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文学女子がオススメする京都本~近代文学編~

今回のテーマは近代文学。そう聞いてギクッとなった方。
正直言って難しそう、読むのは授業中や受験勉強だけでいい。なんて思っていませんか?
確かに使われている言葉や時代背景が違うから分かりづらいという点はあります。
しかし昔から絶えることなく読み継がれてきたということはその作品が時代を越えて伝わるメッセージがあるということではないでしょうか。
その舞台となる京都も歴史を受け継ぎ生きてきた町です。
皆さんのこれからの人生に、はたまた日々の授業や受験勉強に!この記事を有効活用して近代文学と仲良くなる第一歩を踏み出しましょう!

1.「虞美人草」(ぐびじんそう) 夏目漱石

「こゝろ」や「夢十夜」を教科書で勉強した、タイトルを知っている、という人もたくさんいるかと思います。
夏目漱石が京都を舞台とした作品は多いです。
その中でも漱石が京都に抱いていた魅力が垣間見えるのがこの「虞美人草」。主人公は勉学に熱心で東京の大学に進学するために上京した小野。
彼は地元、京都の恩師の娘である小夜子と互いに想い合っていました。
しかし東京で出会った藤尾という女性にも惹かれていきます。
強気で傲慢な美女藤尾と控えめで古風な小夜子。正反対の女性二人の間で揺れる気持ちや危険な香りのする人が気になってしまう気持ち、わかりますよね。
小野がどちらを選ぶのか、また漱石がもつ京都への印象。
様々な点に思いを巡らせ読んでみてください。


虞美人草 (角川文庫) [ 夏目 漱石 ]

 

2.「檸檬」 梶井基次郎

すごく暗い気分だったけれどあるものをきっかけに気分が晴れたという経験はありませんか。
この「檸檬」という作品はその体験を美しく、繊細に描いた作品です。
肺を病んだ主人公の”私”はいつも得体のしれない何かに圧迫されていました。
元気な頃は好きだった音楽や詩、文具店の丸善にも興味を示さなくなります。(この文具屋の丸善が今は閉店した丸善京都店とされています。)
そんなときに果物屋で檸檬を購入。
持っていると不安が和らいでいくことに気付き、そのまま好きだった丸善へと向かいます。
中に入り画集を見ていたら、また気持ちはどんどん暗くなり…。しかしこの後”私”はある想像で自分の不安を晴らします。
もし皆さんが主人公と同じ方法でストレスを発散していたら、京都の至る所で檸檬が見つかるかもしれませんね。
その方法は是非本を読んで確かめてください。


檸檬 (角川文庫) [ 梶井 基次郎 ]

 

3.「雁の寺」 水上勉

こちらは立命館大学を目指す学生さんに知ってほしい作品です。
作者の水上勉は退学こそしているものの立命館で学び、また大学の目の前の等持院にて修行した立命館にとてもゆかりのある作家です。
この作品は寺の住職である慈海が行方不明になり寺の襖絵の母子の雁の母雁だけが破り取られているという怪事件から登場人物達の歪んだ関係や悲しい過去が見えてくるというお話。
少し複雑な内容ですのでもう一つ、私の好きな「五番町夕霧楼」もご紹介します。
家族を養うために妓楼で働く遊女と幼馴染の学生僧との悲恋を描いた物語。
主人公の夕子という名前、実は京都の人気お土産八つ橋の夕子は彼女から取られているんだそうですよ。
不遇の時代が生んだ結末に胸が苦しくなりますがとても引き込まれるお話です。


雁の寺(全) 【電子書籍】(文春文庫) [ 水上 勉 ]


五番町夕霧楼 (P+D BOOKS) [ 水上 勉 ]

 

4.「古都」 川端康成

京都本シリーズ第2弾でも名前の挙がった川端康成の「古都」。
この作品をきっかけに川端康成がノーベル賞を取ったことは有名ですがこれは京都の魅力を語る上で外せない、そして京都を知るのにもってこいの作品なんです。
京都の呉服問屋の娘である千重子は両親に可愛がられて育った箱入り娘。
しかし千重子は両親の実の子ではない捨て子でした。
ある日、千重子は友人と出かけた北山杉の村で自分と瓜二つの女の子を見かけます。
それから二人は祇園祭で再会を果たし双子の姉妹であることを知るのです。
この作品の魅力は北山杉(春の風物詩)や祇園祭(夏のお祭り)とあるように物語が四季を軸に、移り変わる姉妹の関係性と京都の様々な行事を描きながら進んでいくという点です。
京都に住んでいても、そうでなくてもページをめくる度に京都の季節の風物詩を体感できるような作品。
もし京都の大学に通えたらこのお祭りに行ってみたい!こんな行事に参加したい!そんな予習も兼ねて京都を満喫できる一冊です。


古都改版 (新潮文庫) [ 川端康成 ]

 

まとめ

京都の大学に来て私が一番興味深かった授業が京都を題材にした文学作品について学ぶというものでした。
授業を受けた後、バスに乗り込めばその作品の舞台となった場所を訪れることができるのです。
作品内の風景とは全く違ってビルがそびえ立ち、車が行き交うような場所でも、確かにここで登場人物たちが生きていたのだと感じられる。
そんな貴重な体験ができるのが京都であると思います。
大学出身者、ミステリー小説、近代文学と作品を取り上げてきましたがまだまだ京都を舞台にした作品はたくさんありますしこれからも増えていくでしょう。
ガイドブックもいいけれど小説から京都を知って、もっと京都を好きになってもらえたら何より嬉しいです。
第3弾までお付き合いいただきありがとうございました。

 

(立命館大学 文学部 田中陽奈子)

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