観光のまち・京都で大学生が修学旅行をプロデュースしてみた
皆さん「京都」というと何を思い浮かべますか?和食や神社仏閣などいろいろあると思いますが、間違いなく挙がるのは「修学旅行」ではないでしょうか。
今回は、京都に来る修学旅行生のみなさんを対象に活動している「京都B&Sプログラム」主催のイベントを取材しました。
「修学旅行を企画する」をテーマに、ワークショップと座談会が行われ、観光業に興味関心のある学生が多く参加していました。本記事では、そのワークショップの様子をご紹介します。
もくじ
「京都B&Sプログラム」ってなに?
「京都B&Sプログラム」とは、京都にやってくる修学旅行生を現役の大学生がガイドするプログラムです。旅行会社の株式会社JTB(以下、「JTB」)や京都市、大学コンソーシアム京都、そして学生など多くの人々の手で運営されています。
「B&S」とは「Brother&Sister」。修学旅行生にとって、お兄さん・お姉さんの年頃の大学生スタッフと一緒に京都をめぐることができるプログラムなのです。
観光名所はもちろん、大学のキャンパスや普段の生活圏など、いわば「普段着の京都」を見ることができるところが魅力です。詳しくはこちら!。
修学旅行を作ってみる
それでは早速、ワークショップの様子をご紹介します。学生が3つの班に分かれて実際にツアーを企画します。
ルールは以下の6つ。京都B&Sプログラムで実際に行われているツアーのルールに近いものです。
1.実施時間は9時から17時
2.集合・解散は京都駅
3.公共交通機関を利用する
4.大学を回る
5.交通費など金額の制限はしない
6.京都市内を回る
さらに想定されるお客さんとして「中学生」、時期は「秋」、大学生に人気のスポットもめぐることになりました。
ここからは大学生の知恵の見せ所です。
通学や買い物、アルバイトなど普段の生活の中で得た知識、スタッフとしての経験なども参考にツアー行程を考えていきます。
観光スポットや歴史の知識はもちろんですが、混雑しがちな紅葉時期の京都では交通の流れを予測しながら計画を立てる必要があります。
時刻表はアプリで調べることができますが、交通の流れが場所や時間によって違うなど、実際に京都で生活をしている学生スタッフだからこその気づきを、グループワークを取材するなかで感じることができました。
そして各班の発表です。
まずは1班。北区の立命館大学周辺をめぐった後、繁華街の河原町・祇園で買い物を楽しむツアーです。
班のメンバーに立命館大学の学生が多かったこともあり、細かいところまでよく作られていると思います。京都駅から金閣寺、立命館大学、北野天満宮などをテキパキと回るあたりはさすがです!
次に2班。東山にある南禅寺から京都大学、八坂神社や祇園周辺をめぐるツアーです。
ちなみに「八坂庚申堂」とは八坂神社そばにある「金剛寺」の通称で、境内に願掛けのためにつるされたカラフルな「くくり猿」が「インスタ映えスポット」として有名な場所です。
最後に3班。南禅寺から祇園・八坂神社をめぐり、さらに京阪電鉄を使って鴨川沿いを北上し、同志社大学をめざすツアーです。
京都B&Sプログラムのツアーでは大学の食堂でお昼を食べることが多いのですが、ここでは祇園のお洒落なレストランになっています。
グループワークの最後にはJTBの社員の方々から講評がありました。
「ツアーを立案する際に大事にしていることは『ストーリー』『メインを後に持ってくる』『説明力』の3つです。ツアーには構成があり、流れを工夫することで感動を高めることができます。
今回皆さんのツアーでは、そのあたりもよく考えられていたと思います。自身の経験や知識を生かして、日々工夫していくことが大切です。」
僕も今回参加してみて、修学旅行の舞台裏にある工夫の数々を考えさせられました。
修学旅行を楽しめるのも、旅行会社の皆さんの日々の努力のたまものなんですね。
京都B&Sプログラム 学生運営部とは?
最後に、今回のイベントを企画したB&Sプログラム学生運営部のリーダー(取材時)の小貫孝祐(おぬきこうすけ)さんにお話をうかがいました。
――まず、「学生運営部」とは何でしょうか?学生スタッフとは違うんですか?
「学生スタッフ」は修学旅行生を案内する学生ボランティアで、京都B&Sプログラムの主力ともいえる人たちです。
京都B&Sプログラムの最大の特色は、いわゆる観光名所を案内するだけでなく自分たちの大学やその周辺を案内することです。
具体的には一つの班に対して学生スタッフが一人付き、場合によっては数班合同で名所や大学をめぐります。例えば朝に旅館を出発してから午前中は大学を見学してお昼は大学の食堂で食べ、午後に観光名所を見学してから旅館に戻る、といった感じですね。
ツアーは月に2~3度くらいあり、それぞれ行ける日を選んで参加する形になっています。
そして僕たち「学生運営部」の仕事は学生スタッフを支えることです。
本プログラムの実施日に合わせて、参加する学生スタッフ集めたり、活動に関する悩みや相談を聞いたりして、学生スタッフが楽しく活動を続けられるようにサポートをしています。
今回のイベントはJTBの社員の方と一緒になって企画しました。学生スタッフの中には観光業に興味を持っている人が多いので、イベントを通して就職活動について考える助けになればと思って。
――学生運営部の普段の活動について教えてください。
普段は月に3回ほどJTB京都支店に集まって、学生スタッフを登録する業務と今回のような学生スタッフを対象としたイベントの企画をしています。ミーティングの後にはJTBの社員の方と意見交換を行います。
集合日は毎月アンケートで決める方式なので、サークルやアルバイトとも両立しやすいと思いますよ!
――最近は観光について学べる学科も多いです。運営部の皆さんもそういう学科の方が多いんですか?
令和元年10月現在、学生運営部の部員は11人います。僕だけは観光関係の学部ですが(立命館大学文学部 地域観光学専攻)、他の部員は大学も学科もそれぞれ異なります。特に観光系のアルバイトやガイドの経験も必要ありません。
部員が少ないこともあってアットホームな雰囲気で、全員でひとつのチームみたいな感じです。
――学生運営部に入ったきっかけは何ですか?
元々は僕もスタッフだったんです。そこで学生運営部の部員に誘われて入ることになりました。イベントの企画も好きだったので、学生運営部は自分に合っていたと思います。
今までにはスタッフ同士の懇親会などを企画してきました。一からイベントを企画・運営できるのがいいところですね。
――学生運営部の活動のやりがいを教えて下さい。
学生スタッフは全員で700~800人います。これだけの大きな人数に関わることができる仕事はなかなかないと思います。
また、イベントの企画と運営を通じて「計画を立てて実行する力」が身につくと思います。いわゆる「社会人基礎力」にも通じるものがあるのではないでしょうか。
学生運営部の部員・学生スタッフはいつでも募集中です。新入生はもちろん、2回生以上でもOKです。簡単な手続きだけで登録できます。
皆さんも大学に入ったら修学旅行を「迎える側」「作る側」になってみるのはいかがでしょうか。きっと学生生活が充実したものになると思いますよ!
――ありがとうございました!
イベントを終えて
僕が“京都”に触れたきっかけも修学旅行でした。今回の企画を取材したことで「旅行の企画」という普段知らない世界に触れることができて、とても楽しかったです。
また地道な情報収集や日々のアンテナの張り方など、京都学生広報部員としても考えさせられることが多くありました。
そして、修学旅行のお手伝いができるのは全国から修学旅行生が集まる観光都市・京都ならではだと思います。皆さんも京都に来たなら修学旅行生の「お兄さん」「お姉さん」として活躍してみるのはいかがでしょうか?
(同志社大学 社会学部 西野洋史)