/20160121_my-challenge.html

(京都大学 法学部 渡邊彩華)

この記事を書いた学生

かれんちゃん

かれんちゃん

卒業生が執筆した記事はかれんが紹介しているよ!