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「週一造形芸大生」として通ってわかった京都造形芸術大学のいいところ7選

こんにちは。皆さんは「芸大」というとどんなイメージですか?
大学のまち・京都にはあらゆる種類の大学がありますが、今回は「週一造形芸大生」になった私が、通学して感じた「京都造形芸術大学のいいところ」を紹介します!
新たな大学に行くことは驚きや学びの連続でした。以下、私の造形芸大生としての1日を紹介しながら7つのトピックに絞って説明します。

私はどうして京都造形芸術大学に?

同志社大学に通う私は、大学コンソーシアム京都の「単位互換制度」を利用して週に一回京都造形芸術大学に通っていました。
この制度は単位互換包括協定に加盟している大学・短期大学に所属する学生が、他の加盟大学が開講する科目を履修でき、修得した単位が所属大学の単位として認定される制度です(詳しくはこちら)。

私が単位互換制度に志願したのは、自分の学部の勉強とは全く別な内容を違った環境で学んでみたいと思ったからです。
また、自分から一見「遠い」世界をのぞいてみたかったというのもあります。
「アート」や「デザイン」といった分野について私は詳しく学んだことがありませんでした。読者のみなさんの中にも、どこか遠い世界と考える人は多いと思います。
そんな世界に触れることで、自分自身の扱える領域を広げてみたいという考えもありました。

京都には芸術系の大学がいくつかありますが、「造形芸術大」という言葉の響きに興味を持ったことと、時間割や距離感のことも考えて最終的に京都造形芸術大学に通うことに決めました。

1.山沿いのキャンパス

(松麟館の展望台から北山方面を望む)
同志社大学から京都造形芸術大学までは40分くらいです。
授業は三限なので、空きコマの間に移動します。一限の授業がある同志社大学今出川キャンパスから出町柳駅まで歩き、叡山電鉄で茶山駅まで2駅、そこから東に見える山の方へ歩くと校舎が見えてきます。
そして学園歌にも唄われた“59段の大階段”を上がると、キャンパスに到着です。

(学園歌で「59段の架け橋」として唄われた大階段。ちなみに作詞は、当時副学長だった秋元康さんです)
京都造形芸術大学の校舎は「瓜生山」という山の斜面に沿って立ち並んでいます。
「松麟館」という校舎にある展望台からは市内を一望でき、五山の送り火もほぼ全て見渡すことができます。

瓜生山の自然は教育にも生かされています。例えば山中にあるアカマツの維持にはランドスケープ(自然や環境、景観などをデザインすること)関係の学生が関わっているそうです。また山の上部には「瓜生山農園」という農園があり、学生たちが授業で野菜を作っています。

自然豊かなキャンパスは居心地もよく、学びに適した環境だと思います。
またキャンパス内には階段や坂道があり移動するだけで運動になるので、健康にもいいと思います。
もちろんエレベーターもありますし、スロープなど移動を助ける設備も設置されていますよ!

2.アットホームな雰囲気

校舎に着くのは11:30ごろです。昼休みを経て、授業は13:10から始まります。
私の受けていた授業では毎週レポートを提出するのですが、受け取ってくれる職員の方が初めから私のことを認知してくれたのが印象的でした。
クラスの人数が多すぎないこともあるのか、私のいたクラスでは全体的に学生と先生、そして職員さんの距離が近く、アットホームな感じを受けました。
先生方も第一線の現場で活躍されている方ばかりなのですが、質問もしやすい雰囲気だと思います。こういった所も居心地の良さにつながっていると思います。

この大学に限りませんが、芸術系の大学はファッションの自由度が高いのも特徴です。
周囲に髪色が金色や青の学生が普通にいますが、「お洒落偏差値」が高いからか、「反抗」ではなく楽しんでやっているからなのか、派手派手しい感じをあまり受けないのは不思議に思います。

3.生活の中にアートがある

大学にはそれぞれ特徴があり、それはキャンパスの景色に現れます。
「さすが芸術系大学だな」と思わされたのは、やはり校内のあちこちにアートがあるところでしょうか。
例えば人間館の入り口にあるこちら。「ショウガの木」と呼ばれています。写真を改めてみると、額に入った「瓜」の書に「ショウガ」のオブジェ、その下には「屋台」と全体的においしそうです。
ちなみにこの屋台は学生によって製作されたもので、昼休みになるとお弁当売り場になります。

この美術館のような施設は「人間館」の奥にあり、誰でも見学できます。一階が「ギャルリ・オーブ」と呼ばれる美術展示ホールで、二階が「芸術館」という博物館になっています。
学生の展示活動に利用されており、作品制作はもちろん、宣材制作や広報なども自分たちで行うそうです。
展示は数週間ごとに入れ替わります。行くごとに新しい展示が出ているので、見ていてとても刺激になりました。

普段の生活の中で芸術に触れ、時には自ら作り出していく中で感性を磨いていくのだろうと思います。

4.「ものづくり」を継承する

京都造形芸術大の学内には「アート」もあれば「デザイン」もあります。
例えば2019年7月に完成したこの「望天館」。大学院芸術研究科の岸和郎教授が設計された建築物です。
最新の設備を備えており学生の憩いの場でもありますが、デザインを学ぶ学生にとっては生きた「教材」でもあります。
キャンパス内の校舎やカフェや食堂、研究室などは学校内外の建築家やデザイナーによって設計されたもので、普段の生活の中でデザインに触れることができます。

キャンパスでは学生の制作物もよく見かけます。
写真は一回生が授業の課題で制作した椅子の展示です。限られた材料を使って、想像力と持てる技術をフル活用して作ったものだそうです。

先生方の設計した場所やものに囲まれて、学生たちが新たなものを作っていくのは「ものづくり」が受け継がれていく現場を生で見ているようで、とても面白いと思いました。

5.「本物」で学ぶ劇場

芸大の中でも京都造形芸術大学の特徴的な施設といえば、大きな劇場ではないでしょうか。
まずは京都芸術劇場です。この劇場は当時副学長であった歌舞伎役者の三代目 市川猿之助(現在は二代目 市川猿翁)さんが監修し、歌舞伎などが上演できる大劇場「春秋座」と舞台演劇に適した小劇場「Studio21」の二つの劇場から成り立っています。
大学教育で使われる以外に一般にも開放されており、日々様々な演目が行われているほか、一般向けの講座「日本芸能史」も開かれています。
さらに裏方にも学生が関わっており、宣伝ポスターの制作から照明バトンの上げ下げなどの専門性の高い作業まで、様々な役割に関わることができるそうです。

劇場以外にも、こんなところが。展望台そばには「楽心荘」という能舞台もあります。通常、能舞台の鏡板(背景)には松の絵を描くのですが、ここでは野生の松をバックに能が演じられます。こちらも面白い趣向だと思います。

6.カフェや食堂も充実

授業が終わると、語学の授業の課題をしています。その際利用するのがカフェや食堂です。

まずはカフェです。「BREATH KUAD」(ブレス・クアド)と「Verdi Le café Artisanal」(ヴェルディ・ル・カフェ・アルティザナル)の二つがあります。
「BREATH KUAD」は学生によって運営されているカフェで、当初は名前のないカフェとしてスタートしました。お店の名前からメニューに至るまで学生が関わって決めているそうです。

コーヒーや紅茶はもちろんジュースやパンなどメニューも多く、全体的に値段も安いので私もよく利用します。
ちなみに、個人的にはカフェオレやアイスティーをよく飲みます。

「Verdi Le café Artisanal」は道路に面したところにある、これまたお洒落なカフェです。
自家焙煎のコーヒーが売りのお店なのですが、学生のデザインしたパッケージが使われています。
カフェが大学生の活動や発表の場にもなっているというのは面白いと思います。

学生食堂は至誠館の5階にあります。
至誠館の設計は同学の「日本文化芸術研究センター」設立委員であり京都造形芸術大学芸術学部客員教授を務める建築家の隈研吾氏によるもので、広々とした作りになっています。
四角形の広い窓からは、それぞれ瓜生山の緑や京都市内の眺望が楽しめるのも魅力です。

(味噌カツ丼とサラダ。セルフサービスのお茶もおいしいです)
メニューにはハイカラうどん(天かすの乗ったうどん)やカレーライスなどのレギュラーメニューのほか、日替わりメニューなどもあります。何があるかはその日のお楽しみなので、毎回食堂に向かうのが楽しいです。
時間によっては結構空いているので、課題をしたり休憩したりするにも最適です。

カフェや食堂は在学生でなくても利用できるので、中高生の皆さんも近くに寄った際にはふらっと利用してみるのもよいかもしれません。

7.「藝術立国」の志

学内には、創始者の故・徳山詳直前理事長の思想を表すものがあちこちに設置されています。
例えば、ピロティには「藝術立国之碑」と徳山前理事長が尊敬していた美術家・岡倉天心の像が設置されています。
階段の上には、やはり徳山前理事長が憧れておられた吉田松陰の像があります。まっすぐ前を見つめる像は故郷の長州(山口県)の方を向いているそうです。

残された文書を読む限り、徳山前理事長は壮大な文明観をお持ちの方で、
世界に環境問題や戦争など問題が山積する中、自然や人間を大事にする芸術家を育てることによって社会を動かし、ひいては世界平和に貢献することを考えておられたようです。

私も今回京都造形芸術大学で授業を受け、学内で様々なものに触れる中で、ものづくりに携わる人々の考えや志にいくらかでも触れることができたと思います。
自分が「芸術家」かはさておき、ここで学んできたことを大事にしていくならば、私も「藝術立国」の一端に連なっているといえるのかもしれません。

そして、新たな価値観に触れられること。普段と違うキャンパスで学べること。
こうした新たな出会いに満ちたまち・京都はやはり「学生のまち」とよぶにふさわしいところなのだと思います。

 

(同志社大学 社会学部 西野洋史)

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