『松本幸四郎が語る日本舞踊の世界』講演会レポート&井上八千代さんインタビュー【前編】

もくじ
はじめに

みなさんこんにちは。最近よく雪がちらつき、寒さが極まって来ましたね。
(時期は過ぎましたが)師走の風物詩といったら、毎年南座で行われる歌舞伎の公演「吉例顔見世興行」のまねきあげ!
今回は、顔見世にもご出演されていた歌舞伎俳優・公益社団法人日本舞踊協会常任理事の松本幸四郎さんの講演会にお邪魔し、ご自身と日本舞踊についてお話を伺いました。
また、講演会終了後には、同じく日本舞踊協会常任理事でもある人間国宝・京舞井上流家元の井上八千代さんにインタビューをさせていただきました!
前編では、松本幸四郎さんの講演会の様子をお伝えします。
『松本幸四郎が語る日本舞踊の世界』

この講演会は、まだ南座にまねきが上がっていた12月14日に、祇園甲部歌舞練場で開催されました。
「日本舞踊と私」をテーマに、前半は松本幸四郎さんによるトーク、後半は観客からの質問コーナーという形式の講演会でした。
トーク前半では、松本幸四郎さん自身の日本舞踊との出会いや、舞台に立つ中で感じてきた身体感・歌舞伎音楽・そして、映画『国宝』に関する話題など、様々なエピソードをたっぷりと交えてお話しくださいました。
なんと、舞台の両脇から客席に向かって伸びる両花道を縦横無尽に歩きながらお話されたり、桟敷席に座って観客と交流されるシーンもあり、ファンサービスもたっぷりでした!

好きなことで負けたくない。その気持ちが自分を支えてくれた。

実は、松本幸四郎さんにも歌舞伎役者を辞めようと考えた時があったのだそう。困難を乗り越えられたその時のお話が、とても印象的でした。
―松本幸四郎さん
『14歳から15歳の頃、急激な声変わりに襲われ、思うように声が出せない絶望感から深い劣等感を抱きました。一時は「完璧な体で芝居ができないのなら、歌舞伎の家に生まれた身であっても、役者を辞めるべきではないか」とまで思い詰めました。
その時、父に「完璧な状態の人だけが表現者なのではなく、短所を長所に変えて個性とすることで名優になった人もいる」と言われました。それを聞いて「ああそうか」と。自分の理想とするものはできないかもしれないけれど、「好きなことだけでは誰にも負けたくない」ということはできるんじゃないか!と思って、「芝居を辞める、役者を辞める」ということを辞めました。』
「声が出ないのであれば、無理やり声を出さずに好きな踊りを極めれば良いのだ!」と、困難をプラスに捉える心持ちが素晴らしいと感じました。

伝統的な歌舞伎と進化する歌舞伎、その魅力とは。
―松本幸四郎さん
最近、歌舞伎といえば映画『国宝』が話題ですよね。今、私が出演している南座も映画の舞台として登場しています。私は『国宝』は観ていないのですが、周りの方がたくさん出演されているので、観た人と同じくらいの内容を喋れます笑
ぜひ映画を見て伝統的な歌舞伎というものに興味を持っていただき、実際に南座で『鷺娘』を見ていただきたいなと思っています。(12月に南座で行われていた『吉例顔見世興行』では、映画『国宝』に登場した『鷺娘』という演目が上演されていました)
逆に東京の歌舞伎座では、初音ミクが歌舞伎に出演したり、様々な演出家・作家の方が新作歌舞伎を書いていたりする時代です。最近では、驚くような進化をした歌舞伎が上演されています。伝統的な作品も、いろんな可能性を持った新しい作品も、両方楽しんでいただけたらと思います。
伝統には、「守り、伝える」という側面と、「時代と共に進化していく」という側面があるのだということに、改めて気付かされました。
日常の中にあるヒントを大切にする。
後半の質問コーナーでは、客席から様々な質問がなされ、会場は大盛り上がりでした!
―質問者
普段の生活で意識的に行なっていることはありますか?
―松本幸四郎さん
今流行りの舞台や映画、言葉にはアンテナを張っています。
あとは、カフェというより、『釣りバカ日誌』が全巻置いてあるような喫茶店に好んで行きますね。そこで聞こえるいろんなお客様の話や、人の出入りというような、いわゆる日常の風景に気を配っています。テレビから見える日常だったり、何かを食べる日常だったり。そういうところにヒントがあったり、感じるものがあるのかなと。
おわりに
今回は講演会『松本幸四郎が語る日本舞踊の世界』を取材しました。
普段の舞台では知ることのできない松本幸四郎さんの一面を知ることができ、もっと歌舞伎や日本舞踊を深く知りたいと感じました。
後編は、京舞・井上流家元の井上八千代さんへのインタビュー記事となっております。こちらも併せてご覧ください!
(取材・文 京都産業大学 文化学部 水取咲綾
取材 同志社大学 法学部 足立隼太郎)


