インスタ映えで終わらせない!若者を魅了する「喫茶ソワレ」の伝統
突然ですが、皆さんは、下の写真に載っているデザートを知っていますか?
見たことのある人も多いのではないでしょうか?
これは、京都・四条河原町にある喫茶店「喫茶ソワレ」の人気メニュー、ゼリーポンチです。
インスタグラムなどに投稿された写真を見て、若い女性客や修学旅行生がこのゼリーポンチを目当てにこぞって訪れているとのこと。
「こんな素敵なメニューがあるなら、今すぐ食べに行きたい!」と思っているそこのあなた!
ちょっと待ってください、ソワレには、ゼリーポンチの他にも様々な魅力が詰まっています!
今回はそんな知って得する喫茶ソワレの見どころを存分に紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
もくじ
喫茶ソワレとは?
喫茶ソワレは1948年に開店し、創業70年を超える歴史ある喫茶店です。
戦前、新しいもの好きであった創業者が営んでいた雑貨屋と画廊で、来られたお客さんにコーヒーをふるまっていたことをそもそもの起源としています。
戦後そのような趣味が高じて、様々な友人の協力のもと喫茶ソワレを開店されました。
ソワレ(Soirée)は、フランス語で「夜会」・「素敵な夜」を意味します。
なぜ店名がフランス語に由来するのかというと、店内や入口に施されている彫刻を手掛けた彫刻家であり、創業者のご友人でもあった池野禎春さんが、当時では珍しいフランス留学をされていたことからなんです。
店内の装飾品・カーテンにあしらわれたぶどう、そしてパンとワインの神様バッカスの彫刻からフランスの田園風景らしさを感じとることができます。
これ以外にも、照明などいろいろな場所に、装飾があしらわれているので、探してみると面白いかもしれません……!
そして、大きな特徴の一つである青色の照明や、店のあちこちにある間接照明で、優雅な夜の雰囲気を一日中味わうことができます。
精巧な彫刻
今回、3代目オーナーにお店の中で一番気に入っているところについてうかがうと、迷わずおっしゃったのが、上でも紹介した池野さんの彫った彫刻でした。
こんなにカメラで近くによっても、粗が見えるどころか、さらに作りの細かさがきらめき立つこの彫刻。
迫力満点でした。
ここでは、座席と階段を仕切る部分の写真を取りあげていますが、ほかにも入口のドアや、店の壁一体、パーテーション、外装などいたるところに彫刻が施されていました。
こだわりのメニュー紹介
今回、ゼリーポンチ・ゼリーコーヒー・ブレンドコーヒーの3つのメニューを注文しました。
味の感想とともに、オーナーからうかがった各メニューの秘話をご堪能ください!
ブレンドコーヒー
最初は、ブレンドコーヒーから。
今回はホットをいただきましたが、アイスもあるようです。
はじめに空のコーヒーカップが出され、少し待つと店員さんが銀色のポットからコーヒーを注いでくれました。
味は、コーヒー独特の苦みが少なめで、ブラックコーヒーをあまり飲んだことのない私でもすんなり飲むことができました。
創業当初からのメニューの一つだそうです。
『珈琲の香にむせびたるゆうべより 夢みるひととなりにけらしな』
「コーヒーの香りにむせぶ夕べから 夢みる人になってしまったようだ。」
店先には、このコーヒーの味に感動した伯爵歌人・吉井勇さんの詠まれた歌の自筆の歌牌が飾られています。
歌人を感動させて、おもわず歌まで詠ませてしまうコーヒー。ぜひご賞味あれ。
ゼリーコーヒー
続いて、ゼリーコーヒー。
コーヒー風味のゼリーが絶妙な具合でほろ苦く、とても美味でした。
また、上にのっている生クリームが優しい甘さで、どこか懐かしさを感じることができます。
喫茶ソワレに行ったらぜひ頼んでみて欲しいメニューの一つです。
オーナーいわく、このような形のゼリーコーヒーは喫茶ソワレが元祖とのこと!
懐かしさを感じさせながらも、現代的なこのメニューが45年以上前にすでに誕生していたことに驚きでした。
ゼリーポンチ
最後は、冒頭でも取り上げたゼリーポンチ。
色とりどりのゼリーが光に反射して、宝石のように輝いています。
ほんのり甘いサイダーの中に、レモンのアクセントが効いていて飽きない味です。
そして炭酸をうっすらとまとった5色のゼリーを、口に入れると色ごとにかすかな風味の違いがありました。
写真では分かりづらいのですが、さくらんぼとレモンの他に上にキウイが2切れのっています。
こちらはゼリーとは対照的に、炭酸が強めに感じられました。
一つのサイダーの中で炭酸の感じ方に変化をつける食材を選ぶところに、店のこだわりを感じました。
加えて、サイダーもゼリーも透明なので、先ほど紹介した青色の照明が反射すると、自然光の反射とはまた違う不思議な魅惑を醸し出していました。
ゼリーコーヒーやゼリーポンチなどをはじめとするゼリーを使ったメニューは、2代目オーナーの奥様が、当時喫茶店に多かった紳士のお客様だけではなく、若い女性のお客様が増えることを願って 1978年に考案されたそうです。
アートフラワーをたしなんでおられた奥様ならではのセンスが光るこのメニューを求め、現在は修学旅行や観光などを通じて、全国各地から中高生などの若いお客さんもたくさん来るということで、数十年を経て願いが叶っているのがすごいところですね……!
他にもめずらしいものが……!
こちらはテーブルに付くと出されるお冷のグラスの写真ですが、よく見ると女性の絵が描かれています。
この絵は画家の東郷青児さんが描いたもので、他の食器類や、店に飾られている美人画・装飾品などにもそれぞれ別の絵が描かれています。
創業者が店の雰囲気にあう絵として東郷さんの作品を飾っていたところ、ご本人が来店され、以降いくつもの美人画を描いていただいたそうです。
東郷さんの絵を用いたグッズも販売しているので、要チェックです!
オーナーの思い
お店を営んでいて嬉しい瞬間をオーナーにうかがうと、若いころに来られたお客様がもう一度訪れてくださったときとのこと。
これは、歴史の長い喫茶ソワレならではのエピソードですね。
さらに、今来てくれている若いお客様が何十年後かに再び訪れてくれること、ゼリーポンチだけでなく内装のすばらしさに気付いて目を向けてくれると嬉しいともおっしゃっていました。
私も数十年後、伝統を受け継いでいる喫茶ソワレを訪れようと思います。
最後に
どうでしたか?
私は今回の取材を通して、喫茶ソワレには、写真を彩ってくれる綺麗なメニューの他にも、ファインダー越しでは見ることのできない繊細な味のこだわり・今までの歴史を受け継ぎつつ、時代に応じて改良を重ねていくお客様への思いやりの気持ちなど、温かな要素がたくさん詰まっていると知ることができました。
皆さんも喫茶ソワレを訪れる際には、目に映る美しさを味わいつつも、その裏に隠れた思いを感じ取ることで、お店を細部までたっぷり堪能できることと思います!
ぜひ優雅なひと時を楽しんでくださいね!
喫茶ソワレ公式サイト:http://www.soiree-kyoto.com/
(文章:京都女子大学 現代社会学部 高岡英里華)
(写真:立命館大学 文学部 山下杏子)